グリーズマンが移籍を決断。ちらつくバルサの影と、歪んでいた組織のパワーバランス。
アントワーヌ・グリーズマンが、ついに移籍の決断を下した。
移籍市場が開く度に意見を求められ、グリーズマンは辟易していた。騒音の中心にあったのは、バルセロナを含む複数クラブの関心だ。
グリーズマンとバルセロナが関係づけられるのは、これが初めてではない。むしろ、昨季、幾度となく繰り返されてきた話題だ。最終的には昨年6月にグリーズマンがアトレティコと契約延長を行い、残留を決めた。
それはジェラール・ピケが手掛けるドキュメント番組で、グリーズマンがアトレティコ残留を宣言するという、なんとも皮肉な結末であった。
■経験豊富なプレーヤーの退団
アトレティコは2018-19シーズン、「主要人物」の繋ぎ止めに成功した。開幕前にグリーズマン、シーズン中にディエゴ・シメオネ監督とGKヤン・オブラクとの契約延長を実現させた。
指揮官の年俸は2400万ユーロ(約29億円)に引き上げられた。シメオネ監督はマンチェスター・シティを率いるジョゼップ・グアルディオラ監督(年俸2100万ユーロ/約25億円)、レアル・マドリーのジネディーヌ・ジダン監督(年俸1200万ユーロ/約14億円)を凌いで、世界最高年俸監督になった。
その一方で、ディエゴ・ゴディンの今季限りでの退団が発表されている。ガビ・フェルナンデス、フェルナンド・トーレスに続き、アトレティコの象徴的な存在が、また一人アトレティコから去る。加えて、フィリペ・ルイスやフアンフラン・トーレスの去就は依然として不透明だ。
リーガエスパニョーラ優勝を達成した2013-14シーズン、チャンピオンズリーグで決勝に進出した13-14シーズンと15-16シーズンの主力選手が、ついにいなくなろうとしている。
近年、アトレティコは30歳以上の選手に対して単年契約でのみ契約延長を行ってきた。シメオネ監督、グリーズマン、オブラクの引き留めが、経験豊富な選手たちの退団の引き金になったと言えるかもしれない。
■パワーバランス
組織のパワーバランスは微妙に歪められていた。
リーガにおいては、所属選手の年俸総額の上限が定められている。現在のアトレティコの場合、その額は3億510万ユーロ(約430億円)だとされている。グリーズマンの年俸2000万ユーロ(約24億円)はクラブの財政を少なからず圧迫しており、また補強の幅を狭めている。
リーガの規約上、契約解除金を積まれてしまえば、所属クラブ側に抗う術はない。今年6月30日以降に、グリーズマンの契約解除金は2億ユーロ(約246億円)から1億2000万ユーロ(約147億円)に引き下げられる。
つまり、彼を狙うクラブが1億2000万ユーロを支払えば、グリーズマンの移籍は成立する。2億2200万ユーロ(約270億円)でパリ・サンジェルマンに移籍したネイマールの例は、その最たるものだ。
今回の決断は、昨年のそれとは異なるものになった。そして、その結果はまだ見ぬ未来に示される。