文科省初?高校生が有識者会議に出席(大学入試改革)
「当事者」の時代の到来
ここ数年、SNSやchange.orgなどの署名サイトの浸透に伴い、「当事者」の声が政治や社会を動かす場面が急激に増えている。
そして、そうした時代を象徴する出来事として、2020年5月14日、「大学入試のあり方に関する検討会議(第7回)」に、現役の高校生2名がヒアリング対象として出席。
萩生田光一文科大臣を目の前に(オンラインだが)、大学入試改革や現状の教育内容の問題点等についてプレゼン、有識者会議の委員と質疑応答を行った。
筆者の知る限り、現役の高校生が有識者会議に出席する、というのは文部科学省として初めての試みである。
その意味では、非常に意義深いものがあり、当事者である学生にヒアリングしようと決断した有識者会議の委員、文部科学省の方々に深く感謝したい。
「直接参画」の拡大へ
昨年の大学入試改革の混乱が象徴するように、当事者の意見を聞く重要性は論を俟たない。
実際、冒頭書いたように、「当事者」の声が政治や社会を動かす場面は確実に増えているのだが、そのほとんどがSNSなど、外からの働きかけであって、永田町や霞が関における政策立案過程(特に有識者会議)になかなか大きな変化が見られないのが課題であった。
そのため、今後は「直接参画」の機会を増やすこと、行政府の審議会に「若者枠(当事者枠)」を設置することが重要だと、4月に記事を書いたばかりであるが、今回早速実現した形となった(もちろん理想は一回のヒアリングではなく委員としての採用だが)。
「当事者」の時代における懸念点
今後、文部科学省に限らず、多くの省庁や地方自治体でも同様の機会が増えることを期待したい。
一方、「当事者」の意見を聞く際には、十分な注意も必要である。
「当事者」というのは多様であり、目の前の意見がどこまで全体を代表しているのか、声を挙げていない人はどう思っているのか、冷静に見極めなければならない。
特に、現状把握においては当事者が十分な情報量を持っていることも多いが、解決策に関しては、必ずしも専門的な知見を持っているわけではなく、切り分けて考えなければならない。
今回、「大学入試のあり方に関する検討会議」に高校生を推薦した日本若者協議会も含め、当事者を対象にしたアンケートを実施している団体は多いが、その賛否をそのまま受け入れるのではなく、互いの言い分を踏まえた上で、代替案を考えることが重要になる。
ツイッター等でも、世論が可視化され、熱を帯びやすくなっているが、やはりこれも、きちんと情報を持った上で発言しているのか、どこまで一般化できるのか、一歩引いて考える必要がある(念のため、専門的な知識がなければ発言すべきではない、という趣旨ではないことは明記しておく。あくまで聞き入れる側の姿勢である)。
その意味では、今後様々な立場の意見(課題)が可視化されやすくなっていく中で、どういった解決策を考えるのか、どう納得してもらうのか、意見(課題)を集約する側である政党や政府、中間支援団体(日本若者協議会もここに含まれる)の重要性(難易度)は増していくことになるだろう。
一つには、エビデンスをもとにした政策立案(EBPM)が重要になるが、日本はほとんどできていないのが現状である。
政党や議員事務所、行政府の今の体制(人的な質・量ともに)でそれが可能なのか、そろそろ本格的に見直すべきだ。