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敬老の日の意味:高齢者の心の健康と高齢者問題解決のために

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ:敬老の日恒例の 巣鴨でダンベル体操)(写真:ロイター/アフロ)

高齢者問題解決のために。

■敬老の日とは

敬老の日は、祝日法によれば、「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」ことを趣旨とした祝日です。シンプルな内容ですが、でも基本は大事です。ここに高齢社会の問題解決があります。

■高齢者とは

高齢期は、若さを失い、仕事を失い、収入を失い、健康を失い、友人や家族も徐々に失っていく、喪失の時代。とかつては言われていました。

しかし、現代の多くの高齢者は違います。結構元気な高齢者がたくさんいます。健康で元気でお金もそれなりにあって、活動的な高齢者もたくさんいます。高齢期は新たな創造の時代と語る人もいるほどです。町内会活動も、ボランティア活動も、市町村や大学の公開講座も、高齢者でいっぱいです。

特別な病気や怪我さえしなければ、高齢になっても知能は下がりません(高齢になっても若々しさを保つ方法:知能は高齢になっても衰えません:Yahoo!ニュース個人有料)。

ただし、その一方で高齢者の犯罪が増えています。万引きは、今や高齢者の犯罪です。また刑事事件にならない高齢者の乱暴、暴言も、多発しています。高齢者の問題は、人口の割合増加以上に増えています。

高齢者の自殺の相変わらず多く見られます。敬老の日に自殺する人もたくさんいます。高齢者は、一般に覚悟の自殺をしますが、人々の記憶にとどめたいために誕生日自殺や敬老の日自殺を実行する人もいます。

若い時以上に差が開くのが、高齢期でしょう。では、どうすれば良いでしょうか。ここでは、ここrの問題を中心に考えます。

■中高年の心の健康のために

発達心理学者のエリクソンは、人生それぞれの段階に、達成すべき課題があると語っています。

青年期にアイデンティティを確立した後で、大人として身につけるべきことは、愛する力です。自分の家族や、仕事のお客さんなど、人々のことに心を配り、その人々のために誠意を尽くして努力できる力です。

さらに、中年になって身につけるべきことは、育てる喜びです。自分の子どもや、会社の後輩、地域の人々など、育てる喜びを身につけた人は、中高年になっても希望と意欲を持ちつづけられます。

そして、高齢期の課題は、人生をまとめ上げることです。人生のそれぞれの段階でその時々の課題を成し遂げてきた人が、人生の最後に輝くような時を迎えることができます。

■敬老の日の趣旨と高齢者の心の健康

祝日法は、敬老の日で「多年にわたり社会につくしてきた」と高齢者のことを呼んでいます。人は、人々を愛し、一生懸命働き、会社や地域を育てます。社会につくしていことで、自分自身の人生も輝きます。

実際は、様々な人生があるでしょう。しかし、高齢になって「あなたは社会につくしてきました」と言ってもらえることは、高齢者の心の健康にとってとても大切です。

■高齢者が苦手になること

高齢になっても知能は下がりませんが、スピードは下がります。また、人から文句を言われたり、今までの方法を変えるのも苦痛に感じることがあります。

社会の変化がほとんどない社会では、高齢者が最も物知りです。しかし変化が激しい現代では、今までの知識や方法が通用しません。これは、なかなか大変です。

敬老の日は、高齢者を「敬愛」する日だと祝日法は述べています。人は、尊敬し愛されることが必要です。高齢者には特に必要です。若者のから見れば、動作が遅く、ルールを無視しているように見えることもあるでしょうが、侮辱や叱責、無視は、高齢者の心の健康を奪い、高齢者犯罪を誘発します。

■尊敬と愛を、高齢者に

ファーストフード店などでも、商品をテーブルまで運ぶなど他の客には実施しないサービースを高齢には提供することがあります。コンビニやスーパーでは、高齢や万引きを減らすために、高齢者の特徴をわかっている店員を採用し、積極的な声かけをする店も増えています。

■長寿を祝う

年金問題や、健康問題。あまり長生きしたくないと語る人もいるのが現代です。だからこそ、長寿を祝うことが大切です。自分の存在がみんなを不幸にしていると感じる高齢者が、自殺を考えます。

長寿を祝うことは、高齢になって体が弱くなった自分を肯定してくれていることであり、自分の存在、自分のこれまでの人生全体を肯定することになります。

そして、それは若い人々にとっても必要です。退職者に冷たい会社、高齢者をないがしろにする町で、この先もずっと生きていこうと思えるでしょうか。

■楽隠居はさせない

「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」。しかしそれは、過去の問題だけではないと思います。これからも、社会に貢献してもらいましょう。高齢者がいなければ、成り立たない地域の行事などがたくさんあります。祖父母がいてくれるおかげで働ける母親たちがいます。

自分は人々の役に立っているという感覚は、子どもにも若者にも高齢者にも必要です。ただ高齢だから大事にされているのではなく、役割を果たしているから尊敬を愛を受けられる方が良いでしょう。

元気なうちは、孫を肩車もできるでしょう。でも、もうそんな体力がなくなっても、今度は孫が祖父母の手を引いてくれるかもしれません。これは、孫にとっては楽しい行為です。これも、高齢者の役割です。

ある集会で、ある高齢の方が、いつものようにいつもの場所に座っている。それだけで、周囲に深い安心感を与えることもあります。

高齢者を敬愛し、そしてまだまだ私たちの社会のために活躍してももらいましょう。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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