楽天が始めた飲食店の事前決済「楽券」は成功するのか?
楽天が飲食店の事前決済を開始
<楽天が外食企業と提携 事前決済サービス開始へ>という記事の中でも紹介されていますが、楽天が飲食店における事前決済サービス「楽券」を開始しました。
利用方法は、以下の通りです。
- 楽天でチケットを購入
- 店舗で番号を入力、もしくは、スマートフォンに表示されたバーコードを提示
- チケットを認証
- 商品が提供
当初は以下の5つの外食チェーン店が対象となっています。販売されているチケットについても記載します。
- すき家
牛丼 並盛 1食、牛丼 並盛 3食
- 自家焙煎椿屋珈琲店
1000円、1000円×5枚、1000円×10枚
- 七輪焼肉安安
1000円、カルビ1皿×10枚、生ビール1杯×10枚
- 串かつでんがな
生ビール1杯 5枚、串かつ5本セット 3枚、串かつ5本セット 単品、 生ビール1杯 単品、楽天セット 2枚
- ミスタードーナツ
200円、500円、1000円
チケットの種類は飲食店によって異なっており、「すき家」「串かつでんがな」であれば牛丼や串かつといった商品チケットになっていますが、「ミスタードーナツ」「自家焙煎椿屋珈琲店」では特定の金券になっており、「七輪焼肉安安」ではどちらとも取り扱っています。
また、対象となるのはこの5チェーンの全店舗ではないので、利用する際には注意が必要です。
課題となる点
NHKの報道以降に後追い記事もほとんどなく、利用者による反響も伝わってきていませんが、私は以下の点が課題であると考えています。
- ファストフードが中心
- チケット方式
- 飲食店の負担
ファストフードが中心
「すき家」「ミスタードーナツ」などのファストフードや「自家焙煎椿屋珈琲店」といった喫茶店はほとんどの場合、事前に予定して訪れるものではなく、ふらりと訪れるものではないでしょう。
たまたま通りかかった店に入る場合には、事前決済するタイミングがあまり思いつきません。
何故ならば、こういった飲食店では、まずは店に入り、席に座ったりカウンターに着いたりしてから、メニューを見てから決めるくらいなので、牛丼ならまだしも、ドーナツや焼肉では事前にメニューを決めるのも難しいからです。
数週間から数日前に予約し、お任せメニューしかなく、ドリンクもペアリングを注文するようなファインダイニングであれば事前決済できますが、ウォークインが主体で注文内容も全くバラバラのファストフードではどこまで利便性が高まるでしょうか。
席に座ったり、カウンターに着いたりした後で思い出し、そこで事前決済ができたことを思い出す人が多いのかも知れません。
ただ、事前決済さえしていれば、すぐに注文でき会計もしなくて済むので、とてもスムーズに進むことは確かでしょう。
チケット方式
楽天が提供するサービスなので仕方ないと思いますが、楽天から飲食店の商品と引き換えとなるチケットを購入するという枠組みとなっています。
金券であればまだよいですが、商品チケットであれば選択幅がとても狭まってきます。また、例えば「すき家」の場合には、「牛丼 並盛」を「楽券」で購入できたとしても、サイドメニューを追加したい場合には現金支払いとなってしまうので、ちぐはぐしているように感じれます。
チケット方式であるのに、商品チケットの場合に品揃えが少ないのはとても不便とところです。商品は「楽券」から購入しても値引きされるわけではなく、楽天ポイントが付くだけです。楽天ポイントを貯めている人にはよいのかも知れませんが、そうでない人にとっては、あまりインセンティブもないので、クーポンサイトよりも魅力が薄いように感じられます。
飲食店の負担
先に述べたように、事前決済してもらえれば、飲食店は注文の受付が楽であり、しかも、会計をしなくてすむので、オペレーションが楽になるでしょう。
ただ、対象となるファストフードを考えると、会計がそこまで複雑になり、手間を取られるとも思えません。そういった状況では、楽天に手数料を支払うのであれば、あまりメリットは大きくないように思います。
また、楽天市場と同じように、飲食店が楽天ポイントの原資も担うのであるとすれば、なおさらメリットが小さくなるのではないでしょうか。
POSレジやクレジットカードなどの専用端末を導入しなくても対応でき、人件費も削減できるのは魅力的ですが、飲食店にどれだけ寄与できるかは未知であるように思います。
飲食店と客の課題を解決できるのか
事前決済は、<新時代における宴会マナー。客と飲食店それぞれに絶対やってもらいたい2つのこと>でも触れたノーショーやドタキャンも解決できる有用な手段です。
「楽券」の立て付けを見てみると、基本的に楽天市場で売られている商品の延長線上として「飲食店のチケット」を販売しているだけのような印象を受け、先に指摘した点と合わせて鑑みてみると、飲食店や客の課題を本当に解決できるのかとやや疑問に思ってしまいます。