クラブ選手権、和歌山箕島球友会がサヨナラ勝ち!もと阪神・穴田選手が攻守で貢献
今月4日から西武プリンスドームで始まった『第40回 全日本クラブ野球選手権大会』。もと阪神の穴田真規選手が所属する和歌山箕島球友会は、ことし4年連続6度目の本大会出場となります。そのうち優勝が2度、準優勝が1度。おととし優勝しながら、昨年は準々決勝(2回戦)で敗退。穴田選手もヒットを打てなくてガックリしていたので、西近畿代表として本大会出場が決まった時の気合いはものすごかったですね。
そして迎えた本番。まず5日の初戦は3年ぶり4度目の出場・関東代表の所沢グリーンベースボールクラブとの対戦でした。いきなりエラー絡みで点が入り、3対1とリードされて迎えた終盤に箕島が1点ずつ返して9回に追いつきます。そしてタイブレークとなった延長10回、サヨナラ勝ち!穴田選手は2安打に加え、好守備が2つ、最後はキッチリ犠打を決めて大きく貢献しています。
《第40回 全日本クラブ野球選手権大会》
9月5日 1回戦 (西武プリンスドーム)
所沢グリーンBC-和歌山箕島球友会
所沢 200 001 000 0 = 3
箕島 100 000 011 1x = 4
※延長10回よりタイブレーク
◆バッテリー
【箕島】桐原-○寺岡 / 水田
【所沢】●柄澤(9回0/3) / 土岐
◆二塁打 平井、穴田(箕島) 榎本、鈴木悠(所沢)
◆箕島打撃 (打-安-点/振-球)
1]右:平井 ( 5-3-1 / 0-0 )
2]二:高橋孝 ( 3-1-0 / 1-0 )
3]左:山下 ( 4-0-0 / 2-0 )
4]指:林 ( 2-0-0 / 1-1 )
〃走指:岸田 ( 2-0-0 / 1-0 )
5]一:岸 ( 4-1-0 / 0-0 )
6]三:穴田 ( 3-2-0 / 0-0 )
7]捕:水田 ( 2-0-0 / 0-1 )
8]遊:西口 ( 4-0-0 / 0-0 )
9]中:浦川 ( 3-0-0 / 0-0 )
◆箕島投手 (安-振-球/失-自)
桐原 6回 27人 (5-4-3 / 3-1 )
寺岡 3.2回 14人 (3-1-0 / 0-0 )
試合経過
先発の桐原は1回、四球や捕逸で1死一、三塁として盗塁絡みのエラーで1人を還し、さらに犠飛。無安打で2点を失いました。その裏の箕島も相手エラーで出た平井が高橋孝のバントヒットと、これまた盗塁に絡むエラーで生還!両チーム同じような展開ながら、箕島は後続を断たれて1点止まりでした。そのあと5回まで追加点を与えなかった桐原ですが、6回に内野安打と犠打などで2死二塁としてタイムリー。重い重い3点目が入ります。その裏に平井が二塁打を放ち、暴投で三塁へ進むも連続三振で2死。四球を選んだ林の代走・岸田が盗塁失敗で無得点。
ついで翌日先発予定の寺岡が登板し、7回は2安打されながら0点に抑えます。その裏の攻撃で、穴田がライトへの二塁打を放つも得点には至らず。8回の寺岡は先頭にヒットを許し、犠打で1死二塁としたあとの難しいバウンドの三ゴロを穴田が前進しながら捕ってスロー。ピンチ拡大を防ぎます。直後の8回裏に相手エラーと平井の左前打、高橋孝の犠打で1死二、三塁として山下の一ゴロの間にようやく1点返しました。
9回も続投の寺岡を、またも穴田が援護。先頭の穐本が放った三塁線へのライナーをナイスキャッチ!三者凡退に斬って取ると今度は打線が応えます。先頭の岸が右前打を放ち、穴田へのサインは送りバント。1球ボールのあと2球目でキッチリ決めて、続く水田が中飛。岸はタッチアップして三塁へ走り出すと、中継のショートがエラー。岸はホームへヘッドスライディングでセーフ!箕島ベンチはもう勝ったかのような騒ぎです。
3対3のまま試合は延長戦へ突入。10回からはタイブレーク方式(1死満塁でスタート。好きな打者から始められ、そこから打順を遡った3人が走者)です。まず所沢は9番からの3人が走者となり、先頭の3番・西村は中飛。タッチアップするかと思いましたが、少し浅かったため戻ってホッ。さらに4番の中屋は一邪飛で得点なし!これはもうチャンスをもらったようなもので、寺岡を迎えたベンチはまたもや大騒ぎ。
そして10回裏、箕島は三塁から順に水田、西口、浦川が埋め、打席には2打席連続ヒットの平井。まず初球のスライダーを見逃しますが、同じスライダーにバットを一閃。打球はセンター前へ抜けていき、水田が生還!その周りに、ベンチから飛び出した選手たちの歓喜の輪ができました。重く苦しい試合を土壇場で引っくり返した和歌山箕島球友会は4年連続で準々決勝進出を決めています。
「あんないい守備、初めて見た」と西川監督
ミーティング後、どちらかが翌日の対戦相手となる第2試合を見ながら和歌山箕島球友会・西川忠宏監督にお話を伺いました。2ヶ月前の西近畿地区第2次予選決勝(詳しくはこちらで<和歌山箕島球友会がクラブ選手権本大会へ出場!昨年の雪辱を誓う、もと阪神の穴田真規選手>)を思い出すような、苦しい展開だったと言うと「それどころか、今回はもうあかんと。もう負けたと思いましたよ」と西川監督。
「焦っていましたね、みんな。ランナー出して三振とか、ほんと珍しいですよ。初回の1点目の取られ方なんて…ありえませんもんね。普段なら考えられないことばっかりで、流れが全然こちらに来ない。寺岡に代えても際どい当たりがヒットになったりして、すんなりいかなかった。(1点差に迫った)8回裏は追いついておかないといけませんよね。でも9回に寺岡が三者凡退で流れを変えてくれた」
殊勲選手として寺岡投手、平井選手の名前を挙げたあと西川監督は「穴田もよかったでしょう?」と言われます。「9回のバント、原井コーチに相談しにいきました。どうかな?って。あそこで打たせてダブルプレーになったら終わりですからね。さらに大きいのは9回表の守備(三直)です。あれで乗った寺岡が3人で片づけて、次へ行けた。あれだけじゃない。8回も高いバウンドのゴロを捕ってスロー。捕っていなかったら一、三塁になってるし、はじいたら1点入ったかも。大きいですよ。な、原井コーチ」
原井和也ヘッドコーチも深くうなずいて「そうですね。でもまだ褒めたらあかん!」と。プロ野球OBとしてのみならず、穴田選手のことをよくわかっていらっしゃいます。西川監督が「ヒット2本に加えて、守備でも助かった。この大会は穴田、ってことになってくるよ」という言葉に続いて「逆に、あんな守備を見たのは初めてや!」と真顔で。原井コーチも「ほんとですね」と返して笑っておられました。
全部投げる覚悟で 寺岡投手
西近畿第2次予選は準決勝で完投したあと、同じ日の決勝はロングリリーフでチームを逆転勝利に導いた寺岡大輝投手。きのうも「試合が始まってから、もうピッチングはしていました。6回の攻撃中にベンチから電話がかかってきて『7回から』と。まだ(キャッチャーを)座らせていなかったんですよ」と苦笑いで振り返りますが、3イニングとタイブレークの10回を0点に抑え、サヨナラ勝ちを呼び込みました。
「8回に1点取ったけど、同点までいかなかったのは流れがまだ完全にこっちに来たわけじゃなかったから。なので9回は3人で抑えようと思っていました。それも、守っている時間は短い方がいい。同じ三者凡退でも、早めに打たせて取るくらいの気持ちで10球以内に終わらせるんだと意識していったんです。そういう意味でも穴田の守備は大きかった。きょうは穴田に助けられました」。監督が、あんな守備は初めて見たと。「はい。僕も初めて見ました(笑)。やっと穴田のいいとこが出たかな」
ところでタイブレークは経験あり?「公式戦では初めてですけど、大学(大産大)時代に箕島球友会とやって負けました」。それはまた不思議な縁ですね。今チームにいる選手に打たれたってことで。それにしても1死満塁で、内野ゴロに打ち取ったとしても1点入ってしまう。プレッシャーがあるでしょう?「いえ、逆に開き直れました。このランナーを全部還しても、裏の攻撃で4点取ってくれると。だから1死ランナーなしのつもり、目の前のバッターを抑えるという気持ちでした」
そこにもうひとつ、力強い言葉をもらったという寺岡投手。内野手の高橋孝司選手は福井工大福井高校の先輩で「僕が1年の時の3年、しかもキャプテンだったので挨拶以外に話をしたこともなかったんです。箕島に来て初めて会話ができるようになった」と言います。その先輩から「点を取られても取り返す」と。頼もしいゲキだったんでしょうね。「孝司さんの言葉でいつも助けてもらっています」とのこと。
きょう6日の準々決勝・全足利クラブ戦に先発する寺岡投手ですが「もともと4試合(1回戦、準々決勝、準決勝、決勝)全部投げると言い聞かせてきました。あすもあさっても。その準備は、この2ヶ月間でやってきたので」とキッパリ。さすが、新加入ながら早々に信頼を勝ち得たエースです。大車輪の活躍で、クラブチーム日本一の座を取り戻してください!
同点のホームを踏んだ岸選手
岸翔太選手も、寺岡投手と同じくクラブ選手権本大会は初めての経験。でも昨年まで所属した大阪ガスでは社会人日本選手権に出場しています。「代打で1打席だけでしたけど。でも、どの大会であれ“賭けている思い”は同じ」。そんな話をしながら駐車場へ行く道のりで、岸選手は何度も何度も「あ~よかった!勝ってよかった。ほんまによかった」と繰り返します。昨秋、大阪ガスの野球部から戦力外を告げられ、それでも「野球がやりたい一心」で社員として残る道を捨て、箕島のセレクションを受けました。
「何が何でもクラブ選手権で優勝して、日本選手権に出る!そこで大阪ガスに勝つ。だから、ここで負けるわけにはいかない」
3打席ノーヒットで迎えた9回、先頭で右前打を放ち「その瞬間、わあー!って。ホームランを打ったみたいに嬉しかった。絶対に打とうと思っていたんです」と笑顔。続いて打席に入った穴田選手を一塁ベース上から見て「穴田はバント決めると思っていましたよ。ヒット2本打ってたんで(笑)」。なるほど、そういう確信があったわけですね。そしてナイスランでした!「はい。タッチアップして、サードの手前でちょっと見たら転がしていたし、原井コーチの声で加速した。速かったでしょう?足は自信あるんで」とニヤリ。
見事なヘッドスライディングも、初めてだったとか。写真に撮れてよかった!そこへ穴田選手が通りかかり「バレーボールか~(笑)」と低いボールをトスするような恰好をします。すると岸選手は「ちょっとバレーボールと間違えただけやん!セッターになった気分で」と苦笑い。そう、4回の守備でファーストフライを捕りにいってエラーした時の話でした。まあ穴田選手があんな美味しい場面を放っておくわけないですわね。
平井選手「みんなで勝ち取った試合」
1回に相手エラーで出て相手エラーで生還、6回は二塁打、8回は左前打、そして10回がタイブレークの1死満塁でサヨナラの中前タイムリーと大活躍だった平井徹選手。「去年一度タイブレークを経験していて、その時もキッチリ犠牲フライを打てたんです。苦手とかプレッシャーとか、あまり考えないタイプかも。気楽にいけと言われたし、最初のバッターがそんなに重荷でなく、みんなの代表で打って帰ろうと。緊張はしなかったですね」
平常心というか、それよりも勝つんだという気合で臨んだ打席を「ゾーンに来たら全部振ってやろうと思っていました。前進守備に負けない、強い打球を打ってやろうと」と振り返ります。そして「(10回表を)寺岡が0で抑えてくれたし、その前の9回に追いついたことが相手にプレッシャーをかけたと思います。みんなで勝ち取った試合」と平井選手。
ただし前半、焦りや硬さがあったことは否めないとも。「相手の術中にはまったかもしれませんね。フライアウトがメチャクチャ多かった。なのでベンチから“叩け!叩け!”って声をかけていたんですよ」。そんな中で2安打の穴田選手について、こんな話も。「この間、一緒に練習をして『お前は飛ばす能力がある。基本のセンター返しをやっていけばいい』と話していて、きょう逆方向への2本。よかったと思いますよ」
ありがたい先輩のアドバイスを、すぐに結果として出せて何より。さらに「きっちり体を開かずにと練習しました。飲み込みが早いし、潜在能力があるんでしょうね」と平井選手。もうそのくらいにしておいてください。ほめ過ぎて天より高く舞い上がっちゃったら困るので(笑)
最後に「きょうは“一回負けた”と考えるようにします。あすはまた一から挑戦者のつもりで!野球は受け身になった時が怖い」と締めくくる、この試合の殊勲選手。我々もそのつもりで応援させていただきます。
いつもの穴ちゃんでした!
穴田真規選手にとっては2度目のクラブ選手権本大会。2安打したというよりは「とりあえず西武ドームで1本打ててよかった。去年打ってないんで」とのこと。リベンジ成功ですね。西近畿第2次予選が終わった時に「あと2ヶ月で上げていく」と言っていましたが、調子は?「よくなってきていますね、最近」と。最近ですか。でもちょうどよかったかもしれません。それに右方向へのヒット2本が何よりも証と言えます。
「きょうの試合、最初はずっとベンチの雰囲気がよくなかったですねえ。もう負けてしまうと思った」と、逆転勝利にホッとした様子。穴田選手の守備が貢献したと、皆さん言っていますよ。「ありがとぉー!」…変わらない穴田選手です。それとあの犠打でしょう、やっぱり。「あのバント、あとから思えば結構大事な場面やった」。2安打していたので、ヒッティングかと。「監督が原井コーチと話をしにいったので、バントやなと思いました」
しっかり決めたねえ!「うまいやろ?」。はいはい。あすも打ってくださいよ。「は~い。打てる感じしてますよ。右ピッチャーきたら、わからんけど」。わからんのね。
なお岸田健太郎選手が右肩を脱臼したため、このところ穴田選手がサードに入っています。「もし岸田さんがケガしてなかったら、僕はきょう出てなかったと思う」と穴田選手。西川監督は「去年入ってきて最初はショートを守っていたけど、西口に奪われた。今回は岸田の故障でサードに入っている。それを喜ぶわけじゃないけど、こういうチャンスをものにしないと」と話していました。だからきっと打ってくれると信じています!右投手でも。