和歌山箕島球友会がクラブ選手権本大会へ出場!昨年の雪辱を誓う、もと阪神の穴田真規選手
4日の午後、私は枚方市のパナソニックベースボールスタジアムで雨に降られていました。この日は『第40回全日本クラブ野球選手権大会』の西近畿第2次予選で、もと阪神タイガースの穴田真規選手が所属する和歌山箕島球友会が出場。朝9時前から行われた1回戦では打線が爆発して11対0の7回コールド勝ち。見に行った決勝はかなりハラハラされられたものの、結局は11対4と8回コールドで勝利。4年連続6回目の本大会出場を決めています。
朝から小雨が降り続いていたそうですが、1回戦の第2試合が終わって、14時半から始まった決勝は最初から最後まで本降り!おまけに寒くて足元はずぶ濡れという状況なのに、多くのお客様が傘を差して立ったまま応援されていました。のちほど試合経過を簡単にご紹介しますが、穴田選手も代打で出て犠牲フライとコールド勝ちに貢献しています。でも私はカメラを出すこともできない状態で…歓喜に満ちたベンチの様子や笑顔が撮れなくて残念でした。
本大会への道のり
それでは、まず6月下旬に大阪府のみなと堺グリーン広場で行われた大阪・和歌山 第1次予選の結果を書いておきます。6月20日の1回戦・関西硬式野球クラブには6対1で勝利。寺岡投手が9回で118球を投げ、4安打1失点完投。穴田選手は代打からファーストを守って2三振と1失策でした。6月27日の準決勝・NSBベースボールクラブ戦は8対1で7回コールド勝ち。寺岡投手が7回96球、3安打1失点完投。穴田選手は出場していません。同日の決勝・泉州大阪野球団戦は1対0の僅差で勝利。桐原投手が9回111球、2安打完封。穴田選手は6番サードで先発出場して2三振1失策で途中交代です。
続いて、4日に行われた西近畿第2次予選の1回戦と決勝のスコアです。なお出場したのは、大阪・和歌山第1次予選を勝ち抜いた和歌山箕島球友会とNSBベースボールクラブ、兵庫第1次予選からの県警桃太郎とNOMOベースボールクラブ、以上4チームでした。
《第40回 全日本クラブ野球選手権大会》
西近畿 第2次予選 1回戦・第1試合
和歌山箕島球友会-NOMOベースボールクラブ
箕島 101 225 0 =11 (16安打)
NOMO 000 000 0 = 0 (2安打)
※7回コールド
西近畿 第2次予選 1回戦・第2試合
NSBベースボールクラブ-県警桃太郎
NSB 000 000 000 = 0
県警 000 000 001x= 1
※9回サヨナラ
西近畿 第2次予選 決勝
県警桃太郎-和歌山箕島球友会
県警 011 101 00 = 4 (10安打)
箕島 001 051 31x =11 (12安打)
※8回コールド
前半は苦しかった決勝
1回戦も決勝もコールド勝ちで楽勝、と思われるかもしれませんが、決勝の前半は苦しい展開でしたねえ。昨年も大阪・和歌山第1時予選で1つ危うい試合がありドキドキでしたけど、それはスタメンをいつもとは違う若手メンバーに変えて臨んだもの。途中からはレギュラーに戻して勝っています。でもきのうの決勝はそうではありません。なので私は「もしかしたら負けるかも…本大会に行けないかも」と本気で諦めかけていました。
では簡単な得点内容を。2回表にタイムリーで1点先取され、3回表にもソロホームランでを浴びて2対0とリードを許します。その裏に四球、ヒット、四球で満塁としてボークで1点を返した箕島。しかし4回表に暴投でまた1点を追加され、なかなか追いつけません。両チームともエラーなどがありましたが、ずっと降り続く雨のせいでピッチャーも守る野手も大変だったと思います。
4回裏にも走者を出しながら得点できず、3対1のまま迎えた5回表にまたピンチを招き、ここで1試合目で完投した寺岡投手を“中5時間弱”で投入した箕島・西川監督。期待通り0点に抑えたエースのピッチングに、今度は打線が応えます。5回裏、相手ピッチャーの制球が乱れて1死一、二塁となり岸選手がライトへ逆転の3ラン!そのあともタイムリー2本で、この回5点を奪った箕島が6対3と試合をひっくり返しました。
6回表に1点を取られたものの、その裏に1死満塁のチャンスを作って中犠飛で1点。7回裏には四球、バントヒット、犠打で1死三塁となり犠打野選で1点。なおも1死一、三塁で右中間タイムリー。さらに1死一、三塁で代打の穴田選手が右犠飛と計3点を追加。これで10対4、コールド勝ちまであと1点となります。そして8回表を寺岡投手が抑え、その裏にタイムリーで11点目が入った瞬間、箕島の勝利が決定です。
西川監督の采配がズバリ!
試合後のベンチで、和歌山箕島球友会の西川忠宏監督に話を伺いました。いつも余裕で見ているんですけど、今回はどうなるかとハラハラで、と告げたら「いや~ほんと、よう頑張ってくれたと思いますよ!」と監督もホッとされた様子。「(県警桃太郎は)直前の試合でサヨナラ勝ちした勢いもあって、流れは完全に向こうだったでしょう。4回に取られた3点目が痛かった。あれは痛かったですね。でも岸がよく打ってくれました」と言われます。5回裏に出た岸選手の逆転3ランがなかったら、結果は違ったかもしれません。
しかし実はその直前、5回表の投手交代が前兆だったのです。「ピッチャーを寺岡に変えて、向こうにあった流れを強引に変えにいきました。まだ早いかなと思ったけど逆転さえすれば流れはこっちに来るので」と西川監督。なるほど、それが見事に的中したわけですね。「寺岡が放っているんだという、チームの安心感でしょうか。1試合目で100球も投げたのに、よく踏ん張ってくれた」と力投のエースをたたえます。
ただ「あと2、3人(そういう)ピッチャーを作っていかないと。それに試合と試合の間が空いた時に、こういう状況になってしまう。向こうは勢いに乗っていたけど、こちらは乗れなかったので、試合の“入り方”を勉強しないとダメですね」と、本大会に向けての課題を挙げる西川監督。
そして穴田選手については「ケツに火がついたのか、よう練習やってますよ」とのことでした。それは新しく入団した同い年で同じ内野手の岸選手が好調なのもあってでしょうか。「岸は2、3日前からよくなったんですよ。穴田も西武ドームで試合に出られるよう、頑張ってもらわんとね」。はい、私もそう期待しています。
監督賞2人は穴田選手の同級生
そのあと屋根のあるブルペンの中でミーティングが行われ、最後に西川監督から“監督賞”が贈られました。逆転3ランの岸選手と、2試合ともに投げた寺岡投手が受賞。またベンチでチームを盛り上げた高橋道岳投手が“ベンチワーク賞”に選ばれました。この高橋道岳投手も新入団で、穴田選手や岸選手と同い年です。
監督賞の2人にも話を聞けたので、ご紹介しましょう。まず岸翔太内野手。この日は1試合目が3安打2打点、決勝が2安打3打点でした。逆転3ランについては「流れが悪かったんで何とかしたかった。いい感じで打席に入れて、初球から狙っていきました」とのこと。6回にも無死満塁で回ってきて、そこは「左ピッチャーを打ったあとの右ピッチャーで、力みもあった」とレフトフライでしたが、コールドゲームとした8回のタイムリーは「完璧でしたね」と笑顔がこぼれます。
以前も書きましたが、昨年まで社会人の企業チーム・大阪ガスにいた岸選手。野球部員として戦力外を告げられても、社員で働き続けることはできたのに「野球しかないから」と退社して、箕島球友会のセレクションを受けたのです。目指すところはNPB。その必死な姿は西川監督がおっしゃるように、穴田選手を刺激していることでしょう。ましてやサードやファーストとポジションもかぶっていますからね。
もう1人の寺岡大輝投手も穴田選手や岸選手と同級生で、ことし入団したばかり。でも、最初に書いたように6月の第1次予選では2試合(9回と7回)で完投しています。そして第2次予選では1回戦で7回を投げ完封、数時間後の決勝はロングリリーフと大車輪の活躍でした。1試合目の球数は?「99球です」。決勝が47球で、しかも序盤からもうピッチングを始めていたでしょう?「はい。2試合投げろって言われていました(笑)」。いやいや笑いごとじゃありませんよね。
「きつかった…肩もヒジも痛かった…」
そりゃそうです。ただのリリーフではなく、押され気味なうえにピンチの場面で、負ければ本大会出場を逃すという責任重大の試合でしたから。監督も寺岡選手に賭けたそうですよ。「直接は言われてないけど、でもよかったです」と心底ホッとしたように見えます。直後に岸選手が逆転3ランを打ってくれたのも大きいでしょう?「はい。融合しました」。どうやら“寺&岸”の融合、ということみたいです。ここに“穴”も加わったらいいんだけど。
「あと2ヶ月。何とかします!」
お待たせしました。では穴田真規選手の話です。午前の1回戦には出場せず、決勝も代打からだった穴田選手。実はちょっと調子を落としています。「精神的もの、かな」と言うので、スタメンを外れたりしているのが理由かと思ったのですが「試合に出られないとか、そんなこととは違うんですよ。それは自分が結果を出してないからで」と言います。ああ見えて(失礼)けっこう思い悩んだりするタイプなので、何かいろいろと考えさせられることがあったみたいですね。
でも決勝では代打で犠飛、チームの勝利に貢献。それで少しはホッとしたのか、試合終了直後はいつもの穴田選手でした。「林さんに代走の木村が出て、次は穴田いこって言われた」と代打で出た7回1死一、三塁の場面。どんなことを思っていたか聞くと「何も考えてなかった。ランナーが三塁におるのも知らんかった。気がついたらタッチアップしてた(笑)」そうです。そして今回の1次予選、2次予選を通して「3試合で4打数0安打で1打点、三振4つ」と苦笑い。
そのあとチームのバスへ向かっている時、甲子園のナイターが中止になった一二三選手から電話がかかってきたんです。あとでかけ直すと言って、ふとこんなことをつぶやいた穴田選手。「きょうベンチにいて、タイガースの時を思い出しました。試合に出るとしてもピンチヒッターとかやから、いつもベンチで声出してたなあって…。あの頃をメッチャ思い出した」。そして「ずっと出られると思ったらダメですね」とも。
ここからですよ。ここから。西近畿の代表として9月の本大会出場が決まりました。「はい!それが一番よかった。西武ドームに行けるのが一番です。去年は1本も打てなかったから、ことしは打ちますよ!あと2ヶ月ある。何とかします」。穴田選手らしい言葉と、いい笑顔でした。
『第40回 全日本クラブ野球選手権大会』は9月4日から西武プリンスドームで開催されます。
※穴田選手について、ことし書いた記事はこちらです。