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なぜモチベーションを上げたかったら「気合い」が必要なのか? 意外な事実

横山信弘経営コラムニスト
そもそもモチベーションを上げられる体質なのか? (写真は紀州備長炭)(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

■ モチベーションと気合い

薪を燃やすには、誰かがその薪に火をつけなければいけません。それと同じように、モチベーションを上げるには、そのための火を誰かがつけなければならない。

とくに自分でモチベーションを上げたいなら、そのための火が必要で、その火の正体こそ「気合い」です。

今回は意外な組み合わせ。モチベーションと気合いについて、解説します。

■ 堂々巡りのモチベーション論

モチベーション、モチベーションと、やたらと口にする人がいますが、そもそも自分自身がモチベーションをアップさせられる体質になっているかどうか、まずこれを見極めなければなりません。

食欲や性欲、睡眠といった、「生理的動機づけ」ならともかく、一般的に使われるモチベーションとは「内発的動機づけ」のことです。

義務や賞罰によっての動機づけである「外発的動機づけ」と区別されていますから、自分の内側から湧き上がってくるものを指します。したがって、自分自身に興味、関心があるかどうかが「内発的動機づけ」を決定させる要因となるのです。

ただ、堂々巡りになりますが、何かに興味や関心を持つには「攻め」の姿勢が大事。「待ち」の姿勢では、何事にも興味を持たないし、知的好奇心が芽生えることもありません。

極端な話、生まれたときから、何となく気分の向くままに生きてきたら――つまり外発的動機づけがゼロなら――興味関心を持つ対象も、かなり限られてくるということです。

■ 偶然にどこまで期待するか

興味、関心は、接触頻度に左右されます。ですから、たとえば親が不動産事業をしているなら不動産に興味を持つかもしれません。家族で洋服店を営んでいるのなら、服飾に関心を寄せる子もいるでしょう。

兄が野球をやっているのなら野球。スキーが盛んな地元に生まれたなら、スキーに。

身近な人の仕事や趣味に興味を覚えないなら、テレビや雑誌、ユーチューブ等に触れているうちに、何らかに関心を抱くかもしれません。

すべて偶然。

偶然によって、何かに興味を持ったり、関心を持ったりするものなのです。

ですから恋愛と同じで、何らかの偶然を期待していたら、いつまで経っても素晴らしい「出会い」はありません。

つまり、社会人になるまでの間、なんら外発的動機づけがなく、内発的動機づけのみに頼って生きてきたら、どうしたって興味、関心を持つ対象はほとんどといっていいほどなくなる。

「やりたいことが見つからない」と口にする若者が多いのはこのせいです。

■ まず外発的動機づけが先

私の息子はサッカーに興味があります。3歳のころから地元のサッカーチームに所属させたからです。娘は水泳です。娘は0歳のころから水泳を習わせているからです。

私は料理をするのが好きです。強い関心があり、探求心も旺盛だと自負しています。しかし、それは、青年海外協力隊時代、自ら料理をしなければならない環境に身を置いていたからです。そうでなかったら、そんな好奇心は一生芽生えなかったかもしれません。25歳ごろまで、まったく料理に興味など持つことはなかったですから。

私は、普通の人よりも、モチベーションを高くすることができる体質であろうと自負しています。それは先天的なものではなく、環境要因によって後天的に身に付いたものだと受け止めています。家庭もそうですが、不自由な環境に身を置いていた期間がとても長かったからでしょう。私を突き動かしたのが「~したい」「~なりたい」といった内発的なものではなく、「~すべき」「~ねばならない」といった外発的動機が、圧倒的に多かったからだと自己認識しています。

■ 炭なのか、それとも普通の木なのか

それでは、炭でたとえてみましょう。モチベーションが高められる体質というのは、いわゆる「炭」のような性質を持った人を指します。

炭(木炭)というのは、木を燃やしたあとの「燃えカス」ではなく、蒸し焼きにして炭素だけにしたものを指します。

炭の原料となる木材は、セルロース(繊維)や、炭素、酸素、水素などの物質で構成されていて、蒸し焼きにすることで、炭素や水素がガスとなって揮発し、炭化が進むそうです。

炭は、ガス成分が揮発し、残った材質が炭化して固まったものだということですね。

木を燃やすと、普通は灰になりますが、炭は違う。

元の木材の組織は残っていて、しかも、小さな孔が無数に空いています。なので、酸素が内部にたくさん入り込み、普通の木よりも燃えやすく、火持ちがよくなるそうです。

何が書きたいかと言うと、こうです。

モチベーションを高めたいと言っても、そもそもモチベーションを高められる体質なのか。つまり普通の木なのか、それとも炭なのか、ということ。

学生時代や、社会人になってからの数年間に、どれほど外発的動機づけによって鍛えられ、良質な炭になっているか。最高級の「備長炭」とまでは呼ばれてなくとも、もし鍛えられていない単なる木材のままなら、火をつければ煙も、匂いも、出ます。そして火持ちもよくありません。つまり火をつけられても不平不満しか口にしませんし、どんなに「やる気あります」と言っても長続きもしない。

モチベーションが必要、モチベーションが足りないと、常に言っている人は、まず、ご自身の体質を疑うことからはじめましょう。

たとえ何らかのきっかけで意欲がアップしても、すぐに「これでいいのだろうか」「なんか違う気がする」とグズグズ言い、頭から煙を出し、一心不乱に燃えることができず、継続して没頭できないのなら、良質な炭になっていない、ということです。

下品な表現をすれば、「焼き」を入れられてないだけ。目の前の仕事をするのに、どうも意欲がわかない。上司から指示されたことをやるのに「やらされ感」を覚える人は、結局のところ「気合い」が足りないと受け止めましょう。

好きとか嫌いとか関係なく、「気合い」を入れてやることによって、仕事に打ち込み、興味や関心がわいてくるものです。そうすれば、内側から燃えるものを感じるでしょう。モチベーションを上げたくても、なかなか上がらない人は、まず「気合い」を入れることをお勧めします。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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