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2週間先までの日ごとの予報から見た沖縄の梅雨明けと西日本の梅雨入り

饒村曜気象予報士
雨の日の横断歩道(写真:アフロ)

沖縄の梅雨

 令和元年(2019年)の沖縄の梅雨入りは5月16日と、奄美の5月14日より遅れてスタートしました。

 その後、6月7日に東海から東北南部まで梅雨入りをし、6月15日には東北北部も梅雨入りをしました。

 しかし、近畿・中国・四国・九州北部が未だ梅雨入りをしていません(表1)。

表1 令和元年(2019年)の梅雨入り
表1 令和元年(2019年)の梅雨入り

 これは、太平洋高気圧の発達が遅れ、梅雨前線が沖縄付近から北へ押し上げられることがないためです。

 東海から東北北部は、上空に北から寒気が流入したり、下層に南から湿った空気が流入することが多かったために、梅雨前線によるものではありませんが、曇りや雨の日が続いたということでの梅雨入りです。

 梅雨時に現れるオホーツク海高気圧は、ほとんど出現しておらず、令和元年(2019年)の梅雨は、沖縄を除いて、教科書に載っているような梅雨ではありません。

 沖縄は、梅雨入り以降、沖縄本島か宮古島などの先島諸島、あるいは、両方で強い雨が降り続いています。

 6月21日(金)も、沖縄では午前中は雨の予報です。

限界に挑戦した新しい気温予報

 気象庁は、令和元年(2019年)6月5日14時30分から、日ごとの気温を2週間先まで発表する「2週間気温予報」を発表しています(予報は毎日14時30分に発表)。

 日ごとの天気予報をコンピュータで行うときには、計算上の誤差が蓄積されることから、技術的限界が2週間と言われてきました。

 「1か月予報は1か月の平均的な値を予報する」というように、1週間以上先の現象については、日ごとの値を予報するものではなく、平均値を予報するものでした。

 今回の「2週間気温予報」も、7日先までは当日の気温を予報していますが、8日先から14日先までについては、当日の気温ではなく、前後2日間の平均(当日も含めた5日間の平均)の気温を予測するということで、技術的な限界に挑戦した予報です。

 同じ天気予報でも、天気の予報と気温の予報では、一般的に天気の予報のほうが難しいといえますので、まずは、昨年6月に運用を開始した新しいスーパーコンピュータを用いて、5日先の平均気温を予報しようとする、限界に一歩近づいた予報といえます。

 2週間気温予報が始まるまで気象庁で発表となっていた「異常天候早期警戒情報(平成20年(2008年)3月21日からスタートし、現在はに早期天候情報に衣替え)」では、7日平均値を対象としていました。

 図1は、気象庁のホームページにある「2週間気温予報」のページです。

図1 最初の2週間気温予報を伝える気象庁のホームページの画面(6月19日14時30分発表)
図1 最初の2週間気温予報を伝える気象庁のホームページの画面(6月19日14時30分発表)

 これは、全国の8日先から12日先まで5日間平均した日平均気温を5段階で表示しており、かなり高い(かなり低い)は、かなり高い(かなり低い)気温となる確率が30%以上のときに表示します。

 そして、地図の上をクリックすることで、各地の「2週間気温予報」が表示されますので、農業や経済分野での活用や、衣替えなどの日常生活での活用など、幅広い利用が期待されています(図2)。

図2 最初に発表となった2週間気温予報(鹿児島の場合)
図2 最初に発表となった2週間気温予報(鹿児島の場合)

沖縄の梅雨明け

 気象庁では、「2週間気温予報」の発表に関連し、民間気象会社の行う16日先までの天気予報を、信頼度等の不確実性に関する情報を付加する条件付きで許可しています。

 天気の予報が気温の予報より難しくても、信頼度等の不確実性に関する情報を付加するなど、利用者に対するフォローがあるなら、気象情報の利用が進むとの考えからです。

 こうして民間気象会社による16日先までの予報がスタートしました。

 図3は、トップをきって一般向けに公表したウェザーマップによる、16日先までの沖縄県那覇の予報です。

図3 沖縄県那覇の16日先までの日ごとの予報
図3 沖縄県那覇の16日先までの日ごとの予報

 那覇では、6月29日までは傘や黒雲(雨が降りやすい雲)マークが並びますが、それ以降は晴や白雲(雨が降らない雲)マークが並びます。

 29日の信頼度は5段階のうち最低のEですが、その後は、信頼度が高くなり、7月3日以降は、最も高いAとなります。

 信頼度の関係で、6月29日と断定できませんが、沖縄の梅雨明けは29日前後といえそうです。

 沖縄の梅雨明けの平年は6月23日ですので、平年より遅い梅雨明けになりそうです。

西日本の梅雨入り

 西日本各地の梅雨入りは遅れています。

 今日、6月21日に梅雨入りしたとしても、近畿、四国では1位タイ、明日以降なら新記録になります(表2)。

表2 近畿・中国・四国・九州北部の遅い梅雨入りの記録
表2 近畿・中国・四国・九州北部の遅い梅雨入りの記録

 大阪の16日先までの予報をみると、6月26日までは晴れや白雲のマークが多いのですが、27日以降は黒雲や傘のマークが並びます(図4)。

図4 大阪の16日先までの天気予報
図4 大阪の16日先までの天気予報

 27日の信頼度は5段階うち真ん中のCとなっており、その後の信頼度にAはないのですが、6月30日以降は信頼度がBです。

 近畿の梅雨入りは、6月27日前後になるかもしれません。

 広島では、黒雲や傘のマークが続くのは、6月26日以降ですが、広島の26日の信頼度はEです(図5)。

図5 広島の16日先までの天気予報
図5 広島の16日先までの天気予報

 このように、信頼度は低いのですが、西日本各地では、6月26日から27日に梅雨入りの可能性があります。

 昭和38年(1963年)のように、梅雨入りが特定できなかった年にならなければの話です。

 なお、昭和38年(1963年)は、5月から雨の日が多く、いつの時点の雨から梅雨の雨になるのかということが特定できなかった年で、乾燥した晴れの日が比較的多い令和元年(2019年)とは、ちょっと違っています。

図1、図2、表1の出典:気象庁ホームページ。

図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

表2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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