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妄想戦士 吉澤嘉代子、女子の“毛”の悩みを歌った話題作「ケケケ」でさらなる覚醒へ!

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
吉澤嘉代子

6話形式の“妄想系女子”による楽曲集『幻倶楽部』に注目!

“妄想系女子”シンガー・ソングライター、吉澤嘉代子の勢いが止まらない。前作『変身少女』で提示したラブリーポップスとは裏腹に、10月22日リリースの最新作『幻倶楽部』ではより“妄想系女子”による楽曲集をテーマに、6話の短編集のごとく物語が繰り広げられていく。まずは、リード曲「ケケケ」のミュージックビデオをチェックして欲しい。なぜ女性は身体を守るためにはえた毛と闘わなければならないのか? そんな疑問を70’s歌謡曲×アニソン風味で突き抜けた極上のポップチューンに仕上げている。すでに先行して披露されたライブでも、会場中で一体感を感じられるアグレッシヴなダンスナンバーとなっていた。なぜ、いま「ケケケ」なのか? そして『幻倶楽部』なのか? 訊いてみた。

●主人公ありき、物語ありきで世界がぎゅっと詰まったもの

タイトル『幻倶楽部』というのが印象的です。

吉澤:前作は『変身少女』というタイトルで、ラブリーポップスな楽曲に振り切ったものにしたんですけど、今回はがらりと変えました。吉澤嘉代子の持つおどろおどろしさだとか、狂気的な部分を物語としてポップに伝えたかったんです。なので曲ごとに主人公が違くて個性も強いです。そこにタイトルを『幻倶楽部』と名付けることで、主人公たちが集まる秘密倶楽部みたいな組織をイメージしてます(笑)。

おお〜、なんとなく藤子不二雄A的な世界観を結びつけたくなりますね。でも、吉澤さんだったらもっと少女漫画的イメージかな。主人公のプロフィール設定も詳細にイメージされてそうで面白いですね。そして、そんな主人公をポップミュージックとしての表現を通じて演じきる吉澤さんという構図が絶妙ですね。

吉澤:ありがとうございます! 自分の等身大を出すというよりも、主人公ありき、物語ありきで世界がギュっと詰まった曲にしたかったんです。そうすることで、リスナーの方が想いを重ねられる部分を大事にしたくて。わたしは小説が好きなんですけど、小説を通してそんな体験をずっとしてきて、それが今の糧になっているんですね。そんな体験を短編集的に音楽でってのが今回のコンセプトです。

全体を通じて伝わってくる昭和感というか歌謡感。でも、言葉の伝え方がテン年代のセンスをお持ちなんですよね。

吉澤:昭和の頃って、職業作家さんが書いた詞曲がほとんどで、それをアイドルや歌手さんが歌ってましたよね? たとえば、おじさんがキュンキュンなラブソングを書いたりするワケですよ。それってリアルさの追求じゃなくって、良い意味で作り物感が強いんですよね。そんなセンスがたまらなく好きで、憧れが強かったんです。

好きな作詞家はいますか?

吉澤:松本隆さんの歌詞がすごく好きです。松田聖子さんに提供している曲とか、それこそ歌詞サイトで言葉を見てるだけでもうっとりしちゃうようなきれいな日本語をつかわれていて好きですね。

●みんなが当たり前だと思うことが本当に当たり前なのか?

1曲目に登場するリードチューンが「ケケケ」。これはキラーチューンの登場ですね! ライブで先行されて演奏された時からインパクトを感じていた曲です。

吉澤:両極に振り切れた曲だと思います。ある時、自転車に乗りながら毛がはえていることに気づいて剃らなきゃなと思ったんですけど「どうして剃らなきゃいけなかったんだろう?」という疑問から生まれた曲ですね(苦笑)。その頃「みんなが当たり前だと思うことが本当に当たり前なのか?」とか、疑いの目を持つのが自分のなかでブームになってました。世の中で「自分自身を他人に知ってもらいたい、特に好きな人には知ってもらいたい!」って気持ちがあると思うんですけど、それでも「自分のすべてを知ってもらいたくはないな……」と思って。よくドラマである「僕のすべてを君に知ってもらいたいんだ!」というセリフとか歌詞とかとに反抗心があったんですよ。

なるほど、視点のユニークさが歌詞の個性を引き立たせているのですね。「ケケケ」はアレンジ的なところも、歌謡テイストなソウル感というか、もはやアニソン的なテンションの高さがヤバいですよね。

吉澤:“悲劇の戦士よケケケ”っていう歌詞があって。そこで戦士という言葉が出てくるんですけど、なんとなく戦隊モノっぽくしたいなって思ったんです。戦隊モノ歌集を聴いたりして(苦笑)。カッコ良くって驚きました。

聴かせどころ、快楽ポイントがはっきりしてるサウンドなんですよね。たしかに「ケケケ」と通じるセンスがあるかも。

吉澤:わかりやすさがカッコ良いなと思って。

「ケケケ」は、キーワード的にもいろんな要素があって、一人歩きして広がりそうな曲ですよね。しかもホーンでオレスカバンドが参加されてるんですね。他にも、ベースでPOLYSICSのフミさん、ギターは田渕ひさ子さんだったり。なかなかの豪華女子ミュージシャン面子で。

吉澤:レコーディングの時、全国のラジオ・キャンペーン中で参加できなかったんですよ(泣)。なので、ビデオレターみたいな感じで「よろしくお願いします!」って送りましたけど。あ、でも返事を貰えてなかった…。

ハハハ、気になりますね。ここまでパワフルな曲というのは初めてですか?

吉澤:そうですね!一気にパーンと、歌詞なんかも手直しすることもなく出来た曲なんです。2〜3年前に書いた曲ですね。満を持して華々しく出せて良かったです。

●漫画から派生する同人誌みたいな感じなのかな?

アルバム・タイトルで言うところの『幻倶楽部』のイメージは、自分の中ではけっこう見えたりしてますか?

吉澤:探偵のイメージってあったんですよ。そして倶楽部に集まるのはどんな人達かを妄想するのが楽しくって。

ていうか、アートワーク完全に探偵の衣装になってますね。このために作ったんですか?

吉澤:実は、ANREALAGE(※気鋭のアパレルブランド)のものなんです。

なるほど! もともとお好きなんですか?

吉澤:今回のアートワーク担当していただいた方つながりですね。完全に妄想とヴィジュアル・イメージが一致しました。

それは素晴らしい。そして、2曲目が「シーラカンス通り」ということで。この曲は、勢いあるロック感あるナンバーですね。サビの切迫感がカッコ良いです。

吉澤:三島由紀夫さんの「黒蜥蜴」という戯曲を読んだときに、すごい華美なギラギラしている言葉が詰め込まれているセリフが多くて、ゴテゴテ感がたまらなかったんです。三島さんの文章ってわたしには読みやすくて。こっけいなほど美しくやりすぎるみたいな感じがして、そういうところがすごく良いなと思って。「黒蜥蜴」の主人公の盗人がカッコ良くて、その主人公がもし幻の町でストリッパーをしていたらって妄想したんです。どうしてそこに結びついたかはわからないんですけど、漫画から派生する同人誌みたいな感じなのかな? 好きすぎてついつい作っちゃった感じですね。

「黒蜥蜴」とか相当エネルギッシュな作品だから刺激を受けたんですね。

吉澤:たとえ方とかもすごくカッコ良いフレーズが好きですね。

そんなフレーズに出くわすと楽曲を書かずにいられなくなるんですね。

吉澤:そうですね。この「シーラカンス通り」もパーッと書いた曲ですね。

そして3曲目が「うそつき」ということで、これもイントロから昭和歌謡感たっぷりな、でもサビの展開とかは今っぽいセンスがあってさすがだなと思いました。

吉澤:これはすごい前に書いた曲で、今回入れるとなってちょっと直しました。何年か前に、わたし嘘をついたことがあって……。でも、自分自身がそんな状態に耐えられなくて、そんな心情をきっかけに書いた曲です。まぁ、嘘自体はこの曲の話とはぜんぜん違うものだったんですけど、嘘をついた時に自分が苦しんだんですね。その苦しさというのは、何かを隠しているゆえの嘘なんですけど、本当のことを隠したいから嘘をつく。嘘のなかにはいつでも本当が隠れているんだなと思って。

ふむふむ、深いお話なのですね。そして、4曲目は「恋愛倶楽部」。これは書いていて楽しかった曲なんじゃないかと思ったんですけど。

吉澤:そうですね。これは「倶楽部」という言葉のアテ字が好きで。いつもタイトルから曲を作るんですけど、「倶楽部」という言葉を入れたタイトルで曲を作りたいなって思って「恋愛倶楽部」が生まれました。タイトルに引っ張られていろいろイメージが浮かんできて、学校非公式のサークルに入った主人公がみえてきました。そこに女の子の残酷さを書きたいなと思って、お話の流れとしては「恋愛倶楽部」に入った主人公が、みんなのアドバイスを聞いて、好きだった子にバレンタインの時にエクレアを渡すんですけど、それによって彼が振り向くんですけど、振り向いたら自分の中で温度が下がってしまうという。そして、なんとなく「ちょっと違うな……」と思ってお断りしちゃうっていう話なんです。幻に恋しちゃう、そういう残酷さですね。

少女マンガ的な。

吉澤:「恋愛倶楽部」だったら、まともに恋愛させたくないなってなんか思って。

恋は実らないほうが、ていうかその直前くらいでああだこうだいっているほうが楽しいですもんね。このテーマで何曲か作れそうな良いテーマですね。ストリングスな盛り上げもツボりました。

吉澤:「恋愛倶楽部」では、垢抜けない中学生を主人公にしたんですけど、ちょっと東京に憧れているような女の子を出したくて。そんなイメージをアレンジャーさんにお伝えして出来上がりました。

●言葉が活きていて、そこの軸さえズレていなければ良いんだって思っていて。

そして、5曲目が「ちょっとちょうだい」。この曲もすごいキャッチーでフックも強い。歌詞がちょっとグロテスクでユニークですよね。

吉澤:これは最近の曲ですね。これもパパっとできた曲で作るのが楽しかったんですよ。

「ちょっとちょうだい」って言葉をテーマに切り取ったのって面白いですよね。意外と日常でよくありますもんね。

吉澤:これもタイトルが最初できて、そこから広げていきました。

そこから化け猫に結び付けて落としていくというのはすごい面白い展開ですよね。

吉澤:かなりお気に入りの曲ですね。

かわいい曲だけど怖さがありますよね。そいえば、最近は妖怪ブームですからタイミングも良いですよ。そして、6曲目は「がらんどう」。アルバムを締めくくるに相応しい壮大な雰囲気を持つナンバー。この曲も手応え感じられたんじゃないですか?

吉澤:そうですね。本を読んでいたら「がらんどう」って言葉に出くわして、良い言葉だなと思ったんです。音の響きが意味も表しているっていうか、こういう言葉がすごく好きで。たとえば「どしゃぶり」とか、どしゃぶり感が出てますよね? そんな響きが好きなんです。がらんどうもそうなんですよね。

こうやってアルバムが完成してみていかがですか?

吉澤:自分の大好きな曲をいっぱい形に出来たので、「ヤッター!」って両手を上げたい気持ちですね。まだ世の中に出ていないのでどんな反応が返ってくるのか楽しみです。前作の『変身少女』や、インディーでリリースした『魔女図鑑』もなんですけど、毎回意外な反応を貰えるのが面白いんです。今回はみんなどういう風に受け取ってもらえるかが楽しみですね。

吉澤さんの場合、わかりやすくストレートにテーマを描きつつも、物語的な伝え方によって、受け取るリスナーごとに聴こえてくる景色が違いそうですよね。

吉澤:そうだと嬉しいですね。わたしは時代とかにこだわりがなくて、それが良い悪いはあるんですけど。一番大切にしているのは言葉なんです。自分の中で使える言葉、許せない言葉という線引きがはっきりしていて、それはうまく口ではあらわせないんですけど、その線引きをした上で曲を作っています。言葉が活きていてそこの軸さえズレていなければ良いんだって思っていて。

こうやってタイトルはもちろん、言葉へのこだわりがハンパないことが伝わってきます。

吉澤:そうですね。歌詞の表記とかこだわってます。あまり見られないところかもしれないですけど。

●今回、ライブでみんなに協力してもらいたいポイントがいっぱいあるんですよ。

吉澤嘉代子
吉澤嘉代子

リリース後は、ワンマンライブ『吉澤嘉代子ファーストツアー 〜妄想文化祭〜』も控えてますね。

吉澤:今回は、地方でも開催出来るのが嬉しいです。自分から会いに行けるのがすごく嬉しくって。曲作りとレコーディングとライブって曲と向き合っているんですけど全部ぜんぜん違いますよね、同じことをしていても。

ご自分で小説を書いてみたくなったりはしないんですか?

吉澤:雑誌『MARQUEE』の連載で、ちょっとだけやったことあったんですけど。それは楽しかったです。いま思い出したんですけど、以前は「おばあちゃんになったら小説家になりたい」ってずっと言ってました。今は自分の身の回りに起きていることで精一杯で、将来のことまでまったく考えられませんね(苦笑)。

そういえば、この人と会ってみたいとか、対談してみたいって方いますか?

吉澤:小説家の絲山秋子さんに会ってみたいです。すんなり読めるきれいな言葉や表記が素敵なんです。

なるほど〜。ミュージシャンでは誰ですか?

吉澤:サンボマスターさんですね。今回ミュージックビデオを撮ってくださった監督さんが、「今度サンボマスターに会うから言っておくよ!」って言ってくださって。わたしの存在が伝わりますかね? でもそれが「ケケケ」ってっていう(笑)。

ハハハ(笑)。ぜひお会いできると良いですね。最後にリスナーの方にメッセージをお願いします。

吉澤:今回、ライブでみんなに協力してもらいたいポイントがいっぱいあるんですよ。「ケケケ」の振り付けや、「ちょっとちょうだい」の最後の「ちょっと もっとちょっと もっと ぜんぶ ぜんぶ ぜんぶ ぜんぶ 」と「ぜんぶちょうだいな」などの流れが大事ですね! 注目して欲しいです。

そこ、ライブで盛り上がりそうですね。

吉澤:でも、ライブで一回もやったことない曲なので、まだわからないですけど(苦笑)。

吉澤嘉代子

2nd ミニアルバム「幻倶楽部」

2014.10.22 release!!

CRCP-40386 ¥1,667+税

収録曲

1.ケケケ

2.シーラカンス通り

3.うそつき

4.恋愛倶楽部

5.ちょっとちょうだい

6.がらんどう

『吉澤嘉代子ファーストツアー ~妄想文化祭~』

2014年11月22日(土)大阪府 Shangri-La

2014年11月27日(木)東京都 TSUTAYA O-EAST

2014年12月4日(木)愛知県 Tokuzo

料金:前売 3300円 / 当日 3800円(全公演共通・ドリンク代別)

『幻倶楽部』発売記念 CD予約イベントミニライブ&サイン会情報

9月27日(土) 開始 12:00 @大宮カタクラパーク 

9月27日(土) 開始 16:00 @タワーレコード横浜ビブレ店

10月5日(日) 開始 13:00 @タワ-レコ-ド名古屋近鉄パッセ店

10月5日(日) 開始 17:00 @タワーレコード名古屋パルコ店

10月11日(土) 開始 12:00 @タワーレコード浦和店

10月11日(土) 開始 16:30 @モラージュ菖蒲1F滝のコート

吉澤嘉代子オフィシャルサイト

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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