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14歳ドラマー、YOYOKAによる世界への挑戦 〜1stアルバム『For Teen』を紐解く

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
photo by YOYOKA

●楽器プレイヤー、ミュージシャン・ファーストなイズム

敏腕ミュージシャンが音楽シーンを変革に導いた事例は多々ある。なかでも、70年代に活躍した日本語ロック史の草創期に誕生したはっぴいえんど(細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂)、世界のYMO(細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一)を発端に、その後の歌謡曲、ニューミュージック、シティ・ポップなどを支えた腕利きのプレイヤーたちの存在に着目したい。さらに80年代、音楽制作会社だったビーイング(現B ZONE)は、織田哲郎、北島健二、西村麻聡、LOUDNESS。結成時のBOØWY。そして、TM NETWORKや浜田麻里のサポートギターで知られ、後にB’zを結成する松本孝弘らをスタープレイヤーとして後推ししたことは、J-POP黎明期のカルチャーにミュージシャン・ファーストなイズムを生み出した。

その後、日本では、テクノロジーの発展の影響から大手スタジオの減少、楽器の高騰化、DTMで完結するダンスミュージックやボーカロイドカルチャーの躍進など、楽器カルチャーが影を潜めつつあると思いきや現在では、バンドを描いた『ぼっち・ざ・ろっく!』のヒットなどアニメカルチャーから、楽器演奏やミュージシャンへの憧れは紡がれている状況だ。日々、楽器をテクニカルに演奏するプレイヤーの勇姿がカウンターカルチャーの如くYouTubeやTikTokなどにアップされ続けている。

●全世界が注目する14歳のドラマーYOYOKA

そこでミュージシャン・イズムに溢れるプレイヤー、YOYOKAの出番だ。

photo by YOYOKA
photo by YOYOKA

2018年、レッド・ツェッペリン“グッド・タイムズ・バッド・タイムズ”のドラムカヴァー動画で発見され、8才の天才少女ドラマーと称され世界で話題となってから早6年。

全世界が注目する14歳のドラマーYOYOKAは2年前に北海道石狩市からアメリカに移住、念願の1stアルバム『For Teen』が2024年10月11日にリリースされたばかりだ。ロック、ポップス、ジャズ、フュージョン、プログレ、ファンク、パンクなど多彩なジャンルによって変幻自在のプレイを聴かせてくれる全14曲。拍の取り方の絶妙なる自由さ、しなやかかつ軽やかにグルーブを生み出すスキルフルなドラムプレイが絶品な作品集となった。

YOYOKAは大手レーベルやエージェントに所属せず、自身が生み出したコネクションによって世界的プロデューサーのナラダ・マイケル・ウォルデン、ブルー・マーダーに参加したロック界のレジェンドベーシストであるマルコ・メンドーサ、元ドリーム・シアターのデレク・シェリニアン、ジャミロクワイのメンバーたち、ザ・フーのバンドマスターも務めてきたフランク・シムズ、上原ひろみのツアーメンバーも務めたトニー・グレイ、氷室京介やB'zなどのサポート、アレンジを手がけるLA在住ギタリストのYukihide “YT” Takiyama、世界最年少の12歳でバークリー音楽大学に進学したピアニストAi Furusato等、そうそうたるアーティスト、プロデューサーがアルバムに参加している。

●ほぼすべての曲においてYOYOKAは作曲に携わっている

YOYOKA名義の1stアルバムとなった『For Teen』。本作の名刺となるのは、フュージョン的にはじまるオープニング“Origin”だ。令和シティ・ポップのブーム以降、フュージョンを経由したプレイヤー嗜好のサウンドへ注目が集まる昨今、ミュージシャンシップを感じる聴きどころ満載の展開なのだ。そして、音楽を演奏する楽しさが伝わってくる“Sky Blue”、“YOYO”や、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロの息子でギタリストのローマン・モレロを迎えた“Bang Away”など、ゲストシンガーや腕利きの楽器演奏者を迎え、さまざまなドラム・テクニックを堪能させてくれる1枚へと仕上がった。ほぼすべての曲においてYOYOKAは作曲に携わっていることも見逃せない。

ヒットポテンシャルの高さとして注目したいのが5曲目“Time Travel”で駆け巡るポップかつソウルフルな疾走感だ。そして、世界最年少となる12歳で米バークリー音楽大学に入学したジャズピアニストAi Furusatoと共演した「Changes」、ソロデビュー曲となった「Sparkling」のデュオ・ヴァージョンは圧巻だった。

●YOYOKA自身がボーカルを担当した“Keychain”

さらに耳に残ったのは自身でボーカルを担当した“Keychain”だ。ピアノによるダークなリフがクールかつ耳に残るドープなミディアムチューン。YOYOKAによる歌声は、透明感を持って静かに囁くように歌い紡がれる。中盤、スペーシーなシーケンスとシンクロするように生ドラムが空間を銀河系の輝きのように広がっていく。

著名ミュージシャンとのセッションももちろん素晴らしいが、パティ・スミスを系譜とするシンガーソングライターの資質を感じさせてくれたYOYOKAによるボーカル曲の可能性を感じられたことは本作のレコーディングにおいて一番の収穫だったかもしれない。現在、家族とともにアメリカに移住し、各所を転々とするその生活は大変だと思うがYOYOKAにとってオリジナルな人生経験となっている。そんな唯一無二な想いがネクストとなる作品へ形作られていくことを期待したい。

photo by YOYOKA
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https://open.spotify.com/intl-ja/album/3AjguNvnZ5CIk1NRwZTAyh?si=7IwqCmGGTSaa5SZ8uShxRw

YOYOKAオフィシャルサイト

https://yoyoka.jp

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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