Kroi、この秋冬一番のあたたかみを誇るミディアムバラード 〜 宝石のきらめきような関係性への想い
●日々の暮らしや毎日のささいな出来事の積み重ねが、やがて宝石のような存在になる
いい音楽を生み出す生演奏には揺らぎという名のグルーヴがある。有機的なバンドサウンドによる繊細なるタッチの響き。それは、心を解きほぐし、思わず身体を揺らしたくなるスイッチとなる。
そんなことを考えていたらKroiが聴きたくなった。
5人組バンドKroi は、2024年6月にメジャー3rdアルバム『Unspoiled』をリリースし、初のアリーナ単独公演であるぴあアリーナMM公演を含む国内外18都市21公演を開催中だ。R&B、ファンク、ソウルを下地に、ロックやヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーを提示する敏腕音楽集団である。
2018年2月に結成された若いバンドながら、センスの良さやスキルフルな音楽性の高さから音楽シーンで一目置かれた存在である彼ら。ライブ人気も高く、集客力も右肩上がりで伸びている状況だ。そんなこともあってか、大会場でこそ似合う、歌ものポップフィールドへの挑戦が最新曲“Jewel”で試みられた。
本作は、火9ドラマ『オクラ〜迷宮入り事件捜査〜』(フジテレビ系、)への書き下ろし主題歌。人情味溢れる昭和刑事とクールな令和刑事が、長期に渡って未解決となっている実質“オクラ(お蔵入り)”状態の事件に挑むヒューマンミステリーエンターテインメント。人々の交わりをシネマティックかつミステリアスに、宝石が生まれるきらめきのように表現したミディアムバラードへと仕上がった。
タイアップ曲に関しては、台本まで読み込んで楽曲創作へ取り組むというメンバー。そこに、わかりやすく主語として歌詞を“僕”目線にしたことで、自分たちならではのアイデンティティーをドラマとの共通項とともに絶妙に落とし込んでいく。穏やかな空気感のなかにキラッと光る力強さ。歌詞ではリアルなコミュニケーションの大切さについて「真相を見た君の目と / 僕の明日が繋がる / シーンとしてる / 未来が来ないように 魅せてJewel」と歌うなど、Kroiらしさが滲み出ている。そこには「目の前 雲がもう少しだけ 晴れたらいいな」、「分かり合えないこの世界で光ってる」といった“孤独感”が描かれおり、サスペンスドラマの主題歌であることもあってか、日常の中の闇、異物感が演奏にてほんのりと表現されていることも聴きどころポイントだ。
●音数を抑えたプレイが、より想像力を刺激してくれる自然体のサウンドを構築
そんな想いは、広々とした緑の大地に横たわる馬を映し出したジャケットアートワークにもあらわれている。そしてイメージに寄り添い、奏でられるあたたかな音色を醸し出すギター。優しさに包まれたコンフォータブルなピアノ。初めはゆったりと、段々と有機的にリズムにダイナミクスが生まれていくサウンドスケープ。跳ねるビートが、楽曲が持つゆらぎの気持ちよさを倍増してくれる。Kroiには珍しく音数を抑えたプレイが、より想像力を刺激する自然体のサウンドを構築していくのだ。
そのことは、イギリスと日本の2拠点で活動をする映像作家・木村太一が監督を務めたミュージックビデオにも、シンプルかつエレガントなパフォーマンスとして映像表現されている。人間味あふれる演奏が魅力なKroi。ある種、脱力感を持って新境地を開拓した本作“Jewel”の完成によって、バンドは次なる一歩へと表現の幅を踏み広げたように思えた。
日々の暮らしや毎日のささいな出来事の積み重ねが、やがて宝石のような存在になる。“Jewel”とは、心がきゅっとする感情を歌い上げてくれる、今年の秋冬シーズンに新調したコートのようにあたたかな1曲だ。
ライブインフォメーション
【Kroi Live Tour 2024-2024 "Unspoil" at PIA ARENA MM】
2025年2月1日(土)ぴあアリーナMM
開場:17:00 開演:18:00
https://special.kroi.net/tour2024/