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ブラジル人スカウトが語る「ネイマールは、セレソンの10番としては人気がない」

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
ブラジルでは「巧いが、強さがない」と語られるネイマール(写真:ロイター/アフロ)

 1カ月に8試合のペースでJリーグのスタディアムに足を運ぶブラジル人スカウトのジョノ・ヴァイス。彼の手元にあるリストには、Jリーグ入りを希望するブラジル人選手、約300人の名が記されている。

 ジョノは祖国の大学を卒業し、コンサルティング会社でアジアを担当した後、東京大学大学院を卒業した秀才だ。

 アメリカ合衆国コロラド州の公立高校を卒業しており、同校のサッカー部で活躍した。

 「サッカー推薦でアメリカの大学に進学する選択肢もあったのですが、授業料が高過ぎて……父に『とても払えないから、母国の大学にしろ』って言われたんですよ」

 と彼は笑う。

 そのジョノがカタールW杯予選のペルー戦でハットトリックを見せたネイマールについて語った。

 言うまでもないが、現在のセレソンの顔はネイマールである。

 ブラジル時間の23日に、11月12日のベネズエラ戦、17日のウルグアイ戦に向かうブラジル代表23名が発表されたばかりだ。その顔ぶれも記しておこう。

 

GK

エデルソン(マンチェスター・シティ)

アリソン・ベッカー(リバプール)

ウェベルトン(パルメイラス)

DF

アレックス・テレス(マンチェスター・ユナイティッド)

ダニーロ(ユベントス)

チアゴ・シウバ(チェルシー)

レナン・ロディ(アトレチコ・マドリー)

エデル・ミリトン(レアル・マドリー)

マルキーニョス(パリ・サンジェルマン)

ロドリゴ・カイオ(フラメンゴ)

ガブリエル・メニーノ(パルメイラス)

MF

ファビーニョ(リバプール)

コウチーニョ(バルセロナ)

アルトゥール(ユベントス)

カゼミーロ(レアル・マドリー)

ドウグラス・ルイス(アストン・ビラ)

エベルトン・リベイロ(フラメンゴ)

FW

ネイマール(パリ・サンジェルマン)

ガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)

リシャルリソン(エバートン)

ロベルト・フィルミーノ(リバプール)

ビニシウス・ジュニオール(レアル・マドリー)

エベルトン(ベンフィカ)

撮影:著者
撮影:著者

 ブラジルはボリビアを5-0、ペルーを4-2で下して調子の良さを見せています。ですが、南米予選を通過するのは、我が国においては当然で、カタールの地でどこまで勝ち上がれるかが肝心です。

 今日のカナリアのエースがネイマールであることは、疑いの余地もありません。ブラジル国民の誰もが、大きな期待をかけています。でも、セレソンの歴代10番と比較すると、人気選手という程ではないんですよ。

 3度ワールドカップを制し、先日(23日)80歳となったペレは、紛れもないトップ中のトップです。リベリーノ、ジーコ、リバウド、ロナウジーニョと、10番は皆、巧さと、強さがありました。

 7のレナトや、8の印象が強いソクラテス、カカ、9のカレッカ、ロナウド、11のローマーリオも屈強でした。

 今、挙げたセレソンのスーパースターは、DFから激しいスライディングやハードなタックルを受けても、ねじ伏せてゴールに向かう強さを見せましたよね。ブラジル国民はそんな姿に熱狂したんです。

 確かにネイマールの技術は非常に高いのですが、ご存知のように頻繁に倒れるでしょう。どうしても、そこに頼りなさを感じてしまうんですよ。

 28歳となり、これから円熟期に入るであろうネイマールが、これまでのセレソンの10番のような力強さを見せてくれることを、ブラジル国民は心待ちにしています。

 

 カタールワールドカップまでに、どれだけネイマールが成長するか。それで彼の評価が決まるでしょう。是非、彼には己の殻を破ってもらいたいですね。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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