CLでボヌッチ外しのユーヴェ、リスク恐れぬ監督の「チームファースト」は吉とでるか
チームのために規律を重視するのは当然――そのとおりだ。だが、だからといって容易に下せる決定ではなかった。裏を返せば、それでも実行する価値があったのではないか。そしておそらく、それがユヴェントスというクラブと、マッシミリアーノ・アッレグリという指揮官の強さなのだろう。
◆監督と主力のいさかい
ユーヴェは22日、チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦ファーストレグでポルトと対戦する。その前日会見で、アッレグリはレオナルド・ボヌッチをメンバーから外し、スタンドからの試合観戦を命じたことを明かした。17日のパレルモ戦で自らと口論したことに対する規律処分だ。
ボヌッチはパレルモ戦でアッレグリの交代策に異議を唱え、指揮官と激しくやり合った。試合後もサポーターにあいさつするチームメートたちをしり目に、一目散にロッカールームへと走り、そこでも監督と“議論”を続けたとされている。イタリアメディアは、ボヌッチに罰金処分が科されると報じていた。
◆センセーショナルな決定
だが、アッレグリはそれを上回る“罰”を科したのだ。冒頭に記したように、チームスポーツであるサッカーにおいて、規律が何よりも重要であることは間違いない。だが、『コッリエレ・デッロ・スポルト』が「センセーショナルな決定」と伝えたように、ボヌッチ外しの衝撃は大きかった。欧州最高峰の舞台の、負ければ終わりという決勝トーナメントでの決定だからだ。
ユーヴェはポルト相手に過去3戦で負けなし。下馬評ではユーヴェ有利とされている。だが、イタリア勢とのホームでの直近6試合で、ポルトは3勝3分けと負けていない。そもそも、CL予選プレーオフでローマを下したポルトが、決して軽視できる相手でないことは周知のとおりだ。
加えて、ユーヴェは決勝まで勝ち進んだ2年前と異なり、今季のCLでは本気で優勝を狙いにいっている。イタリア史上最高額を払ってまでゴンサロ・イグアインを獲得し、国内タイトルを競うローマからミラレム・ピアニッチを引き抜いたのも、21年ぶりの欧州制覇のためだ。昨年に続くベスト16敗退に終わった場合、批判は避けられない。
◆指揮官がリスクを負ったのは…
それだけに、このタイミングでのボヌッチ外しのリスクは大きい。元イタリア代表のマッシモ・アンブロジーニも、『スカイ』で「処分を科すことは賛成だが、やや大げさ」と評している。実際、ポルト戦の結果次第では、激しい批判を浴びることになりかねない。
そのリスクを恐れないことが、アッレグリという指揮官の強さだろう。そうでなければ、フィオレンティーナに敗れて批判されていた中で、イタリアでは考えられないような超攻撃的布陣を採用することはできないはずだ。
そして、アッレグリが今回の決断に至ったのには、すでに同様のケースがあったからでもあるだろう。今季はサミ・ケディラやマリオ・マンジュキッチ、シュテファン・リヒトシュタイナー、パウロ・ディバラといった主力たちが、試合中のアッレグリ采配に不満を表したことが騒がれてきた。アッレグリは、シーズンの肝となる時期を前に、今後も同じ問題が頻発することを危惧していたに違いない。
チームの重鎮のひとりであるボヌッチへの厳しい処分は、それを防ぐためにチーム全体にメッセージを発するための一手だったと考えられる。「これが最初のケースだったら」「ボヌッチは不運」という指揮官のコメントは、そのことを指しているのだろう。
気を引き締めて団結したときのユーヴェの強さは、シーズン序盤戦の不振を忘れさせる連勝で5連覇を成し遂げた昨季が証明している。アッレグリは、リスクを負ってでも「チームファースト」の意識を再確認する価値があると考えたのではないだろうか。
◆吉とでるか、凶とでるか
サポーターは、暴言を吐いたことを理由に自身にも寄付という形の罰金を科したアッレグリの決断を支持しているようだ。『メディアセット』のアンケートでも、約1万4000人のユーザーの60%が、正しい選択だったと回答している。
それでも、アッレグリ自身のシーズン後の進退が騒がれていることや、ボヌッチにビッグクラブからの誘いが絶えないことからも、今回の決定にリスクは残る。指揮官とクラブの決断が吉とでるか、凶とでるか。そしてサポーターは支持し続けるのか。すべては結果次第だ。ポルト戦は、その第一歩となる。