「プレイステーションX」マイクロソフトとソニーの提携から推測する近未来ゲームハードの可能性
マイクロソフトの7800億円買収劇とは?
日本がシルバーウィークのさなか、行楽地、観光地への人出が緊急事態宣言前に戻った…云々の報道のなか、ゲーム業界にとって大きなニュースが、静かに報道されました。
9月21日、マイクロソフトが「Fallout(フォールアウト)」や「DOOM(ドゥーム)」を手掛ける米ベセスダ・ソフトワークス(Bethesda Softworks, LLC/以下ベセスダ)の親会社ゼニマックス・メディア(ZeniMax Media Inc./以下ゼニマックス)を総額75億ドル(約7800億円)で買収すると発表した報道です。
ゲーム関連に詳しい方ならばご存じでしょうが…
ゼニマックス傘下のベセスダは、1986年6月に設立され「DOOM」シリーズ、「The Elder Scrolls(エルダースクロール)」シリーズ、「Fallout」をはじめとして、日本人クリエイターとして有名な三上真司氏によって開発された「サイコブレイク」シリーズなど話題作を発表するパブリッシャーなのです。
(写真はゼニマックス・アジアオフィス入り口 撮影筆者)
マイクロソフトによるベセスダの完全な買収完了は2021年とのことですが、おそらく今後のXboxのラインナップ強化につながる大規模な買収劇になることでしょう。
今回の買収ほどの大型案件ではありませんが、すでにマイクロソフトはいくつかのゲーム開発会社の買収を終えています。
2014年には、Notch(ノッチ)こと、マルクス・アレクセイ・パーションが開発した「マインクラフト」を開発運営するスウェーデンのモージャン・スタジオ(Mojang Studios)を25億ドル(2500億円)で買収しています(25億ドルは十分すぎるほど高額な金額…)。
「マインクラフト」は子供たちを中心に大きな人気を保っているソフトで、これからも永続的にプレイヤーが増えることを考えれば、マイクロソフトとしては、比較的安価な買い物だったのかもしれません。
買収によるベセスダ・ソフトワークスへの大きな変化はないというが…
今回のマイクロソフト社の買収によってベセスダ社自体の経営に大きな変化はなく、マイクロソフトの買収完了後も創業者のロバート・アルトマン最高経営責任者(CEO)らが経営を続けるということです。
買収による従来からの開発方針やファンとのコミュニテイ活動にも大きな影響はないと思われ、マイクロソフトとしては展開中の月額制のゲームサービス「Xbox Game Pass(Xboxゲームパス)」事業への大きなシナジーを一義として考えたものでしょう。
それと同時にアップルやグーグルが強烈に推進する、スマートフォン系ゲームアプリサービスや、テンセント(中国)が推進するネット系ゲームパブリッシャーの囲い込みへの対抗軸と言っても差し支えないと思われます。そして、来るべき5G時代のゲームサービスにおけるXboxやパソコンへ配信されるゲームサービスの強化に他なりません。
それは話題の新作のみならずクラウドにおかれた旧作品や大きなライブラリーを自社で確保したいという表われだと考えています。
プレイステーションとXboxがプレイステーションX(エックス)になる可能性?
2019年5月17日、ソニーとマイクロソフトが提携した発表を覚えていますでしょうか?
両社の提携主旨はゲームコンテンツをストリーミングサービスで使うことを目的に、クラウド関連サービスの共同開発の検討を開始するというもので、ゲームはソニー側、サーバーはマイクロソフトのプラットフォーム「Microsoft Azure」を活用するという両社の強みを生かした提携のモデルケースと考えられます。
また、AI関連サービス領域で、クラウドゲーミングサービスなどの新たな顧客体験を開発するために両社が手を組んだことをもゲーム領域にとってはプラスになることでしょう。おそらく、そのAIサービスを活用してコンテンツのレコメンド機能や、プレイのアシスト機能などの拡充が実現することが狙いだったかもしれません。
そして、提携から1年後の2020年5月19日、(日本の)ソニーの経営方針説明会で吉田社長兼CEOは…、
「マイクロソフトとの提携は非常に多岐にわたっている。ゲームネットワークサービスにおけるクラウドストリーミングサービスにおける協業。チップセットやネットワーク、ダークタイムソリューションの問題意識を共有して議論を重ねている」
と語り、ゲーム領域における両社の良好な関係をアピールしました。
勝本徹専務R&D担当からは…、
「サーバーをどのように効率的に使うかが、ビジネス上もポイントになる。この点のディスカッションを深めている」
と語りました。
ここまでくると、次に考えられるのは両社のゲーム事業の未来です。
プレイステーションX(エックス)は両社の技術統合モデルになれるか?
ご存じのように、マイクロソフトは新型Xbox Series Xを11月10日に発売予定、続くソニー・インタラクティブエンタテインメントは11月12日にプレイステーション5の発売予定です。
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どちらも、現在、発表されているスペックから考えれば、「お買い得」なゲームハードですが、仮に5年から10年先のゲーム事業を見据えたときに両社のハード事業は統合されていくことが両社にとっても、顧客にとってもベストな選択ではないでしょうか。
高性能化に拍車がかかるハードウェア、それは開発費(人件費)の高騰と開発期間の長期化を意味します。
それらを総合して、ネットインフラの5Gへの進化と深化を考えると、双方のハードウェアは統合したほうが両社にとってもプラスなのではないだろうかというロジックからの個人的な推論です。
そう、ここまで読んでいただき…、
「そんなことあるわけない」「バカなことを言うな」という声もあるでしょう。
しかし、そんな「ありえないこと」「バカな!」ことが起こっても不思議ではないのが、ゲーム産業のエンタテインメント産業たる所以なのです。そして時代はコロナ禍のなか、よりサスティナブル(持続可能)なものが望まれることに拍車がかかることでしょう。
すでにソニーの本社機能、決裁機能は日本ではなくアメリカ本社にあります。
マイクロソフトと同様に、アメリカ企業の国益、ユーザーの利便性、開発者や開発会社の未来を考えれば、あながち、私の提言や予言はバカなこと、ありえないこと…と笑い飛ばせるものではないと思います。
あと10年もしたら、いや10年もしないうちに「プレイステーションX」(エックスと呼ぶかテンと呼ぶかは置いておいて…)は両社をブリッジし、世界のゲーム産業にとって大きなフラッグシップマシンか、はたまたフラッグシップなクラウドネットワークになっているかもしれません。
※黒川塾 96チャンネルYouTube動画にてもコメントしています。ご高覧よろしくお願いします。
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2020年9月24日 11時誤字脱字などを修正しました。