ゲーム・エンタテインメントによる町おこしは加速する!
終息の兆しがなかなか見えない新型コロナ禍、止まるところを知らない円安、ひいては世界同時不況の可能性、政権不信など、我々、個々人を取り巻く環境に明るい兆しは感じることができません。
まして、地方自治体、市町村レベルでは猶(なお)のこと不安定な状況にあると思います。…とは言え、内需喚起、地産地消などを標榜し促進するところも多くありますが、実のところは、どのようにして、どこから手を付けて、取り組むべきか苦慮しているよう思えます。
そのような中で、私は10月に福島県、11月に愛知県で開催されたeスポーツ系イベントをお手伝いすることができました。今回はその取り組みのなかに見る地方自治体とeスポーツ(ゲーム)のマッチング事例に関してご紹介します。
福島県田村郡小野町のeスポーツフェスティバル
10月29日、30日の両日、福島県田村郡小野町にて、自治体によるeスポーツ系イベントが開催されました。
」小野町eスポーツフェスティバル」というものです。イベントには地場のテレビ局である、福島中央テレビがメディアとして参画し、イベントの企画、運営を行っています。
29日はeスポーツ系イベントとして、「グランツーリスモSPORTS」の「小野町カップ」のオンライン・オフライン大会を開催、同じく、「ストリート・ファイターV アーケード・エディション」のオンライン・オフラインの大会、30日、二日目は、「eFootball」の大会が開催されました。初心者向けには「ぷよぷよ」、「太鼓の達人」の体験コーナーが併設され大人から子供まで楽しんでいる姿を見ることができました。私は2日間にわたり「eスポーツとは何か?」ということをテーマにお話をさせていただきました。
eスポーツ以外には、地元の名産品を販売したり、地元のコミュニティ活動の発表の場でありながらも、地元に根差した良いイベントでした。ちなみに二日目は、併設された運動場では、稀少かつ貴重なビンテージカーが2000台以上展示されており、集客の面では相乗効果を生んでいたのが印象的でした。
AICHI IMPACT!2022(アイチインパクト2022)とは?
11月18日、19日、20日は、愛知県常滑市のセントレア空港に併設されたAichi Sky Expo(以下:アイチ・スカイ・エキスポ)でAICHI IMPACT!2022(アイチインパクト:以下:アイパク)が開催されました。
こちらの主催はAICHI IMPACT!2022実行委員会ですが、主体は格闘技イベント「PRIDE」初期にメディアとしてバックアップし、そのブランド確立に大きな一助となった愛知県の東海テレビがメディア協力、イベント運営の運営を行っています。また、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)の愛知県支部、一般社団法人愛知eスポーツ連合が後援しています。
アイチ・スカイ・エキスポは関東圏で言えば幕張メッセに相応する規模の大規模コンベンション会場で、その会場にはゲーム・ゾーン、ライバー・ゾーン、ゲーム体験ゾーン、「リアルタイムバトル将棋」ゾーン、ゲームプログラム教室ゾーン、eスポーツ温泉施設ゾーン、eスポーツチーム・トークイベント、VRコンテンツ体験ゾーン、LANパーティ(NOVICE2022)、物産展ゾーン、ドローン体験コーナーなどがあり、eスポーツ大会は主にメイン・ステージで展開されました。
18日はK-POPのライブ・ステージとBOYS AND MEN(ボーイズ アンド メン)のライブ・ステージをおこない、19日のメイン・ステージでは、「吉本芸人と戦うApex Legend大会」と称して、吉本興業のゲーム好き芸人、ロバートの山本さん、インパルスの板倉さん、そしてBOYS AND MEN(ボーイズ アンド メン)のメンバーである吉原さんが、本気の対戦プレイを繰り広げ、午後からは、MIXIの「MONSTER STRIKE PRO TOUR2022」が開催されました。どちらも多くの観客を集めて盛況のうちに中 日を終えました。
またこの日は愛知県知事 大村秀章氏が来場し、eスポーツイベントを見学し、自身からレースゲームとVRコンテンツを体験していました。このように県知事が来場することからもeスポーツに対して真剣に向き合っている証左ではないでしょうか。
アイパク3日目、20日は、学生eスポーツ団体の学生e-sports連盟(通称:イーカレ)が中心となって、「VALORANTイーカレ・アイパクカップ」が開催され、全日本の大学対抗という形式で各大学のeスポーツサークルがエントリーして激戦を繰り広げました。これらは企画、運営を学生が中心で進めたもので、自主性を重んじた緊張感のあるステージイベントとして構成されていました。
またサブ・ステージでは「こども万博」という、職業体験型イベントと、こどもたちのスピーチ、ダンス、サイエンスショーなどのステージ・パフォーマンスがあり、こちらは家族連れで賑わっていました。
福島県郡山市小野町も、アイパク2022もいずれもeスポーツを核にしたエンタテインメント・イベントとして集客、コンテンツともに充実したものになったと思います。
自治体やメディアはアニメやゲーム・(eスポーツ)エンタテインメントをもっと活用すべき
今回のeスポーツ・エンタテインメント・イベントに参加して思ったことは、eスポーツ(ゲーム)を地方活性化イベントにもっと活用すべきではないか…ということです。
テレビゲームが生まれてすでに40年近く(ファミコン発売から数えて)が経過しており、当時、小学生、中学生だったこどもたちも、いまではすっかり高齢の域に達しています。つまり、多くの人が、ひととおりのゲーム体験は過去に済ましていると言えます。
またeスポーツがもたらす、反射神経、コミュニケーション能力は老化防止や認知機能の強化につながると言われています。私もeスポーツをテーマにしたセミナーで事例として良く紹介するものに、秋田県のご高齢者を中心にeスポーツ・チームを組成した「MATAGI SNIPERS (以下:マタギ スナイパーズ)」があります。
マタギ スナイパーズは、日本で一番高齢化が急速に進む秋田県で、2019年に誕生した「シニアプロチーム」です。マタギ スナイパーズは高齢者のeスポーツを単に、「健康」、「認知症の防止」といったもので終わらせるのではなく、「孫にも一目置かれる存在」を目指し、世代横断型の地域コミュニティの育成を目指しているとのことです。
ゲームパブリッシャーも町おこしを積極的に支援する施策を打ち出しています。バンダイナムコアミューズメントはゲームセンター機器「釣りスピリッツ」(釣りスピ)を活用した町おこし支援を始めました。釣った魚を地域通貨に交換する静岡県西伊豆町の施策「ツッテ西伊豆」と協業し、釣りスピのファンを送客するという形式です。
このようにeスポーツ(ゲーム)やアニメを基にしたエンタテインメントを核にしたイベントを自治体や地方メディアが企画、促進、運営することでジェンダーに囚われない幅広い年齢層の人々に訴求し、過疎化問題、高齢化問題の解決、地産地消の促進などの解決に役立てることが21世紀の社会活動ではないでしょうか。
※23日 誤字、脱字などを修正しました。