台風とハリケーンの最新事情
5月に猛烈な台風
今シーズン初めて、日本列島に接近した台風6号は一時、猛烈な強さとなりました。5月に猛烈な台風?あまり記憶にないので、調べてみたところ、5月としては2008年台風2号以来、7年ぶりでした。
でも、1976年以降、猛烈な強さまで発達した台風は78個ありますが、5月に限ると4個のみ、全体の約5パーセントに過ぎません。今回の台風6号はとても珍しい台風だったのです。もともと、台風が一年で最も発達しやすいのは10月、次いで9月です。これで全体の半分以上を占めます。台風が秋に発達しやすいのは海が一年で最も暖かいときだからです。秋が台風シーズンと呼ばれる由縁です。
猛烈な強さの台風は増えているのか?
2013年フィリピンを襲った台風30号、昨年(2014年)鹿児島県枕崎市に上陸した台風19号など、最近は猛烈な強さまで発達した台風が目につきます。「猛烈な」とは台風のなかで最も勢力が強いことをいい、中心付近の風の強さは54メートル以上(最大風速)、時速に換算すると約200キロです。新幹線並みの暴風を経験したひとは少ないでしょうが、走行中のトラックが横転、住宅が倒壊するほどの凄まじい風だそうです。
目につくと言ったけれど、本当に猛烈な強さの台風は増えているのか?
1980年から2014年までに発生した台風を調べてみました。左の図は一年ごとに猛烈な強さの台風の発生数をグラフにしたものです。
それによると、1980年から2014年までの35年間に、猛烈な台風は68個発生しました。平均すると、一年間に約2個です。1980年代は2.3個でしたが、1990年代は1.4個、2000年代は1.7個とやや減少し、2010年以降は2.8個と再び、増加傾向にあります。
ハリケーン干ばつ(hurricane drought)
一方、太平洋を挟んだアメリカでは最近9年間、強いハリケーンが上陸していないそうです。台風とハリケーンは同じ熱帯低気圧、呼び名が違うのは発生する海域の違いによるもの。北西太平洋は台風、北大西洋・北東太平洋・南東太平洋はハリケーンと分けられています。
余談ですが、太平洋の東経(西経)180度線をまたぐと、台風からハリケーン(その逆も)と名前が変わります。
BBCによると、カテゴリー3以上の強いハリケーンは2006年以降、上陸しておらず、アメリカは「ハリケーン干ばつ(US Hurricane Drought)」だと伝えています。気象専門家は前例のない記録的な出来事であり、言葉で言い表せないほど幸運だ。強いハリケーンを寄せ付けない気象状況に変化しているとは思えないが、と述べています。
強いハリケーンを寄せ付けないアメリカ、一方で早い台風シーズン始めとなった日本。熱帯低気圧を取り巻く状況はさまざまなようです。
【参考資料】
デジタル台風ホームページ
BBC:US Hurricane'drought' since 2006(5 May 2015)
USA TODAY:USA's 10-year hurricane drought is dumb luck(2:57 p.m. EDT May 6, 2015)