iPhoneの「Siri」を活用してコミュニケーションの練習ができるか、やってみた
iPhoneの「Siri」で音声入力
iPhoneに搭載されている、発話解析、音声アシスト機能の「Siri」を使って、話し方、コミュニケーションの練習ができるかを考察してみます。
1日に1冊ペースで本を読み、残したい文章をアウトプットするときに、私は「Siri」を使っていました。最初はパソコンのキーボードで文章を打ち込んでいたのです。しかしスマホでもっと効率的にできないかと考え、「Siri」を活用しはじめたのがきっかけです。
「Siri」を使って音声入力していると、いろいろなことに気づかされます。
●誤読せず、正しく話さなければならない
●途中で引っかかることなく、スラスラ話さなければならない
●「テン」「マル」など、句読点を意識して発話しなければならない
●一定の文章を読み終わるまでは、集中力を維持しなければならない
……など。
「Siri」を使って英語の発音練習をする人がいます。いっぽうで、繰り返し実践していくうちに、英語ではなく、日本語でのコミュニケーション練習にも使える、と私は確信しました。
文章を読み上げているとき、まず、誤読しないことは意外と難しい、と気づかされます。そして何より、日本語であろうが、途中で引っかかることなくスラスラと話すのも、けっこう大変だと気づかされるのです。
ドラッカーの名著「マネジメント」から、ひとつ文章を引用してみましょう。
「ここでは、心理学の利用の適切さや道徳性は問わない。心理的支配の可能性についてのみ見てみよう」
この文章を黙読するのは簡単です。できれば声を出して読んでみてください。最後のほう、
「……可能性についてのみ見てみよう」
の、
「についてのみ見てみよう」
あたりで、引っかかりませんか? 私は引っかかってしまいます。
「……かのうせい……に……ついての……のみ、み、みて、みよう」
こんな風にリズムが狂ってしまうのです。
意味を理解しながら
「かのうせいについてのみ、みて、みよう」
と、リズミカルに話すことは、案外難しいことです。
話すのが上手という「感覚」に騙されてはいけない
私は年間100回以上、7年間もコンスタントに講演やセミナーをし続けています。キャスターのように、スラスラと、美しい抑揚で話すことはできませんが、一般的なレベルよりは、流暢に話せる自信がありました。
しかし人間を騙せても「Siri」を欺くことはできません。聞き取りづらい発音で話したり、話すリズムが悪かったりすると、正しく認識してもらえないのです。
最初は、「Siri」のスペックの問題かと思い込んでいました。しかし、滑舌を意識したり、いったん文章を頭に入れてからリズミカルに話すと、ほとんどのケースで認識してもらえたりするわけですから、「Siri」の責任にするのはよくないでしょう。
実際に、長年セミナー講師をやっている人たち4人に試してもらいました。やはり「Siri慣れ」していないと、うまく認識されません。上手に話している風に聞こえていても、そのように「聞こえる」だけ。実際にその人が何を話しているのか、一語一句相手に認知されているかというと、それは別の話です。
「横山さんって話すのが上手ですね」
「何も見ずに、あれだけのスピードで、30分も、1時間も、話しつづけるのって普通じゃない。どうやって訓練しているんですか?」
と、多くの人に言われます。しかし、私が何を言ったのかを、相手が正確に「知覚」してくれたかというと、怪しいことが多い。
「2時間の講演の中で、この3つについては力強く解説しました。いかがでしたか?」
などと私が質問しても、参加者に「そんなこと言われてたかな?」という顔をされることもあります。「話すの上手だな」という感覚・印象は手に入ったかもしれませんが、「話した内容」をきちんと入手したかというと、なかなかしてもらえないものです。
テレビを観ていても、たまに何を言っているのかよく聞き取れない人がいます。テロップがないと、内容が頭に入ってこないことが。「Siri」のスペックは関係ありません。大事なことは、相手に認知してもらえるような発音、リズム、スピードなどを、常に意識して話しているか、です。
雑談ならともかく、社長が新しい方針を発表するとき、上司が部下に指示を出すとき、営業がお客様にプレゼンするときは気をつけましょう。自分本位で無意識に喋るのではなく、相手の立場に立って意識的に話すべきです。
iPhone「Siri」を使った練習
iPhone「Siri」のような、音声アシストのアプリを活用するのはいい案です。「Siri」に認識されるよう、繰り返しやっていると、自然とコミュニケーションの練習につながります。やり方は、書籍などから3つほどの文章をピックアップして読み上げ、メモ帳アプリなどに音声入力をするだけです。音声入力が終わったら正しく認識されているかをチェックし、また次の文章を3つほど読み上げます。
コミュニケーションはスポーツと同じ。上達するためには、反復練習が欠かせません。
トータルで原稿用紙1~2枚分程度の、いろいろな文章を読んで入力してみましょう。1週間に一度、3ヶ月もつづければ自分の話すクセなどが、わかってきます。一番のメリットは、相手が人間ではないので、コミュニケーションレベルを容赦なく「見える化」してくれることですね。