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実力伯仲? 意外大差? 渡辺明名人、豊島将之竜王、藤井聡太二冠、永瀬拓矢王座 将棋界上位四強対戦成績

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 現在の将棋界における席次(序列)上位の棋士は次の通りです。

1位:渡辺明名人・棋王・王将(37歳)

2位:豊島将之竜王・叡王(31歳)

3位:藤井聡太王位・棋聖(18歳)

4位:永瀬拓矢王座(28歳)

 タイトルを保持する上位4者がそのまま「4強」と呼ばれる現在。それぞれの間の対戦成績を見てみましょう。

渡辺 21-14 豊島

 現代将棋界のトップオブトップ。渡辺名人が東の横綱ならば、豊島竜王は西の横綱という格です。

 タイトル戦では2019年度棋聖戦五番勝負と2020年度名人戦七番勝負で対戦し、いずれも渡辺現名人が制しています。

 

 通算では渡辺名人21勝、豊島竜王14勝。渡辺名人が7番勝ち越しています。

渡辺 1-8 藤井

 藤井二冠は異次元の天才。史上最年少の14歳2か月でデビューして以来、これまでの将棋界の常識では考えられないようなペースで勝ち続けています。

 その戦績の中でも目をひくのは、渡辺名人との対戦成績です。

 藤井二冠が渡辺名人に敗れたのは、2020年度棋聖戦五番勝負第3局のみ。あとはすべて勝ち、圧倒しています。

「現役最強」とも言われ、ほとんどの棋士に勝ち越している渡辺名人。これだけ負け越している相手は、藤井二冠の他にはいません。

渡辺 16-5 永瀬

 両者はタイトル戦では2017年度棋王戦と2020年度王将戦七番勝負で対戦し、いずれも渡辺棋王が制しています。

 渡辺名人は制覇した番勝負の過程でしか、永瀬王座に黒星をつけられていないことになります。

豊島 7-1 藤井

「なぜ藤井聡太は豊島になかなか勝てないのか」

 以上は、いろんな人がいろんな分析を披露しているテーマです。

 藤井二冠がこれだけ負けている相手は、豊島竜王の他にはいません。

 生涯勝率8割4分前後と、圧倒的な成績を残している藤井二冠。しかしなぜか豊島竜王には圧倒的に負け越しているのは興味深いところです。

 豊島竜王・叡王と藤井王位・棋聖はこの夏、王位戦七番勝負と叡王戦五番勝負で数多く戦うことになります。それらが終わってみれば、藤井二冠が追いつくのかもしれませんし、また豊島竜王が引き離しているのかもしれません。その星取りによって、将棋界の景色もまた変わって見えてくることでしょう。

 以上の通り、渡辺名人、豊島竜王、藤井二冠は「3すくみ」の状況にあります。

豊島 7-2-8 永瀬

 両者の対戦といえば、多くの方は2020年叡王戦での死闘が思い起こされるでしょう。

 そのシリーズは豊島現叡王が4勝3敗2持将棋1千日手で制しました。そんな星取りの番勝負はこの先もう、見ることはできないかもしれません。タイトル戦での持将棋引き分け2局は、両者の通算対局数にカウントされています。(なお2021年から叡王戦は七番勝負から五番勝負に変更されました)

 両者のトータルの対戦成績では、永瀬王座がわずかに勝ち越しています。

 4強リーグの中では、永瀬王座はやや遅れを取っています。しかしここから竜王戦、名人戦などで挑戦の名乗りをあげ、結果を残せば、一気に天下人となる可能性もあります。

永瀬 1-4 藤井

 普段から1対1の研究会(VS=ブイエス)をするなど、互いの技量を認め合い、仲のいい両者。公式戦ではなかなか当たりませんでしたが、当たったら2回連続で挑決という、劇的なめぐり合わせでした。

 両者の対戦はまだ始まったばかり。この先、タイトル戦で当たるなどして、対局数はもっと増えていくことでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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