セガ ゲームセンター運営事業から完全撤退 背景は
ゲームソフト大手のセガが、ゲームセンター運営を手掛けるジェンダ セガ エンタテインメントの株式14.9%を売却、ゲームセンターの運営事業から完全に手を引くと報じられました。ここまでの流れを振り返りながら、完全撤退の背景を考えてみます。
発表は以下の通りです。
ジェンダ(東京都大田区、資本金25億9370万円、2018年設立)傘下のジェンダ セガ エンタテインメントは、セガの持っていた自社株式14.9%を取得。ジェンダの持株比率は100%に。
ジェンダ セガ エンタテインメントは、社名をジェンダ ギーゴ エンタテインメントに変更する。
「セガ」ブランドで運営している全国のゲームセンターの店舗名を「GiGO(ギーゴ)」に変更する。
◇かつては優れたビジネスモデル
セガ撤退の背景には、ゲームセンターのビジネスは市場規模こそあるものの頭打ち状態で、運営コストの負担もあり、今後の展望を見いだせないことにあります。
セガは1965年にゲームセンターの運営を開始。体感バイクゲーム「ハングオン」や、3Dの格闘ゲーム「バーチャファイター」など数多くの人気作を世に送り出しました。1990年代まで、ゲームセンターのゲームは、家庭用ゲーム機よりも派手で美しい映像が楽しめたのです。そしてゲームセンターの運営は、モノによっては省スペースで営業できます。客も呼び込めますし、現金の稼げる柔軟性のある優れたビジネスモデルでした。
ところが21世紀に入って状況が変わります。家庭用ゲーム機が高性能化して、ゲームセンターのゲームとの差別化が難しくなります。そして来客者数もダウン。差別化のためゲームの大型化が進み、小規模店の淘汰、大型複合店が増加します。その結果、ファミリー層が気軽に楽しめる景品の取れるクレーンゲーム機が人気になっていきます。
なおゲームセンターの市場規模ですが、年間7000億円前後で推移しています。各社とも頭打ちの状況を打開するためにさまざまな施策をして、一時期はヒットしたゲームも生まれたのですが、長期的に見るとゲームセンターに足を運ばなくても良い状況になっているわけです。そこに新型コロナウイルスの感染拡大で来客者の大幅減少となったわけです。
セガサミーホールディングスの連結決算ですが、ゲームセンター事業を指す「AM施設」の通期売上高と営業利益を見ると、厳しさの一端がハッキリします。セガ時代の2010年ごろ、ゲームセンターの施設運営で年間700億円規模の売り上げがあったのですが、2020年3月期は419億円(営業利益は14億円の黒字)、2021年3月期は210億円(14億円の赤字)でした。従来の手法では今後の巻き返しも難しく、コロナの影響が影を落としているのです。
◇スマホに奪われた「時間つぶし」
2020年11月、セガサミーホールディングスが、傘下のセガ エンタテインメントの株式の大半を売却し、連結対象から外すと発表しました。その段階で、運営から手を引くのは既定路線といえます。しかし、ゲームセンター業界の課題、新規層の呼び込みは、依然として解決していません。
ゲームセンターの全盛期であれば、ここでしか遊べない最新の刺激的なゲーム(コンテンツ)があり、初心者(新規層)も上手な人のプレーを観戦して楽しめました(現実世界のゲーム実況ですね)。同時にコミュニティー・情報交換の場でもあり、感動を共有できたのです。そして新規層がファンになれば、お金を落としていく構造があったのです。
ちなみに業界団体による、ゲームセンターの利用者調査が2009年に実施されていて、ゲームセンターに行く目的を質問しています。「ゲームを遊ぶ」「景品を獲得する」と並んで「気分転換」や「時間つぶし」があったのですね。そして、スマートフォンやネットなどで、「気分転換」や「時間つぶし」が代替されました。少子化、ファンの高齢化、銀行による硬貨両替の手数料徴収など、厳しい経営環境にさらされました。
これだけ悪条件がそろうと、衰退に歯止めをかけるのは容易ではありません。数年前、ゲームセンターにVR(仮想現実)のゲームが登場して注目を集めました。しかしVRのゲームは斬新で刺激的だったものの、遊ばせるための大きなスペースが必要でコストが高くつき、高い価格設定になりました。当時、関係者に取材をしても、「実は……」と顔色があまり良くなかったことを覚えています。
それでも、打開策を探り続けるしかありません。ジェンダ ギーゴ エンタテインメントや、引き続きゲーム開発をするセガも含めて、ゲームセンター業界は、テーマパークなどのように、そこでしか体験できないサービスを生み出し、ゲーム文化の火をともし続けてほしいところです。