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2018年10月、ゴブリンが映画『ゾンビ』を全編上映&シンクロ・ライヴ

山崎智之音楽ライター
Goblin / courtesy of Club Citta'

今度は『ゾンビ』だ!

これが3回目となるゴブリンの映画全編上映&シンクロ・ライヴ。『サスペリア』、『サスペリアPART2』に続いて、“ザ・ベスト・オブ・イタリアン・ロックVol.8”ではゾンビ映画の金字塔『ゾンビ Dawn Of The Dead』(1978年/日本では1979年公開)が完全ライヴ演奏されることになった。

●ゴブリン三昧の豪華ライヴ

1968年の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』からスタート、ジョージ・A・ロメロ監督のライフワークとなった“リビング・デッド”シリーズ。その中でもしばしば最高傑作に挙げられるのが第2弾である『ゾンビ』だ。

『ナイト・オブ〜』がモノクロ映画だったのに対し、『ゾンビ』はカラー作品だ。トム・サヴィーニによる特殊メイクを得て、血飛沫+人肉+内臓のスプラッター度が大幅アップ。極限状態における人間の姿を描いた大傑作として、40年を経た今日でも世界中のファンから熱狂的に支持されている。

当初、制作費が集まらず、暗礁に乗り上げかけたプロジェクトだが、『サスペリア』(1977)などで知られるイタリアの映画監督ダリオ・アルジェントが救いの手を差し伸べ、無事完成。アルジェントの『サスペリアPART2』『サスペリア』の音楽を手がけてきたロック・バンド、ゴブリンが音楽を担当することになった。

ゴブリンのリーダーでキーボード奏者のクラウディオ・シモネッティは2017年の来日時、「『サスペリア』『サスペリアPART2』に続くシンクロ・ライヴ第3弾をやるとしたら?」という筆者(山崎)の質問に対し「最も論理的な次のステップは『ゾンビ』だろうね」と予告していた。ライヴが大成功、わずか1年後に今回の公演が実現するとは、本人も思っていなかったのではなかろうか。

なお今回『ゾンビ』映画全編上映&シンクロ・ライヴが行われるのは、2018年10月27日(土)の川崎CLUB CITTA'公演。この日のライヴは二部構成で、第一部が『ゾンビ』シンクロ・ライヴ、第二部は“ゴブリン・ベスト・ヒッツ・ショー”となる。オリジナル・アルバム『ローラー』(1976)の世界初の完全再現ライヴ+ベスト・ナンバーというショーは、まさにゴブリン三昧といえる豪華ライヴだ。

さらに2018年10月26日(金)大阪・梅田シャングリラでの大阪初上陸ライヴでは“完全ベスト・ヒッツLIVE”と銘打ってスペシャル編成のライヴを行うことが発表されている。

10月27日(土)・28日(日)には川崎駅周辺一帯でKawasaki Halloween 2018(通称カワハロ)としてさまざまなイベントが開催され、町中をゾンビがさまよい歩くことになる。ゴブリンのライヴは、死者たちの夜を彩るサウンドトラックとなるだろう。

Goblin / courtesy of Club Citta'
Goblin / courtesy of Club Citta'

●『ゾンビ』が音楽界に与えた影響

映画『ゾンビ』は20世紀文化のひとつのアイコンとなり、ポピュラー/ロック音楽に多大な影響を与えてきた。

ホワイト・ゾンビが「サイコティック・スラッグ」、ゴリラズが「ヒップ・アルバトロス」で映画の音声をサンプリングしているのは有名だ。スリップノットの一員だったジョーイ・ジョーディソン率いるマーダードールズはそのものズバリ「ドーン・オブ・ザ・デッド」という曲を発表。コーラスでは映画中の名セリフ「when there's no more room in hell, the dead will walk the earth(地獄に空きがなくなると、死者は地上を歩く)」が使われている。

Cancer『To The Gory End』 / courtesy of Vinyl Solution
Cancer『To The Gory End』 / courtesy of Vinyl Solution

ヘヴィ・メタル・ファンならば、イギリス出身のキャンサーのアルバム『To The Gory End』(1990)ジャケットで映画からのシーンがイラスト化されているのをご存じだろう。脳天にマチェテ(山刀)を叩き込まれているゾンビは“マチェテ・ゾンビ”と呼ばれ、一瞬しか出てこないにも拘わらず、彼を演じたレナード・ライズがサイン会を行うほどの人気キャラクターだ。

ところでディープ・パープルのジョン・ロードとイアン・ペイスが在籍したペイス・アシュトン・ロードの映像作品『ライヴ・イン・ロンドン1977』には特典としてドキュメンタリー『ライフスパン』が収録されているが、リハーサルでお遊び的に『ゾンビ』のエンディング・テーマであるハーバート・チャペル「ザ・ゴンク」を演奏するシーンがある。この曲自体は1965年に書かれたもので、バンドは何の気なく演ってみたようだが、この約2年後に『ゾンビ』で新たな注目を集めることになるとは誰が想像しえただろうか。

Goblin / courtesy of Club Citta'
Goblin / courtesy of Club Citta'

●シンクロ・ライヴの今後?

ちなみに、もし映画シンクロ・ライヴ第4弾をやるとしたら?...とシモネッティに訊いてみたところ、「どうだろうねー」と微笑んで、答えを得ることは出来なかった。

『フェノミナ』あるいは『デモンズ』(共に1985)あたりが妥当か?...とも思えるが、どちらもシンクロ・ライヴを行うほど神格化されていない気もする。それを考えるとシンクロ・ライヴは今回で打ち止め?という可能性もあり、ぜひこの機会に体感しておきたい。

きわめて余談だが、奇しくも同じ1985年にメル・ギャレー、グレン・ヒューズ、コージー・パウエルらが参加したスーパー・プロジェクトのアルバム『フェノメナ』が発表されている。映画『フェノミナ』サウンドトラックにはアイアン・メイデンやモーターヘッド(そして何故かビル・ワイマン)などハード・ロック勢が参加していたため、混同するファンもいたが、まったく別物だ。ちなみにどちらもPhenomenaだが、邦題はプロジェクトの方がフェノメナ、映画の方がフェノミナである。

最近話題を呼んでいるのが、リメイク版『サスペリア』でレディオヘッドのトム・ヨークが音楽を手がけていることだ。シモネッティは2017年に「ゴブリンが書いたオリジナル『サスペリア』のテーマ曲の使用許諾を求めてきた」と語っていたが、結局すべて新曲で行くことになりそうだ(トムは『ブレードランナー』サウンドトラックを意識したと語っている)。

とはいえ、新しい『サスペリア』の2019年1月日本公開に伴い、ゴブリンが再びクローズアップされるのは間違いない。

なお『ゾンビ』には幾つも別編集のヴァージョンが存在するが、今回上映されるのはダリオ・アルジェント監修版。最もゴブリンの音楽のフィーチュア度が高いヴァージョンが選ばれたのも、ゴブリンのファンにとっては嬉しい。

画像

【公演日程】

2018年10月26日(金) 会場:【大阪】梅田シャングリラ

ザ・ベスト・オブ・イタリアン・ロック・スペシャル

ゴブリン-CLAUDIO SIMONETTI'S GOBLIN-

大阪初上陸単独公演-完全ベストヒッツLIVE-

2018年10月27日(土) 会場:【川崎】クラブチッタ

ザ・ベスト・オブ・イタリアン・ロック Vol.8

CLUB CITTA' 30th ANNIVERSARY SPECIAL

<PROGRESSIVE ROCK INVASION VOL.4>

ゴブリン-CLAUDIO SIMONETTI'S GOBLIN-

第一部:映画「ゾンビ(ZOMBIE:DAWN OF THE DEAD) 全編上映&シンクロ・ライヴ

第二部:ゴブリン・ベスト・ヒッツ・ショー

公演特設サイト

http://best-italianrock.com/vol-8-band-info/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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