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オールブラックスに勝ったエディー・ジョーンズが残した言葉とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
日本にもルーツを持つ。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 ワールドカップ(W杯)日本大会の準決勝が2019年10月26日、神奈川・横浜国際総合競技場(横浜)でおこなわれた。この競技を始めた国でもあるイングランド代表が、3連覇を狙っていたオールブラックスことニュージーランド代表を19―7で撃破。3大会ぶり4度目の決勝進出を決めた。

 チームを率いるのはエディー・ジョーンズ。4年前のイングランド大会では日本代表を率いて歴史的3勝を掴むなど、指導者として携わったW杯での戦績をここまで21勝2敗としている。

 この日は試合前から相手のハカに対しVの字の陣形を組んだうえ、キックオフ早々から強烈なランナーをぶち当て勢いを加速させる。空中戦のラインアウトも安定させ、しぶとい王者を振り切った。

 試合後は、会見やミックスゾーンなどでヴィヴィッドな発言を残した。

 以下、共同会見中、共同取材中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――試合開始早々、エネルギーを持って戦えた。理由は。

「(一言のみ日本語で)イングランドノイシキネ。オールブラックスはラグビーのゴッド。でも、彼らに対しても試合ができるという姿勢を見せたかった。彼らの勢いを殺そうとしました。

 相手が何をすればエネルギーを出せるのかを見て、そこを削ぐ必要がある。そのためにも規律が必要ですが、きょうはリーダーが素晴らしい戦いをした。規律をもって戦い、ニュージーランド代表の弱みを突けた」

――フィジカルバトルについて。

「スティーブ・ボースヴィック、ニール・ハットリー(アシスタントコーチ)が素晴らしい仕事をしている。ブレイクダウンをうまく扱った。ただ、オールブラックスのスティーブ・ハンセンヘッドコーチのフォワードでの強化は素晴らしい。得点がどうなっているかにかかわらず、最後まで粘ってきた」

――最後の20分の戦い方について。

「きょうは、フィニッシャー(途中出場するリサーブ組)を先に決めた。オールブラックスとやるにはフィニッシャーが大事。ハーフタイムには最後を締める15人の役割を確認。エネルギーと規律を持ってやってくれ、試合を仕上げてくれた。その結果、ニュージーランド代表は自分たちの勢いを取り戻せなかったのではと思います」

――対するハンセンは今大会限りで退任します。

「これから2人で飲めます。私たちの関係はこれからも変わらない。彼は素晴らしいコーチ。97年のスーパーラグビーで彼はクルセイダーズ、私はブラビーズを率いていた。お互いに何度か勝って、何度か負けた。彼には感銘を受けています。彼はオールブラックス史上最高の監督の1人として歴史に残る。彼は今後日本のトヨタ自動車に入ると聞いていますが(公式発表前)、それによってトヨタ自動車の車は速くなるでしょう。…(大会の)公式スポンサーではない企業名を言ってしまいました。トラブルになるでしょうか」

――このゲームに向け、2年半、準備していたと聞きます。

「攻勢に出てその圧力を維持しなくてはいけない。我々は彼らが深い位置からプレーするようにしたかった。実際にそうできたのは、ラック周辺で勢いをつけたなかで走れたからです。キックチェースも素晴らしかった。

 彼らは1週間をかけてこの試合に準備をしてきたが、我々には2年半の準備期間があった。(オールブラックスに勝つのに必要な)習慣を選手に根付かせた。きょうは、その素晴らしい習慣を目にすることができた。

 ずっとこの試合を意識していたわけでなかったとしても、無意識のなかにもこの試合が頭の中にあった。それがいい結果に繋がった」

――決勝へ。

「本当のランキングを決めるまでには1週間ある。来週まで続きます。来週はもっといい試合をしなくてはならない。相手が誰であろうが、延長戦に突入しようが、スコアが3-3とタイトだろうがです。楽しみにしています。

 私たちは相手をコントロールできない。試合は観に行きますが。

 1週間で準備をする必要がある。まずはしっかりとリカバリー。対戦相手が誰かは観ますが、月曜にリカバリーをして火曜、水曜、木曜(に練習)ということ。決勝に向けて1週間を過ごすだけ。最高のチームになろうとプランを立てた。1日1日こなすだけです。皆さんからすると退屈に見えるだろうが、ハードワークして、日本の文化を楽しむ。選手は遊びに行くが――ニュージーランド代表は温泉に行ったね。温泉、ビジネスチャンスですよ――とにかく試合を楽しむ。これからもそうしていく。

 もちろん、ノーマルな1週間にはならないでしょう。これだけの記者さんがいらっしゃっていて、これから新聞等では礼賛の記事を載せてくれるのでしょう。でも、我々としては来週の試合に、フォーカスする」

 2大会連続でジャイアントキリングをやってのけたジョーンズ。「これまでの試合経験から学んできたことはあるが、目の前のことにフォーカスしてきただけだ」といった旨を話した。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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