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準決勝の日韓戦は劇的勝利も、実は苦戦だった? その理由とは?~侍ジャパン観戦記~

木村公一スポーツライター・作家
(写真:ロイター/アフロ)

 彼を知り、己を知れば百戦殆(あや)うからず……。

 勝利の余韻に浸りたいところ、今更、そんな孫子の兵法を持ち出すのもヤボかも知れない。結果的には山田哲人の走者一掃タイムリー二塁打で“劇勝”した侍ジャパン。だが冷静に試合展開を追っていくと、皮肉にも詰めの甘さが生んだドラマという見方も出来たからだ。そしてまだ最も重要な決勝戦が控えている。

 では、楽勝と出来なかったポイントとはなにか?

 結論から記せば、韓国の先発投手を5回まで持たせてしまったことだ。

 今大会、韓国のメンバーはかつての国際大会に比べて戦力的に劣っている。直近で対戦した一昨年秋のプレミア12と比べれば、50~60点といったところか。とくに投手陣は故障などで数名を先発できなかった。結果、11名のうち先発タイプが8名、中継ぎ、抑えが3名と、いびつな構成になっていた。ならば先発に長いイニングを任せるかといえばそれも無理だった。下記に記したのが今大会の韓国代表の先発投手とその内容だ。

①7月29日 〇イスラエル 6x-5 ウォン・テイン 3.0回48球2失点

②7月31日 ●アメリカ  2-4  コ・ヨンピョ  4.2回70球4失点

③8月1日 〇ドミニカ   4x-3 イ・ウィリ    5回74球2失点

④8月2日 〇イスラエル  11-1 キム・ミンウ  4.1回61球1失点

⑤8月4日 ●日本     5-2  コ・ヨンピョ   5回91球2失点

 結果、なんとか試合は作っているようには見えるものの、5回もたずの試合が3つもある。ベンチがより早い継投を仕掛けているわけではない。韓国の投手陣は若いが、馬力に欠け、打者一巡する頃には球威、球速が落ちてくる傾向があるのだ。そのため2番手以降への継投がゲームメイクの最大のポイントだった。

 守護神にはオ・スンファンが9回、8回にはコ・ウソク、7回にはチョ・サンウとそれぞれ役割を与えられる投手がいた。要はいかにして、先発が1イニングでも多く踏ん張り、7回からのリリーフ陣にバトンを渡すか。それに尽きた。そして投手陣が踏ん張っている間に、打撃陣が得点し、投手陣を楽にさせられるか。

 日本戦のコ・ヨンピョは、確かに変則的で日本の打者も打ちあぐんでた。シンカーに見えた変化球は、本人曰く「チェンジアップ」なのだが、右打者、とくに浅村に代表されるように内角に意識をさせられ、外角にスライダー。こうした的を絞らせない投球がはまり、日本打線はヒットこそ出し先制点を奪いはするものの、打ち崩すまでには至らなかった。結果論ではなく、もし3回、村上、甲斐の連打以降でもう2点、つまり3点奪っていれば、韓国ベンチの継投プランは早くも崩れていたはずだ。鈴木誠也、浅村あたりが助けてしまった結果になったが。

 ただもし、日本ベンチがこうした相手側の戦力状況を把握していたら、初回からの攻撃、言い換えればあのチェンジアップへの対処法も変わっていたと思う。いや、変えていかなければならなかった。なぜなら稲葉監督は、アメリカ戦での投球をスタンドで実際に見ていたのだから。いかに同じ轍を踏まないか。それも待ったなしの国際大会では望まれることだ。

 コ・ヨンピョを早くに引きずり下ろしていたら、より楽な展開で流れを自軍に留め、もっと楽な試合運びが出来た。そう記すと、揚げ足取りに思われるだろうか。しかしそれは決勝を戦うためには、大事な検証だと思う。相手がアメリカであれ、ましてや韓国が勝ち上がってくるとしたなら。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

スポーツライター・作家

獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテイターも。でもここでは国内野球はもちろん、他ジャンルのスポーツも記していければと思っています。

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