夏のクラシコと「ラフィニャッソ」の衝撃。マドリーの「3CMFシステム」に、バルセロナの即時奪回。
衝撃的な一発だった。
現地時間24日にプレシーズンマッチでバルセロナとレアル・マドリーが対戦した。この夏にリーズからバルセロナに移籍したばかりのラフィーニャの左足のミドルシュートが豪快にネットを揺らし、バルセロナが1−0で勝利を収めた。
準備期間とはいえ、クラシコである。シャビ・エルナンデス監督とカルロ・アンチェロッティ監督は、きちんとプランを持った上でゲームに臨んだ。
バルセロナはラフィーニャ、アンドレアス・クリステンセン、ロベルト・レヴァンドフスキと新戦力の3選手を先発させた。
GKテア・シュテーゲン、DFアラウホ、クリステンセン、エリック・ガルシア、ジョルディ・アルバ、MFブスケッツ、ペドリ、ガビ、FWアンス・ファティ、レヴァンドフスキ、ラフィーニャ。これがシャビ監督の送り出したスタメンだ。そして、このメンバーは基本的に新たなシーズンの「プランA」になるだろう。
昨季のシャビ監督の選手起用や采配を見ていて、気になったのはインテリオールの配置である。フレンキー・デ・ヨング、ペドリ・ゴンサレス、ガビ、ニコ・ゴンサレスといった選手を抱え、ペドリを右インテリオールに置くなど、不可解な起用をしていた。
スペイン代表のゲームを見れば、ペドリの左インテリオール、ガビの右インテリオールが最適解であるのは明らかだ。ペドリは左インテリオールを基本ポジションとすべきだ。右利きなので、その方が視野を確保しやすく、ドリブルする時にボールを隠しやすい。一方のガビは、右利きながら右のライン間で受けてのハーフターンが抜群にうまい。この解を見つけるのに、時間がかかった。シャビ監督は、選手配置が上手な指揮官ではないのかもしれない。
選手の配置でいえば、右サイドバックの問題がある。クラシコでは、ロナウド・アラウホが右SBで使われた。ヴィニシウス・ジュニオール対策でもあったが、攻撃においてはビルドアップが「死んで」しまう。
その処方箋としては、左肩上がりの【3−4−3】がある。
守備では、アラウホをヴィニシウスとの1対1に集中させる。攻撃時はアルバが一列上がり、ファティがインサイドを取る。このような形を、採れるかどうか。セサル・アスピリクエタ(チェルシー)の獲得を検討しているバルセロナだが、補強で何とかする前にやるべきことはある。
シャビ監督の戦い方は、昨季と変わらない。攻撃では、片方のウィング(右WG/ラフィーニャ)のアイソレーションで、そのサイドでの突破を図る。守備では前線から連動したプレッシングを行う。また、即時奪回を目指す。
ラフィーニャのゴールシーンでは、エデル・ミリトンのパスミスから、得点が生まれた。序盤から組織的なプレスを行なっていたのが、功を奏した。
バルセロナの「形」は示された。だが勝利を収めたとはいえ、課題は多く残されているように思う。
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■マドリーの試験的な布陣
一方、マドリーはアンチェロッティ監督がテスト的な布陣を施行した。
まずは中盤だ。カゼミロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチを休ませ、オウリエン・チュアメニ、エドゥアルド・カマヴィンガ、フェデリコ・バルベルデを送り込んだ。
【4−3−3】の3CMF(スリーセンター)である。
しかし、これは機能しなかった。アンチェロッティ監督に「突っ込み」を入れるなら、いくつかのテストを同時にやるべきではなかった。
アンチェロッティ監督は、中盤に若い選手を3人置いただけではなく、エデン・アザールをゼロトップに据え、アントニオ・リュディガーを左サイドバックに配置した。
アザールのゼロトップだが、カリム・ベンゼマの不在時の解決策になると期待されている。
本来であれば、アザールが中盤に降りてきて、ヴィニシウスやロドリゴ・ゴエスがディアゴナルランで走り込むという形が必要だ。中央のスペースを空け、効果的に利用するのである。
しかしながら、クラシコではバルセロナのプレッシングが良く、マドリーのビルドアップには蓋がされていた。アザールにボールが届かなかった。
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