エアバンドでも演奏権の処理は必要です(釣りタイトル)
前回の記事「”女々しくて”の著作権者は鬼龍院翔氏ではありません」において、余談として音楽著作権管理における「演奏権」について触れましたが、ツイッター等でちょっと反応があったのでこの機会に解説を書くことにします。
演奏権は、著作権の支分権のひとつです。
2条1項12号の定義規定に「演奏(歌唱を含む。以下同じ。)」となっていますので、エアバンドであって実際に演奏していなくても歌唱するだけで演奏権は関係してきます。
さらに、2条7項の規定により、生演奏だけではなくCDを再生することも「演奏」に該当します。
音楽著作権管理の文脈で言うと、ライブハウス、コンサートホール、レストラン、結婚式場等における生演奏およびCD再生、飲食店等におけるCDを使ったBGM、カラオケ店での歌唱などのパターンで演奏権の権利処理が必要になります。
そして、前回の記事に書いたように、日本で現時点で演奏権を管理している著作権管理団体はJASRACのみです。二番手のNexToneは、放送、CD、ネット配信、映画等々の権利処理は行なっていますが、今のところ演奏権の管理は行なっていません。これは、演奏権をちゃんと管理しようと思うと担当者が全国津々浦々のライブハウスや飲食店に行って契約を結ぶ等々、相当の人的リソースが必要になる点が大きいです。
ライブハウスの演奏に対する分配金問題、BGMの使用料問題、音楽教室における演奏の問題等々、演奏権がからむもめごとは結構多いのですが、JASRACの独占であって競争原理が機能していないことが、問題を悪化させていると言えなくもありません。とは言っても上記理由により、演奏権の管理に参入するのは容易ではありません。
さらに言えば、仮に演奏権管理に新規参入した管理団体が「当社は飲食店のBGM料金は無料とします」とすれば、飲食店側は大喜びでしょうが、権利を預ける作詞家・作曲家側としては収入減につながり得ますので「やっぱりしっかり徴収してくれるJASRACにお願いします」となりかねません。音楽著作権管理の競争原理は一般のサービス業のように安売り合戦にはなり得ない点には注意が必要です。