【消えた駅舎】海辺の宿場町にあった水色の屋根の木造駅舎 山陽本線 富海駅(山口県防府市)
今年2月18日、山口県で125年の長きに渡って使われてきた木造駅舎が役目を終えた。防府市にある富海(とのみ)駅の駅舎だ。
富海駅は明治31(1897)年3月17日、山陽鉄道が徳山から三田尻(現:防府)まで延伸した際に開業。旧駅舎は開業時から使われてきたもので、「明治30年7月」の建物財産標が付いていた。駅がある富海地区は西国街道42番目の宿場町として栄えたところで、昭和29(1954)年4月1日の防府市編入まで佐波郡富海村だった。
日本有数の幹線である山陽本線の駅だけあって駅舎も大きめだが、無人化されて窓口跡は塞がれていた。入口とホーム側の扉は失われており、風雨が吹き込むためか駅舎内は所々に痛みが見られた。
表題写真の旧駅舎は仮駅舎への移行を二週間後に控えた今年2月5日に撮影したもの。令和元(2019)年8月24日に撮影した写真と比べると、駅名表示の位置が変わっており、車寄せ部分を中心に痛みが激しくなっているのがわかる。丸ポストもいつの間にか移転したようだ。
2月5日に筆者が訪問した際、旧駅舎の隣では仮駅舎の基礎が姿を現していた。改札機と屋根だけから成る簡素な仮駅舎は2月18日より使用開始され、旧駅舎はその後解体された。4月1日からはICOCAが利用可能となっている。現在、富海駅では旧駅舎跡地に新駅舎の建設が進められており、地域交流スペースを兼ねたものになる予定だ。125年もの歴史を重ねてきた旧駅舎に代わる新駅舎が果たしてどのようなものになるのか、気になるところである。
山口県は他の県と比べると良質な木造駅舎が多く残っている県だが、近年は阿川駅、琴芝駅、四辻駅など改築が相次いでいるため、興味のある方は今のうち各駅を見ておいた方がいいだろう。