「iPad」と「iPhone」を企業に売り込め、アップルが法人市場への取り組み本格化
英ロイター通信によると、米アップルは法人向け事業の拡大に向けて、本格的な取り組みを進めている。専門の営業要員を雇い入れたり、法人向けIT製品・サービスを提供する数十社の企業と協力し合っているという。
HP、デル、オラクル、SAPに挑む
アップルが、アイパッド(iPad)やアイフォーン(iPhone)などのiOS端末向け法人アプリの開発と、端末の販売で米IBMと提携すると発表したのは今年7月。それから数カ月がたった今、この分野への取り組みが具体化してきたと、ロイターは伝えている。
アップルが先頃明らかにした資料(PDF書類)を見ると、今年7〜9月のアイパッドの販売台数は1年前から13%減の1232万台となり、3四半期連続で前年実績を下回った。
専門家によると、アップルはこうしたアイパッドの不振な販売実績を法人向け事業の拡大で補おうとしている。
この分野には、米ヒューレット・パッカード(HP)、米デル、米オラクル、ドイツSAPといった業界リーダーがいる。IBMとの提携は、オフィスの情報技術や業務用アプリケーションとった分野でアップルがこれらリーダー企業に挑むきっかけになったとロイターは報じている。
今後の進展によって状況は異なるものの、アップルは業務用モバイルアプリの分野で米マイクロソフト、韓国サムスン電子、米グーグルの取り組みを妨げる存在になる可能性があるという。
法人向けモバイルアプリの新興企業と連携
アップルは専門の営業チームを企業に送り、最高情報責任者(CIO)らと協議している。そのうち少なくとも米シティグループとは契約提携に向けた協議を進めていると、ロイターは伝えている。
また同社は、機器の保守サービスなどを行うフィールドエンジニアリング業務の管理ソフトを手がける米サービスマックス(ServiceMax)、建設業向け設計図アプリを手がける米プラングリッド(PlanGrid)といった新興企業と緊密に協力し合っている。
このうち前者のサービスマックスは日用品大手の米プロクター・アンド・ギャンブルや、化学大手の米デュポンなどを顧客に抱えている。そして、このサービスマックスとアップルは共同で、顧客企業の担当幹部を招くイベントを全米各地で開催しているという。
こうしたイベントは夕食会という形で過去1年間に8回開催。毎回、企業のCIOやサービス担当幹部など、25〜30人ほどが集まる。
サービスマックスの幹部によると、顧客の95%はすでにアップル製品を使っている。また新規顧客は通常、数千台規模でアイフォーンやアイパッドを注文するという。フィールドサービスだけでも市場規模は150億ドルに上る。
サービスマックスの顧客の中には数千人のフィールドエンジニアを抱える企業もあり、これはアップルにとって巨大な市場機会だとこの幹部は話している。
iOS、法人市場で新規利用が拡大
法人向けモバイル端末管理ツールを手がける米グッド・テクノロジーの最新の調査(PDF書類)を見ると、アップルの取り組みは一定の成果が表れていると言えそうだ。
これによると今年7〜9月期の法人によるiOS端末の新規利用率は69%。前の四半期から2ポイント増加している。これに対し、グーグルのアンドロイド(Android)は同2ポイント減の29%。マイクロソフトのウィンドウズフォンはわずか1%にとどまった。
またタブレットに限って見ると、アイパッドの新規利用率は89%で、アンドロイドは11%。アンドロイドは2四半期連続でシェアを伸ばしたものの、アイパッドとの差は大きい。
なおグッド・テクノロジーは、モバイル端末が企業ネットワークなどに接続する際に必要となるセキュリティーサービスや、アクセス管理サービスなどを行っている企業。これを生かし、法人顧客における端末の新規利用件数も集計している。
その顧客数は世界190カ国の6000団体。業種は銀行、保険、医療、航空宇宙・防衛など多岐にわたっている。
(JBpress:2014年11月13日号に掲載)