『無観客ライブ』のほうが『ライブ』よりも儲かるコロナ時代〜2020年オンラインライブの勃興の年〜
KNNポール神田です。
■『無観客ライブ』と言う名の事前収録は果たして『ライブ』なのか?
2部構成 1部はファンクラブ限定配信 2部は一般参加も可能
嵐フェス ARAFES2020
https://online.johnnys-net.jp/s/jno/page/ARAFES2020
今回の事前収録の嵐の『ライブ』のフィナーレでの演出は、プロ野球中断ということで『ライブ』の内容が事前に知られることとなってしまった。
コロナ禍の影響で、無観客ライブは、2020年のスタンダードとも思えるような状態になっている。しかし、無観客での公演をもりあげるために、『ライブ』でありながらも事前収録という事例も多くなってきた。
Appleのイベントなどでも、ライブストリーミング放送でありながらも事前収録が『ニューノーマル』となってしまった感がある。
『ライブ』というのは、『生』という意味ではなく、配信の『生』解禁時間と読み替える必要があるのかもしれない。
そして、新国立競技場のスタンド席は6.5万人、過去にラルクが旧国立競技場で8万人を集めたことがあるので、東京ドーム5万人の2回分の10万人規模のライブ収容が新国立では可能となるだろう。
しかし、無観客ライブともなれば、上限がなくなるので、会場のキャパ以上の参加が可能となる。
嵐の『オンラインライブ』で何万人集まるのか?
国立競技場の10倍で100万人、@4,800円とすると48億円を一回分の公演の固定費で実現できることとなる。
■コロナ禍が生んだ『無観客ライブ』100万人動員というオンライン公演46億円のビジネスモデル
エンタメ業界にとっての2020年は手痛い年であることに間違いない。一箇所に集うことができなくなったことによっての、特に『興行』の世界ではつらい1年となった。しかし、『必要は発明の母である』。ビジネスでは『ZOOM会議』がスタンダードとなり、自宅で『無観客ライブ』に参加するという手法が誕生した。
サザンオールスターズの無観客ライブ(2020年6月25日横浜アリーナ)では18万人アクセス6億5,000万円を売り上げた。
https://2020live625.southernallstars.jp/
会場の横浜アリーナのライブの収容人数は17,000人と言われているので、サザンのライブでは、そのキャパの10.6回分の公演を一度におこなったこととなる。実質、一度の『ライブ』で10回分のドームツアーをおこなったのと同じ人数を集めたこととなる。チケット代金が税込み3,600円だったとして、実際のライブ価格の3割だったとしても、ドームの前後を含め3日間のレンタル料金、警備、交通、受付、舞台の設営、撤収、音響、証明、などのコストが1/10の1回分というのは、『ライブツアー』の概念を大きく変えてしまったのかもしれない。
■韓国の『BTS(防弾少年団)』は100万人を集めオンラインで46億円の売上!
99万3,000人の集客とすると、東京ドーム収容5万人とすれば、東京ドーム 約20回の公演分に値する。
46億円÷100万人として一人当たり4,600円となる。こちらも通常のチケットの1/3程度として考えられる。
HDのマルチビューやバーチャル展示チケットなどが用意されていた。そのうち、記念の物販なども可能となるだろう。
BTSのライブは日本の映画館でのパブリックビューイング方式でも4,200円で当日『ライブ』公開された。
https://api-liveviewing.com/bts2020/mapofthesoul-one/
■消えたライブ地元経済効果は17.5億円…
コロナ禍でなければ、アーティストや興行関係者は最大5万人の収容で1万円のチケットでの総売上5億円 物販2億円、7億円くらいの売上として、46億円たたきだすためには、最低7公演は必要であっただろう。
もちろん、周辺のホテルや飲食店で来場者の半数が1万円を使うだけで、2.5億円の経済効果も生まれていたはずだ。すると7公演あるとすると、合計17.5億円程度のライブ経済効果もあったはずだ。
オンラインライブとなるとそれらの関連経済効果は地元では創出しなくなってしまう。
しかも、全世界同時配信で、『100万人』を集められるアーティストにとっては、飛行機で海外へでてツアーをする意味さえ、考えるようになるのかもしれない。
■『オンラインライブ』は21世紀の新しい『表現手法』になろうとしている
これは21世紀の2020年に登場した『新たな興行スタイル』である。映画やテレビや舞台を総合的にあわせて全世界で共有しあうという新たな『総合芸術』といっても良いのかもしれない。
もちろん、ライブハウスやドームに出かけていき、1時間以上も前から会場に並び、アーティストの出番を待ち、2〜3時間の『ライブ』を一緒に過ごす『ライブ』から、終了後に友と一緒に感動を共感しながら終電まで飲食をするという価値はなくなりはしない。
しかし、『世界同時配信ライブ』という、演出に時間もお金もふんだんにかけた、映画のようなゲームのような、収録部分もふくめての新たな有料課金型のライブは、世界にファンを持つ、メガアーティストにとっては、禁断の果実のような『公演』となるだろう。
ボブ・ディランのように、いまだに世界のどこかで毎日ギグを繰り返すアーティストもいれば、数年に一度、アルバムを作り、年に1〜2度、オンラインライブを制作するスタイルのアーティストが生まれるのかもしれない。むしろ、それは『ライブ』や『公演』といったものとちがった『表現手法』になる可能性が強い。
VR技術やAI技術をかけ合わせ、新たなライブ体験ができるようになった時に、アーティストは音と映像だけではなく、よりインタラクティブなコンテンツづくりを発想することだろう。
ビートルズがライブ公演をやめ、アルバム制作に没頭した時期、こんな世界同時生配信が、テレビ衛星中継を使わずに、しかも個人課金の有料でできたならばどんな『ライブ』を演出したのだろうか…。
禁断の『オンライン・ライブ』の黎明期にボクたちは対峙しているのだ。
1967年6月25日、世界初の試みとなる通信衛星を使って24ヵ国で同時放送された宇宙中継特別番組『OUR WORLD 〜われらの世界〜』からのAll You Need Is Love
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