KISSの火を拭く事業家ジーンシモンズが嘆く音楽産業の闇
KNNポール神田です!
KISSのジーンシモンズに会えるというお誘いをうけて原宿ラフォーレに行ってきた!
『KISS EXPO TOKYO 2016~地獄の博覧会~』
2016年10月13日〜10月31日まで開催されている
KISSのマーチャンダイジング展ともいえるKISS EXPO TOKYO 2016
音楽ファン、ロックファンだけにかかわらず、KISSというロック産業界の中で最も成功したマーチャンダイジング展がこのKISS EXPO TOKYO 2016だと感じた。反体制音楽としての「ロック」を最もポップに『地獄』というコンセプトで日本の歌舞伎のクマドリをモチーフに悪魔が愛を唄うということでセンセーショナルにデビューしたのがKISSだ。デビューは1974年。すでに活動は42年目を迎えた。当時のロックがファッションや文化に影響を与えたがKISSはライブバンドとして人気を博す。ステージでは、吐血に松明での火吹き、電飾ロゴに、火炎、スモーク、メイク、ドラゴンブーツ何もかも、アメリカン・コミックさながらのステージが展開された。日本のラフォーレに、まさにそれらが一同に集められている。間近に見られるコスチュームからヴァーチャルリアリティーによるジーンのKISS部屋からポールのアトリエ、それに初期の契約書、デモ曲を吹き込んだ手書きのカセットテープ、KISSの棺桶から、触れる楽器とステージ、キャラクター商品群は5000種にいたる。音楽以外で一番稼いだバンドは世界の中でもKISSに間違いない。
火を噴く事業家ジーン・シモンズのビジネスアイデア
KISSのメイクの商標登録から、コミック、フィギュアなどの版権事業、現在では、KISSのカフェからKISSクルーズという3000人規模の船旅、KISSゴルフ場、にいたるまで多彩だ。さらにジーン・シモンズ自身は、大統領候補のトランプのTV出演やスポーツチーム、レストラン・チェーン、金融ベンチャー、レコードレーベルなどを手がける事業家でもある。今回のトークショーでKNNは、独占質問を行うことができた。
ジーンシモンズに聞く、「音楽産業の今後」
今回のトークショーで2つの質問をジーンシモンズ氏に唯一ぶつけることができた。
一つ目の質問は、42年間プレイする彼らのライバルはかつてのKISS自身だ。かつての自分たちの楽曲をやり続けることに対して、過去の自分に対して嫉妬することはないのか?昔の曲ばかりが歓迎されている現状について。
ジーン:「自分にとって、自分の曲はまさに自分の子どものような存在。いくつになっても可愛いままだ。長年自分たちでプレイしている楽曲は、子供の成長を見守り育てているようなもの。実際に子どもが育つように、当時のKISSの曲を聴いて、また生まれてくる子もいるだろう。また、KISSはひとつの大きな惑星のようなものだと思っている。どの曲もそれぞれ好きだし、想い入れを持っている。それに対して、嫉妬するようなことはない」
もう一つの質問は、現在の音楽シーンだ。すでに昔の曲ばかり聞いており、インターネットのストーリーミングで音楽はほとんど無料になっている。もし、ジーンさんが、今17歳でこれからデビューしたいと思っていたら、これだけの音楽業界でイノベーションを興してきた経験でどうアドバイスする?
ジーン:「それはすごく重大な問題だ。インターネットは、音楽の敵だと断言できる。今の時代にデビューするアーティストやバンドは本当に大変だ。すでに、億万長者になったオレたちは助かったが(笑)。自分たちの時代には自分たちを信じて投資してくれるレコード会社があり、レコードやポスターをおいてくれるショップが、あり、そして、お金を払っているキミたちがいた。それらがすべてうまく回っていた。それにオレたちはキャラクターというビジネスをうまくあわせた。ところが、インターネットのおかげで、誰もお金を払ってくれない。もちろん、インターネットもお金を肩代わりしてくれない時代になってしまった。想いだしてみてほしい音楽業界には2つのインパクトがあった。1つ目は、1988年のCD時代の到来だ。LPレコードよりも、ちっちゃなCD盤のケースに俺たちのすべてをいれなければいけなくなった。現在、死んでも活躍しているアーティストを見てほしい。エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリン、ACDC、マイケルジャクソン、U2、みんなCD紀元前の時代のアーティストだ。そして、1995年のインターネットだ。ナップスターの登場で、すべての音楽は無料で共有されるようになってしまった。しかし、これでみんなが不幸になっている。タダで得られるものに対して人間は価値も興味を信頼も持たなくなってしまった…。俺はいろいろと協力をしてきたヴァン・ヘイレンや日本のバンドEZOなどにもだ。今、日本のイエローモンキーがライブを再開するようになったのも、ライブ市場がまだまだあるからだ。そこにいる彼にサインをもらったら、キミは5ドルでも渡さなければ音楽の世界は死んでしまう(笑)そう、音楽のない世界ほどつまらないものはない。食べて寝ても生きていけるが、音楽がないと魂がないようなものだ。音楽に対して、もっともっと理解する必要がある。」
ジーン・シモンズは、ウィットと独自の世界観で、現在の音楽市場をとりまく環境を嘆いていた。しかし、この『KISS EXPO TOKYO 2016』に子供を是非連れてきてあげてほしいとリクエストした。子供はKISSを経験していなくても、絶対に何かをこの場から感じ取ることが必ずできるからと語った。
余談ですが、KISSのキャラクターはKISSコンドームからKISS棺桶まである。ジーンは「KISSは、KISSで始まり、IN&OUT(いれたりだしたり)まである(笑)」とジョークをかましたが、日本語の翻訳ではうまく伝わらなかった。
ザ・イエローモンキー 廣瀬″HEESEY″洋一さんに同じ質問をしてみた…
会場におられた廣瀬さんにも質問してみた…
「ジーンさんの言うように、ボクもこれからデビューする世代に、とっては、とても大変な時代だと感じる。音楽で有名になったら…という夢が非常に描きにくくなってきている。まだライブの市場は活況だが、しかもそれもある程度認知されてはじめてライブに動員ができる…本当に難しい時代になってしまったね」と廣瀬氏。
2016年、月額課金の○○放題ビジネスが日本でも萌芽した年、しかし「放題」になってしまったことにより、ひとつひとつの選択判断や価値は大きく変わりつつある。ティーンネイジャーの熱狂すべきパワーのかけかたも大きく変わった。20世紀型のパッケージビジネス産業全体が、21世紀型の所有を前提としないシェアリングエコノミー産業へと大きくかたむいているからだ。ジーン・シモンズは大きく吠えて火を吹いた…。