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PayPayの黒字化は数年以内。「後払い」は準備中

山口健太ITジャーナリスト
PayPayの後払いは準備中(ソフトバンクの決算説明会より)

PayPayは10月1日から中小店舗向け決済手数料を有料化するなど収益化に取り組んでいます。しかし数年後の黒字化に向けて、手数料よりも重要になるのは「金融サービス」のようです。

PayPayの登録ユーザー数は2021年11月時点で4300万人超、2021年度上半期(4〜9月期)の決済回数は16.6億回といずれも成長が続く中、大きな注目を浴びたのが中小店舗向け手数料の有料化です。

この有料化に伴い、PayPayを解約する加盟店が相次ぐとの予想もありました。しかし実際には加盟店数で0.2%、取扱高で0.1%と、想定していたよりも軽微なものにとどまったといいます。

PayPay手数料有料化による解約影響は「極めて軽微」(Zホールディングスの決算説明会より)
PayPay手数料有料化による解約影響は「極めて軽微」(Zホールディングスの決算説明会より)

この数字をMMD研究所によるPayPay導入店舗のオーナー500人への調査と比べると、興味深い差があります。この調査では手数料の有料化による解約意向は21.8%となっていたものの、実際に解約する店舗はそれよりはるかに少なかったことになります。

とはいえ、まだ安心できる段階ではなさそうです。MMD研究所の調査では41.2%が「どちらとも言えない」と答えており、「有料化に関わらず継続利用したい」の37.0%を上回る店舗が態度を保留しているからです。

PayPayは2022年3月まで、決済額の3%を還元するキャンペーンを実施しています。競合他社が中小店舗向けに手数料無料を打ち出していることと併せて、このキャンペーンが終わった後にPayPayの加盟店がどう動くか注目されます。

一方、PayPayが進めるのは加盟店のDXやマーケティングを支援する有料サービス「マイストア」機能の展開です。将来的にPayPayのライバルになる決済手段が現れたとしても、加盟店を二人三脚で支援していれば負けることはない、という思惑が感じられます。

PayPayの「後払い」は準備中

「超PayPay祭」などのキャンペーンで赤字続きのPayPayは、収益化に「3階建て」の構想を示しています。1階は決済手数料、2階は加盟店支援や販促による利用頻度の向上、そして3階部分に最も大きな成長余地を残しているのが「後払い」や「ローン」などの金融サービスです。

PayPayのマネタイズは「3階建て」(Zホールディングスの決算説明会より)
PayPayのマネタイズは「3階建て」(Zホールディングスの決算説明会より)

後払いはBNPL(Buy Now, Pay Later)の略語で知られ、世界的に流行しています。PayPayも「PayPayあと払い(一括のみ)」の名称で2020年4月から一部のユーザーに提供しており、2020年夏以降にはすべてのユーザーが申し込み可能になる予定でしたが、2021年11月現在もこれは実現していません。

PayPay取締役の小澤隆生氏は「さまざまな調整をしており遅れている。決まり次第ご案内する」とZホールディングスの決算説明会で説明しています。その間にもユーザーニーズは高まっていることから、Yahoo!ショッピングなどでは「NP後払い」で知られるネットプロテクションズのシステムで後払いを導入したといいます。

2022年度以降にPayPayを連結子会社化する計画のソフトバンクは、「黒字化は数年以内」(宮川潤一社長)と、まだ拡大路線を続ける構えです。「アリペイなどを見ていると、後払いやローンによるマネタイズが主力になっている」(同)との期待も寄せています。PayPayの後払いがいつ本格的に始まり、どれくらい伸びるか気になるところです。

2022年2月1日追記:

1月31日に「PayPayあと払い」の発表があり、サービスを開始しました。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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