キノカワガ(木の皮蛾)って、どれだけ木の皮(樹皮)に似ているの?#擬態
キノカワガの翅は、色合いも形状も樹皮に良く似ている。「簡単には見破られない」という自信があるから、太い木の幹の真ん中の目立ちそうな位置に、じっととまったままで成虫越冬する。
キノカワガの翅には、凸凹した波型の模様が並んでいて、その模様が樹皮と一体化する。キノカワガの成虫の翅の色柄は、苔のような緑色がちりばめられたものから、枯れ木のような焦げ茶色一色のもの、黒い筋が目立つものまでさまざまであり、その色柄に合った樹皮にとまっていることが多い。
しかしキノカワガは、カメレオンのように体色を変化させられるわけではなく、自分の体色を認識しているとも思えない。それでも擬態に最適の木を選んでいるように思えるのは、なぜなのか。
恐らくキノカワガは、あまり選り好みせずに、ある程度ゴツゴツ、ザラザラした樹皮に張り付いて越冬するのだろう。その中で、あまりうまい擬態になっていないものは、天敵に襲われて命を落とし、見事な擬態になっているものが多く生き残るのだと考えられる。
われわれ虫好きが厳冬期に、目を皿のようにして見つけ出すキノカワガの多くが、カモフラージュの天才のように見えるのは、そのためだ。
灯火に集まって白壁にとまっているキノカワガを見つけても、筋金入りの虫好きは全然喜ばない。と言うか、そんな場所にいるキノカワガは、あまり見どころのない、普通の蛾に成り下がってしまう。
真冬の厳しい寒さの中で、「絶対見つからない」と自信満々のキノカワガの擬態を見破ることこそが、虫探しの醍醐味、虫好きの自己満足の極致なのである。
(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)