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やはり日本は特殊? 「アバター」続編、日本のみ初登場3位の衝撃…ここから巻き返しはなるのか

斉藤博昭映画ジャーナリスト

2022年最後の世界的な話題作として、全世界ほぼ同時に公開された『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』。世界興行収入で今もナンバーワンの位置にある、2009年の『アバター』続編ということで、その期待は大きなものだった。

多くの国と同じく12/16に公開された日本では、国内史上最多となる1466スクリーンで上映。記録に残っている過去の最多では、2012年の『アメイジング・スパイダーマン』の1092スクリーンなので、いかに『アバター』続編への期待が高かったかがわかる。ただそもそもIMAX 3D、4DX、ドルビーシネマ/アトモス、2D、日本語吹替などバージョンが多種にわたるので、スクリーン数が増えるのは必然なのだが。

このスクリーン数から、当然ながら公開週の週末動員ランキングで、『アバター』続編のナンバーワンが予想されたが、残念ながら3位となった。1位は『THE FIRST SLAM DUNK』(公開3週目)、2位は『すずめの戸締まり』(公開6週目)と先週と変わらず。『アバター』は上回ることはできなかった。上位2作が強いとはいえ、スラダン公開から2週間あったので、満を持して1位に輝きたかったはずである。

思い出されるのが、2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』。日本ではその2週前に強力な作品『名探偵コナン 紺青の拳』が大ヒットスタートし、その3週目に『エンドゲーム』が公開。この時はかろうじて『エンドゲーム』が1位をゲットした。しかしすぐに翌週には『コナン』に抜かれる。

世界的な話題のハリウッド大作でも、日本で大ブームになっているアニメ作品があれば強力なライバルとなり、なかなか超えられない事実が、今回の『アバター』で改めて証明された。

アメリカではもちろん『アバター』続編は、ダントツの1位デビュー。2位の作品『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の、なんと25倍もの数字。先週末はすべての興行収入の約88%が『アバター』という独占状態である。週末のみでは2022年1位の『トップガン マーヴェリック』も上回った。ただ売上の1億3400万ドル(約183億円)は、予想をやや下回る数字。またアメリカと同様に高い数字が期待された中国も、コロナの混乱もあってか、約5700万ドル(約80億円)と予想範囲の最低ラインだったよう。そうは言っても、日本以外の世界135の国と地域でナンバーワンのスタートとなっているのは事実だ。

『アバター』への熱狂という点で、世界の他国と日本の温度差は感じる。では2009年の前作『アバター』はどうだったかというと、日本でも公開週に1位で初登場。そこから9週連続で1位に君臨していた。結果的に興行収入159億円という、洋画歴代5位の記録を打ち立てるのである。この時は『アバター』の世界が日本の観客を熱狂させたわけで、受け入れられる「素地」はあった。

前作とは別に、『アバター』続編のひとつの指針となったのが、2022年洋画ナンバーワンの『トップガン マーヴェリック』。公開週の週末3日間の数字を比較すると

『トップガン マーヴェリック』

動員74万7000人 興収11億5800万円

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

動員35万4263人 興収6億4637万円

と『アバター』は『トップガン』のおよそ半分くらいのスタートになっている。ちなみに『トップガン マーヴェリック』の最終興収は134.9億円。そして前述の『アベンジャーズ/エンドゲーム』は公開週末3日間で動員が96万人で、最終興収は61.3億円

実際にこの週末、『アバター』に関するニュースに対する一般のコメントで、「遅い時間だったとはいえ、劇場内に自分たち2人だけだった」「客の入りは1割くらい」という書き込みも見受けられ、上映スクリーン数、および上映回数の多さに観客が追いついてない印象もあった。一方で、都市部のシネコンやIMAXレーザーなどは満席に近い状態で、「今は良い席がすぐに埋まるので、もう少し待って席に余裕が出てから観に行きたい」という意見も多く見られた。作品として3Dで観ることがひとつの前提なので、できるだけ中央に近い席で観たいのも事実だろう。

作品の評判は全体的に上々である。実際に観た人のポイントは、映画サイト、Filmarksで4.1、Yahoo!映画のレビューで3.7 と悪くない数字(12/20現在)。

現時点での映像体験の最高峰」(Filmarksより)

長時間を忘れるほどの没入感」(Yahoo!映画より)

など、絶賛の多くはその映像美に対して向けられている。ストーリーに関しては賛否半々といったところ。

上映時間が3時間12分という長さで、ちょっと敬遠したいという声も聞く。これに関しても「あっという間」という肯定派と、ストーリーに絡めて「やはり長すぎる」派に分かれている印象。

しかし現状の反応から推測すると、これから本格的な年末・年始の休みに入る時期に、数字が伸びるポテンシャルは残されている。「映画館でしかその魅力を体験できない、数少ない作品」として、これから鑑賞を考えている人は多く、今後の口コミによって数字が落ちず、いかにキープできるかが重要になりそう。

今週末、12/23からは『ブラックナイトパレード』、『かがみの孤城』と、邦画の話題作も公開が続き、ライバルも増え、スクリーンの割り当ても変わるので、『アバター』続編は3位以内に踏みとどまれるか、あるいは順位を上げられるか。勝負どころになる。年明けの1月は大ヒットを狙える作品が少なく、「特別な体験」として地道でも息の長い興行になることに期待したいところ。前作『アバター』も、1997年の『タイタニック』も、同じジェームズ・キャメロン監督の歴代ヒット作は、最初のロケットスタートというより、ロングランで驚異の数字が達成されたので……。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

全国劇場にて公開中

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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