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この新人のホームランは1本目も2本目も同じ投手から。違う試合の同じイニングに打つ

宇根夏樹ベースボール・ライター
ビニー・パスクィンティーノ(カンザスシティ・ロイヤルズ)Jul 11, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月11日、ビニー・パスクィンティーノ(カンザスシティ・ロイヤルズ)は、ダブルヘッダー1試合目の4回裏に、マイケル・ピネイダ(デトロイト・タイガース)からホームランを打った。

 パスクィンティーノは、24歳の一塁手だ。メジャーデビューは6月28日。ロイヤルズは、この前日にカルロス・サンタナをシアトル・マリナーズへ放出し、パスクィンティーノをAAAから昇格させた。サンタナのトレードについては、「マリナーズがこの選手を獲得するのは2度目。前回の在籍は10日間。今回も短期間!?」で書いた。

 7月1日にも、パスクィンティーノは、ピネイダからホームランを打っている。この時は、4回表だった。メジャーリーグでピネイダ以外の投手から打ったホームランは、まだない。

 イライアス・スポーツ・ビューローによると、キャリア最初の2本塁打を、どちらも同じ投手から、違う試合の同じイニングに打ったのは、2006年のブロンソン・アローヨ以来だという。アローヨは、4月5日の3回裏と4月11日の3回表に、グレンドン・ラッシュからホームランを打っている。

 アローヨは投手だ。初本塁打と2本目を打った当時は、メジャーリーグ7年目だった。通算本塁打は6本。3本目以降は、ラッシュ以外の4投手から1本ずつ記録した。

 パスクィンティーノは、2019年のドラフトで11巡目・全体319位指名を受けた。この年は、ルーキークラスの57試合で打率.294と出塁率.371と14本塁打、昨シーズンは、A+とAAの計116試合で打率.300と出塁率.394と24本塁打(2020年はマイナーリーグ全体が中止)。今シーズンは、昇格までに、AAAの69試合で打率.280と出塁率.372と18本塁打を記録した。四球と三振は37と36だ。アベレージとパワーを両立させているだけでなく、選球眼も優れ、打席のクオリティが高い。

 カンザスシティ・スターのネイサン・ハンらによると、パスクィンティーノは今年のスプリング・トレーニングで、ロイヤルズ一筋にプレーした殿堂選手のジョージ・ブレットに「イタリアン・ナイトメア」と称されたという。ラストネームから窺えるように、パスクィンティーノはイタリア系だ。ナイトメア(悪夢)は、対戦相手にはそうだということだろうか。こちらも殿堂選手のフランク・トーマスは、その打撃によって相手を痛めつけることから「ビッグ・ハート」と呼ばれていた。

 今のところ、少なくともピネイダにとって、パスクィンティーノはナイトメアだろう。2本目の被本塁打の直後には、タイムリー・ヒットも打たれている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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