Yahoo!ニュース

【オートバイのあれこれ】スズキの歴史は3気筒とともに。

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は「スズキの歴史は3気筒とともに。」をテーマにお話ししようと思います。

オートバイにおいてはあまりメジャーではない一方、クルマの世界では比較的採用例の多い3気筒エンジン。

今や軽自動車の大半は3気筒で、また最近ではBMWやアウディ等の一部グレードにも3気筒採用モデルが増えてきているそうですね。

クルマの世界において、3気筒エンジンはスモールカーにちょうど良いサイズとパワーのバランスを持ち、また生産コストや燃費の点でもメリットが多いということで高評価を得ているみたいです。

スズキはそんな3気筒エンジンの強みに、いち早く気づいていたメーカーと言えるかもしれません。

スズキが初めて3気筒エンジンを使ったのは、今から約60年前のこと。

1965年(昭和40年)にリリースした乗用車『フロンテ800』に、水冷2ストロークの直列3気筒エンジンが搭載されました。

▲フロンテ800。スズキ初の小型乗用車(5人乗り)としてデビュー
▲フロンテ800。スズキ初の小型乗用車(5人乗り)としてデビュー

同社初の3気筒であると同時に、初の水冷エンジンということにもなりました。

その後、スズキはフロンテシリーズを一貫して3気筒で作り続けます。

当時はライバル車としてスバル『360』やホンダ『N360』などもありましたが、これらは2気筒で、小型車カテゴリーでは唯一スズキだけが草創期の頃から3気筒を貫いていたと言えます。

▲ホンダが'67年に発売したN360。排気量354ccの空冷4スト2気筒エンジンを搭載
▲ホンダが'67年に発売したN360。排気量354ccの空冷4スト2気筒エンジンを搭載

そしてスズキはオートバイの分野においても、当時のフラッグシップモデル『GT750』を2スト3気筒で開発。

▲スズキが初のビッグバイクとして開発したGT750。フロンテと同様の水冷2スト3気筒を採用
▲スズキが初のビッグバイクとして開発したGT750。フロンテと同様の水冷2スト3気筒を採用

GT750が登場した'71年(昭和46年)にはすでにホンダが並列4気筒の『CB750FOUR』をリリースしており、バイクファンの間では「4気筒ブーム」なるものが巻き起こっていましたが、そんななかにあってもスズキは3気筒で勝負を挑んだのです。

4ストローク6気筒並みのパワーとスムーズさ」という宣伝文句とともに、2スト3気筒の強みを猛アピールしていたスズキ。

▲こちらは四輪用の2スト3気筒ユニット『LC10』。フロンテ360等に載せられた
▲こちらは四輪用の2スト3気筒ユニット『LC10』。フロンテ360等に載せられた

しかし'70年代を迎え、世間では大気汚染問題が声高に叫ばれ始め、そのなかで環境性能の悪い2ストエンジンへの風当たりも強まり、スズキは時勢に追われ4ストロークへの移行を余儀無くされるようになってしまいました。

こうして2スト3気筒は消えることになったわけですが、スズキは4ストロークが主流になってからも(クルマの分野で)3気筒レイアウトだけは採用し続け、2気筒や4気筒に負けずにその勢力を保ちながら現在にまで至っています。

▲3気筒は現在、軽自動車の“スタンダード”となっている
▲3気筒は現在、軽自動車の“スタンダード”となっている

冒頭でもお伝えしたとおり、現在はスズキのクルマに限らず、国産軽自動車のほとんど(全て?)が3気筒となっているわけですが、この現状を見るに、3気筒が一般化する前から3気筒にひたすらこだわり続けていたスズキは、「先見の明があった」と言って差し支えないのかもしれません。

▲人気の旧車「サンパチ」ことGT380もスズキ3気筒の名車として忘れられない
▲人気の旧車「サンパチ」ことGT380もスズキ3気筒の名車として忘れられない

画像引用元:スズキ/本田技研工業

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

Rotti.の最近の記事