スマートスピーカーはスマホやPCへの脅威になるか、米国では4300万人が所有
米公共ラジオ局NPRと米調査会社エジソン・リサーチが公表したレポートによると、米国では、現在、約4300万人の成人が、米アマゾン・ドットコムの「Echo」や米グーグルの「Google Home」に代表されるスマートスピーカーを所有している。
「アーリー・マジョリティー」の段階に
これは同国成人人口の18%という数値。その男女比率は女性が54%、男性が46%。また、購入してから1年以上たつという人の比率は26%、購入後1年に満たないという人は74%だという。
アマゾンがEchoの初代機を米国で発売したのは2014年11月のこと。当時、Echoを購入していたのは、「アーリー・アダプター」と呼ばれる、新たに登場した製品やサービスをいち早く導入する人だった。
しかし、スマートスピーカー市場は、すでにその時期を過ぎ、「アーリー・マジョリティー(初期多数派)」が大半を占める段階に入った。
こうした消費者層には、利用者属性や行動/メディア消費パターンといった点において、傾向が顕著になりつつある。それらを知ることは、さまざまな業界で、新たなビジネス戦略のヒントを見いだすことにつながるという。
スマートフォンの利用時間が減少
このレポートの内容を見てみる。例えば、スマートスピーカーを購入したことで、他の機器やメディアの利用時間が減ったかという質問への回答は以下のとおりだ。
スマートスピーカー購入者の56%が、他のテクノロジー製品の利用時間が減ったと答えている。
ラジオ(AM/FM)の利用が減ったという人が最も多いが、ラジオの後は、スマートフォン、パソコン、タブレット、印刷メディア(新聞、雑誌、書籍など)、テレビ、他のオーディオシステムの順。ドイツ・スタティスタが、この調査に関するインフォグラフィックスを作成し、公開している(図1)。
- 図1 スマートスピーカーの登場で他のテクノロジー製品の利用時間が減少(インフォグラフィックス出典:ドイツ・スタティスタ)
スタティスタはこの中で、スマートスピーカーがラジオに取って代わりつつあることは驚きではないとしている。利用者がスマートスピーカーに求める機能やサービスの中で最も多いのは、音楽再生(インターネット・ラジオも含む)だからだ。
しかし、スマートフォンが上位に挙がっているのは、これまでにない傾向だと同社は指摘。このことは、多くの人がこれまでスマートフォンの画面で行ってきた簡単な作業を、音声アシスタントで行うようになってきたことを意味する、としている。
NPRとエジソン・リサーチのレポートによると、スマートスピーカー利用者が、多く使っている機能やサービスは、1位から順に、音楽、天気予報、一般知識の質問、タイマー/アラーム、時刻、ニュース、ジョーク、ラジオ、スポーツの試合、リマインダー、交通情報、スケジュール、レシピ、店舗情報、家電操作、ショッピング、ToDoリスト、電話、自宅内での家族との連絡(スマートスピーカー同士の通話)など。
確かに、これらの多くは、スマートフォンやパソコンの画面で行うよりも、声で命令した方が手っ取り早い。レポートによると、60%の利用者が、今後、スマートフォンやパソコンなどの画面を見る時間を減らしたいと考えている。
「スマートスピーカー世代」が誕生か
もう1つ興味深いのは、これらの利用者のうち81%は、その世帯に子どもがいること。そのうちの73%の家庭では、子どもがスマートスピーカーを使うことがあるという。
子どもたちの用途で多いのは、音楽、質問、ジョーク、ゲーム、宿題、タイマー/アラーム、家電操作、自宅内での家族との連絡、オーディオブックといった順。
ゲームや宿題といった子どもならではの使い方はあるものの、子どもも大人と同様に、日常生活のあらゆる場面でスマートスピーカーを利用している実態がうかがえる調査結果だ。近い将来、「スマートスピーカー世代」と呼ばれる若者が登場してくるのかもしれない。
(このコラムは「JBpress」2018年7月24日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)