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刑務所環境を「人権侵害」。ノルウェーテロ連続犯の主張を裁判所が第二審で却下「いまだに危険人物」

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
処遇改善を求める裁判所でナチス式敬礼をするブレイビク大量殺人犯(写真:ロイター/アフロ)

「ブレイビクは、未だに自身の極右思想、政治的な宇宙観にとらわれており、暴力行為に及ぶ高い危険性がある」。

アンネシュ・ブレイビク受刑者(37)の「独房環境が厳しすぎる」とする訴えを、第二審で裁判所は全て退けた。

連続テロ事件で77人を殺害した同受刑者は、刑務所での処遇に満足できず、人権侵害として国を訴えていた。

昨年の4月、オスロ地方裁判所は、この訴えを一部認める判決を言い渡した。

ノルウェーの刑務所環境は、世界的な基準と比較すると、「快適すぎる」と驚かれやすい。その独房環境を人権侵害と認めた裁判所の判決は、当時国内外で驚きをもって報道された。

裁判に負けたノルウェー政府と、訴えの一部しか認められなかった同受刑者の両者は、控訴。

今年1月10日に審理が開始され、現地の報道局は、第二審の6日間の様子をネット上でほぼ全て生放送で伝えていた。

3月1日、控訴裁判所は、受刑者の全ての訴えを退け、政府側が逆転勝利した。

いまだに極右思想を他者に広める可能性がある危険人物

裁判所は、現在の処遇は安全面のためには必要なものであり、同受刑者はいまだに極右思想を他者に広める可能性があると判断。

政府の弁護士は、「ブレイビクはいまだに危険人物である」ことを強調し、独房環境が厳しすぎるこはないと主張していた。

一方、受刑者は、独房環境が厳しすぎることが原因で、「自分はさらに過激な思想をもつようになった」と裁判所で話していた。だが、控訴裁判所は、厳しい長期的な独房環境にも関わらず、「受刑者の精神状態は、むしろほとんど変わらず、安定している」と結論付けた。

受刑者は、欧州人権条約の第三条(拷問の禁止)と第八条(私生活及び家庭生活の尊重についての権利)が破られたと主張しており、第一審では第三条のみ認められていた。第二審では、第三条と第八条は両方とも破られていないと判断され、受刑者は全面敗訴した。

ブレイビク受刑者と弁護士は、今回の決定を不服とし、上告する構えをみせている。

裁判所による判決書(55ページ、ノルウェー語)

ノルウェー国営放送局NRK記事

ロイター「Mass killer Breivik loses human rights case against Norway」

過去記事「ノルウェー連続テロ犯 刑務所内での隔離収監を人権侵害と訴え、裁判所が認める」

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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