スマートフォンとガラケー、非所有者はどのような思いをいだいているのかをさぐる
スマートフォン非利用者で「今後もいらない」は1割強
携帯電話のトレンドは従来型携帯電話(ガラケー)からスマートフォンにシフトしつつあるが、一方で従来型携帯電話を利用し続ける・新たに求める人も少なくない。現在持っていない人たちの今後の所有願望はどのような実情だろうか。総務省が2018年7月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「平成29年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に確認する。
次に示すのは回答者自身のスマートフォンに関する利用状況。世帯ベースでの所有状況では無いことに注意。利用している、非利用ならば将来取得したい(=利用したい)か、あるいはいらないか。なお機種に関する回答票の説明は「スマートフォン(iPhone、アンドロイド端末など)」となっている。
全体利用率は80.4%と8割強。男女別ではほぼ同率で、年齢階層別では10代ですでに8割超、20代では96.8%とほぼ全員の状態。30代-40代でも9割強、50代でもほぼ3/4。60代でも4割を超えている。
就業形態別ではフルタイムが8割超、パート・アルバイトが8割近く、専業主婦(夫)が2/3強。金銭的負担、さらには必要度合いが所有率の違いに表れているのだろう(学生・生徒が9割に近いのに対し、無職が4割強なのもその裏付けとなる。ただし無職の場合、定年退職後の高齢者も多分に含まれている)。
世帯年収別ではほぼきれいな形で高年収世帯ほど高利用率を示している。これもまた、毎月の通信料負担が大きな所有の要素となっていることがうかがえる。ただし400万円以上はほぼ横ばいとなるのも興味深い。
現在スマートフォンを利用していない人の利用(≒所有)願望度合だが、全体ではほぼ半々で不必要との意見の方が多い。一方で年齢階層別では、若年層は欲しい人が多数に上るのに対し、高齢層では必要ないとの判断を下している人の割合が増えてくる。特に60代では全体の1/3超が「スマートフォンは現在持っていないし、今後もいらない」としている。
年齢階層別のスマートフォン忌避傾向に似たような動きを示しているのが、世帯年収別の差異。おおよそ低年収ほど非保有率が高いが、加えて非保有者内における「いらない」派の割合も大きい。自分の環境から鑑み、コストパフォーマンスの観点で割りに合わないとの判断が下されているのだろう。
従来型携帯電話はどうだろうか
続いて従来型携帯電話。いわゆるケータイ、ガラケー、フィーチャーフォン。回答票には「携帯電話(スマートフォンを除く。PHSを含む)」とあり、厳密にはPHSを含んでいる。また、スマートフォンとは別途の選択となっており、例えば従来型携帯電話とスマートフォンの双方を所有している場合は、それぞれで「利用している」と回答していることになる。
全体で利用率は25.2%。10代でも7.9%が利用しているが、これは防犯用・保護者との連絡専用電話として子供向け携帯電話を与えられている事例があるため。以後、歳とともに漸増していくが、50代で急上昇し、60代では実に半数以上の利用率を見せる。また専業主婦(夫)や無職で高い値が出ているのは、この属性に属する人が多分に歳を召していることを想像させる。
世帯年収別、都市規模別の差はあまり無し。強いて言えば低年収ほど所有率が高め。これも高齢層の割合の高さ、そして通信料の負担を考慮し、スマートフォンを所有できない人がいるからだろう。
他方非保有者の動向だが、多分に「いらない」とする意見で占められている。現在従来型携帯電話を利用していない人は、その多分がスマートフォンを利用しており、わざわざ再度従来型携帯電話に戻る意向を持つ人はあまりいないことになる。一時期はいわゆる「ガラホ」が従来型携帯電話の底上げをするとも思われたが、昨今ではむしろ格安スマホが伸長しており、さらにスマートフォンの利用率拡大は(特にコスト面で気にしていた属性で)進み、それとともに従来型携帯電話への需要は縮小していきそうだ。
スマートフォンの高齢層への普及に関して多様な意見や推測があるが、今回の調査結果動向を見るに、60代に限ると現在持っていない人で今後欲しい人は全体比で4割足らず(≒現在の従来型携帯電話で満足)との状況が見受けられる。
4割足らずでしかないのか、4割足らずも可能性があるのかと見るのかはケースバイケースだが、若年層のように「持っていない人の多数がスマートフォンを欲しいと思っている」わけではないことを、改めて認識すべきだろう。
■関連記事:
携帯電話・PHSなど合わせて181.7%の普及率…総務省による携帯電話の最新普及実態をさぐる
※平成29年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
2017年11月11日から17日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケートと日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。グラフ・本文中の表記の「10代」は、厳密には13~19歳を意味する。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。