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チャイルドシート衝突実験の衝撃 〜映像で見る防寒着着用状態でのチャイルドシート着座の危険〜

山中龍宏小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長
Safe Kids Worldwideより

 2019年12月17日、Yahoo!ニュースに「車内もまだ寒いから…幼児を厚着のままチャイルドシートに乗せると危険な訳とは」と題する記事が掲載された。書かれたのは加藤 久美子さんという車の専門家である。

 言われてみれば確かにそのとおりである。チャイルドシート使用率調査は警察とJ A Fによって毎年行われているが、その調査は春から初夏にかけて行われるので、防寒着について考慮されていなかったのではないかと思い、その旨をオーサーコメントとして書かせていただいた。

 このオーサーコメントにも書いたが、アメリカNBC局ではダミー人形に防寒着を着せたままチャイルドシートに座らせた状態で車を衝突させる実験を行っており、その様子を報道番組の中で紹介している。大変わかりやすい実験映像だったので、ご紹介したい。

※NBC NEWS 2019年11月16日放送

 番組のキャスターが、自身の3歳になる子どもとともに登場し、いつものように子どもにダウンコートを着せたまま、チャイルドシートに座らせる。ハーネスとコートを着た子どもの身体に隙間ができないよう、しっかり留めている。それを見ていたアドバイザーが、「お子さんを一旦降ろし、コートを脱がせてもう一度チャイルドシートに座らせてみてください」と言う。キャスターが子どものコートを脱がせてチャイルドシートに座らせてみると、コートの厚みの分ハーネスは緩くなっていて、子どもの身体を拘束する役目を果たしていない。

 続いて、実験の様子が紹介される。ダミー人形にダウンコートを着せ、チャイルドシートに座らせてハーネスを緩みのないようしっかり締める。その状態で実験用の車両を時速約50kmで走らせ、前方に衝突するとどうなるか、という実験である。

 ご覧のとおり、衝突の衝撃により、子どもの身体は前方に投げ出されてしまう。2回目の実験ではコートが脱げてしまっている。

 この「防寒着問題」については、NHTSA(アメリカ運輸省道路交通安全局)や、AAP(アメリカ小児科学会)も警鐘を鳴らしている。

NHTSA "Keep Your Little Ones Warm and Safe in Their Car Seats"

AAP "Buckle, don’t bundle children in car seats this winter"

 いずれも、厚手の防寒着を着せたままだとチャイルドシート本来の機能が発揮されず、衝突時に子どもが投げ出される可能性がある、防寒着を脱がせてチャイルドシートに座らせ、子どもの身体にぴったり沿うようにハーネスを締め、その上から防寒着やブランケットを掛けるよう呼びかけている。

 前述のとおり、日本では毎年警察とJ A Fがチャイルドシート使用率の調査を行っている。大変有用な調査であるが、一度冬場にも調査を行ってみてはいかがだろう。防寒着を着せたままチャイルドシートに座らせている割合を調べ、さらにNBCが実施したような実験を行って、それがいかに危険かを周知していただきたい。

 まずはこの記事を読まれた方に、お子さんをチャイルドシートに座らせる際には、コートなどの防寒着を脱がせてから座らせていただくようお願いしたい。せっかくきちんとチャイルドシートに座らせていたのに、コートを着せていたばかりにけがをすることのないよう、ぜひ実践していただきたいと考えている。

小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員、日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会委員。

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