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10年後、中国の若い男性は結婚できなくなる!? ようやく廃止になった「一人っ子政策」の功罪

中島恵ジャーナリスト
高校のクラスを見ても、女子より男子のほうが多く感じる

10月末、中国政府は36年近く続けてきた「一人っ子政策」を廃止すると発表した。中国ではそれまで子どもを2人以上もうけることは原則禁止。2人以上産む場合は罰金を支払う必要があったが、今後は2人産んでもよいという政府の“お墨つき”を得られることになった。

晴れて2人の子どもを持てるようになったことは、傍から見れば「よいこと」のように見えるが、中国人の20代の知り合いに聞いてみると「別に…」「あまり興味がないね」「お金がないから2人も要らないよ」というつれない返事。物価が上昇し住宅ローンなどがのしかかる厳しい生活環境では、「経済的な理由で2人も子どもを持つ余裕がない」「個人的な問題だから、政策を変えたといわれても、自分たちの生活には関係ない」ということのようだ。

一人っ子政策廃止の背景には、急激な人口減少と経済減速がある。中国の人口は約13億7000万人。一人っ子政策の結果、87年をピークに新生児の出生数は落ち始めた。爆発的な人口増加に悩んでいた中国政府にとっては功を奏した形で、人口減を見事に実現できたのだ。

しかし、その効果が出すぎたというべきか、12年の統計では全国の出生率は1・18にまで下降。日本の1・39をも下回る結果となった。平均寿命も延びたため、人口に占める高齢人口も11年に9・1%となった。人口減は実現できたものの、長期的視野に立って途中で政策を中止しなかったために、人口があまりにも減りすぎてしまったのだ。生産年齢人口(15~59歳)が減り、とくに若者の数が極端に少なくなったのである。

男子余りの現状は、もはや止められない……

問題はそれだけではない。中国では伝統的に男子を優先する社会だ。そこで、一人っ子政策の間、農村部などでは女の子が生まれると戸籍に入れず、こっそり男子が生まれるまで出産し続けるなどの問題が起きていた。都市部でも、罰金を払えば2人目を産むこともできたため、男子を優先するケースが目立った。その結果、2014年には、女子100人に対し、男子115・9人というアンバランスな男女比となってしまったのだ。

つまり、男子余りの現象が顕在化してしまったのである。

農村部などでは「村の10~20代の人口の7~8割が男子」という声さえあり、実態は数字以上に深刻度を増しているといえる。

都市部では若い男女を集めた会費制の「お見合いパーティー」がさかんに行われているが、そこでも参加する男子のほうが数が多いため、男子は自分を売り込むために女子に猛アピールするなど必死だと聞く。ただでさえ、中国では結婚の際、男性がマンションを買わないと結婚できないなど負担が多いが、ますます男性のプレッシャーは大きくなる。

中国には「後継ぎがいないのは最大の親不孝」ということわざがあり、「後継ぎ=男子」という概念が頭にこびりついている人が多い。だが、それはそもそも、2人以上のきょうだいがいることが前提だった。

一人っ子政策を実施したときにはここまでアンバランスな男女比になるとは政府の誰も予測していなかったかもしれないが、この先はどうなるだろう。20代以下の中国人男子には苦難が待ち構えているといわざるを得ない。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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