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昨季全日本選手権2位の島田高志郎 新たな表現に挑戦、偉大なスケーターと共演する幸せなオフシーズン

沢田聡子ライター
(写真:松尾/アフロスポーツ)

昨季の全日本選手権で2位に入り、四大陸選手権にも出場、貴重な経験を積んだ島田高志郎。充実したシーズンを終えて迎えたこのオフも、さまざまなアイスショーに出演してきた。

6月末の『ドリーム・オン・アイス』初日公演では、『Danse Macabre Op.40(死の舞踏)』を使った新しいフリー(コーチであるステファン・ランビエールの振付)を披露した。少し不気味な曲調に乗りシリアスな表情で滑るこのフリーは、明るい笑顔で演技する今までの島田の印象を覆すものだ。

また8月の『ワンピース・オン・アイス』では、麦わらの一味のサンジを演じている。身長176センチの島田はスタイルが抜群に良く、アニメの中から抜け出してきたようなビジュアルが圧倒的だった。ミックスゾーンでもいつも笑顔を絶やさず礼儀正しい受け答えをする島田だが、口が悪くニヒルなサンジになり切り、クールな雰囲気を漂わせる好演をみせている。

そして8月末には、荒川静香が座長を務める『フレンズ オン アイス』にも初めての出演を果たしている。公開リハーサルでは、昨季から滑っているショート『Sing,Sing,Sing』(ジェフリー・バトル振付)を滑った。

「今回ゲネ(プロ)ではショートプログラムをやらせていただいたんですけれども、声出しもOKになったので、まずは自分が踊り狂って、体が勝手に動いてしまうような、それこそ声援を送っていただけるような…ショーの序盤に出てくるので、しっかり盛り上げ役として頑張っていきたいなと思っています」

リハーサル後にそう語った通りの熱演に観客は大いに沸き、スタンディングオベーションも起こっていた。

「このフレンズオンアイスに出演させていただくことが、本当に嬉しくて。荒川さんをはじめとする偉大な、本当に偉大なスケーターの方々と一緒に時間を過ごしていることが、本当に幸せです」

リハーサルを終えて囲み取材に応じた島田は、嬉しくて仕方ないという風情だ。島田にオファーを出した理由、魅力や引き出したい部分を問われた荒川は、次のように語っている。

「以前(島田と)対談をさせていただいたことがありまして、表現をすることにすごくこだわりや情熱がある方で。振付をするのも好きで、踊る・表現をすることも好きというその情熱がとにかく響いて『もっとショーで島田くんを観たいな』という気持ちがすごく湧いたというのが、オファーに至った経緯でした。このショーを客観的に観ることによって、自分の中にも新しい引き出し、『こんなものがほしい』という機会にもなればいいな、ということがあったので。このショーを通じて楽しんでいただく、そしてパフォーマンスしていただく、そしてまたここから何か自分の次につながるものを見つけていけたらいいなという願いがあります」

向上心に富む島田に接して、荒川も機会を提供したいという思いを抱いたのだろう。2006年トリノ五輪金メダリストの言葉に、島田は「ありがとうございます、頑張ります」と答え、荒川も「頑張ってください」と応じている。後輩の成長を望む荒川の思い、そして素直な島田のキャラクターがにじみ出るやりとりだった。

『フレンズ オン アイス』の見どころの一つは、高橋大輔、ランビエール、村元哉中、アンドリュー・ポジェの4人で滑る『ポエタ』だ。島田は、師であるランビエールの代表作でもある『ポエタ』を観た感動を口にしている。

「今日は『ポエタ』を実際に拝見させていただいたんですけれども、『本当にこの場にいられるだけで幸せだ』って思うくらい、鳥肌がずっと立ちっぱなしで。オープニングや特別なグループナンバーも一緒に滑らせていただいて、幸せのパワーを自分の演技にもグループナンバーにもすべて注いで、滑りたいなと思っております」

「自分の個人のプログラムに関しましては、自分の目指す表現やプログラムをより理想に近づけるために、日々情熱を注いで表現したい」と語った島田。価値ある経験を積んだオフを経て迎えるシーズンで、さらなる飛躍を目指す。

ライター

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(フィギュアスケート、アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。2022年北京五輪を現地取材。

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