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18才、久保建英は日本代表で活躍できるのか?

小宮良之スポーツライター・小説家
17才で日本代表に初招集された久保建英(写真:築田純/アフロスポーツ)

 18才になる久保建英(FC東京)は、日本代表で活躍できるのか?

 ロシアワールドカップ後、まるでそれが合図だったかのように、世界各国で若手が台頭している。ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ(ブラジル)、ジョアン・フェリックス(ポルトガル)、マタイス・デリフト(オランダ)、ジェイドン・サンチョ(イングランド)、モイゼ・キーン(イタリア)、アンデル・バレネチェア(スペイン)など、十代のルーキーたちが次々に躍動。韓国でも、バレンシアに所属するドリブラー、イ・カンインが18才で代表デビューを飾っている。

 そして17才で代表に選ばれた久保も、時代の寵児と言えるだろう。彼がどんな進化を遂げるのか――。それは未知数と言える。

 しかしそれ故、サッカーファンは彼に"何か"を期待するのだ。

もはや、久保くん、ではない

 久保が代表で活躍する条件は、選ばれた時点ですでに揃っている。

「年齢とは関係ない。チームの中で存在感のあるプレーを発揮し、結果につながっている」

 森保一監督は、久保を招集した理由をそう明かした。

 リーグ戦で首位を走る東京において、久保は堂々とチームを牽引している。サイドで定位置を確保しただけではない。主力として、試合を決める仕事をしているのだ。

「今や、チームになくてはならない」

 チームメイトたちが口々に洩らす。勝負の命運を託す存在だ。

 久保に関しては、1年前から代表待望論は出ていた。しかし、それは実を伴っていなかった。1年前の久保は「期待のルーキー」ではあっても、プロで戦えるレベルには達していなかったのだ。

 昨シーズンまでも、技術の高さと天運の強さは存分に見せつけていた。例えば横浜移籍直後の試合に先発し、その試合でゴールを決める。それはスター性と書き換えられた。しかし実際、90分間では流れからほとんど消えていた。高い強度の中でのプレーがうまくいかず、脆弱さの方が目立った。

「違う人みたい。久保くん、ではなくて、久保建英、になった」

 今シーズン、そう語るJリーガーは一人ではない。たった1年足らずで、久保は大人の選手に成熟したのだ。

なぜ殻を破れたのか

 では、なぜ久保は殻を破ることができたのか?

「横浜F・マリノスへの移籍で、精神的にタフになった」

「オフに肉体改造をした」

「天才の才能が自然と開花」

 久保の劇的な成長に関しては、様々な見方がある。どれも当たっているし、正解は一つではない。おそらく、すべてが少しづつ理由なのだろう。

 断言できるのは、変わった、という点だけだ。

 最大の変化は、守備に顕著に見られる。高い強度でプレスをかけ、前線から守備のスイッチを入れられるようになった。押し込まれたときにはリトリートし、攻め口をフタ。侵入を阻みながら、同時にパスカットも狙う。適切なポジショニングと身体的な反応が出るようになった。意識と肉体の変化と言えるだろう。

 守備が安定したことによって、持ち前の攻撃の鋭さが増しているのだ。

久保のパーソナリティ

「建英は(トップチーム合流初日から)ロッカールームで堂々としていました。いきなり、大声で歌を歌いながら入ってきたり・・・。新人選手、という感じはまったくしなかったですね。周りに流されず、自分の意見を持っています。なのに、子供っぽい、と言うところもあるというか、かわいげもあって憎めない」

 東京のある選手は、久保の人間性についてそう洩らしている。

 今シーズン、ジュビロ磐田戦でお笑い芸人がゲストに来ていたときだった。ゴール後のパフォーマンスとして芸人のポーズをやってみては、広報からそう勧められたという。そして17才は、見事にやってのけた。

「広報の株も上がりますね」

 試合後、久保は不敵にそう言い放った。17才で、終了間際に決めた劇的なゴールにもかかわらず、そこまでの余裕があったのだ。人間性というのか。

 末恐ろしい。

バルサの関係者が語ったトップで活躍する選手の条件

 かつてバルサの育成関係者は、トップで活躍する選手の条件を述べていた。

「厳しい舞台に立って、実戦を経験し、そこで揉まれながらプレーに適応できるか。才能は常に変化するもの。成長しなければならない」

 かのリオネル・メッシも、16才のときに大人たちの厳しいタックルを受け、最初は面食らいつつも、すぐに回避し、手玉に取るようになっていった。実戦の中で技量を高めたのだ。

「自分がどのレベルにあるのか、見極めたい」

 久保自身、今回の代表招集で心境を語っている。

 森保JAPANでは、右サイドの左利きアタッカー、堂安律(フローニンヘン)とポジションを争うことになるだろうか。コンビネーションを使い、能動的に攻めるチーム戦術だけに、それほど戸惑いはないだろう。久保はゴール前に仕掛け、決定的な仕事ができるだけでなく、中盤でプレーメイクにも関われる。大迫勇也、中島翔哉らとプレーすることで、化学変化を起こせるはずだ。

 今回の代表招集は、18才の久保にとって未来への橋頭堡となる。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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