SUPER GT、勢力図均衡のGT500が面白い!ホンダ、日産が勝利し、鈴鹿でレクサス逆襲なるか?
2018年シーズンの「SUPER GT」は早くも2レースを終え、ゴールデンウィークの富士開催から2週間のインターバルで第3戦・鈴鹿(5/20決勝)を迎える。GT500クラスでは、開幕戦の岡山で「#17 KEIHIN NSX-GT」(ホンダNSX)がポールポジションから優勝。第2戦・富士で「#23 MOTUL AUTECH GT-R」(ニッサンGT-R)がピット作業の早さで首位を奪って優勝した。今季のGT500クラスは3メーカーの実力が接近し、本当に予測不能な展開となっている。
第3戦・鈴鹿は8年ぶりの300kmレース
5月19日(土)、20日(日)に鈴鹿サーキット(三重県)で開催される第3戦は久しぶりにレース距離が300kmのフォーマットになる。これは近年恒例となっていた「鈴鹿1000kmレース」がFIA GT3の「SUZUKA 10H」にリニューアルされ、SUPER GTでの開催レースではなくなったためだ。かつては春と夏に年2回開催されていた鈴鹿だが、300kmのレース距離での開催は2010年以来実に8年ぶりとなる。
レース距離は短くなるが、過去の鈴鹿での300kmレースを振り返ってみると、そのレース展開はドラマに満ちており、最後の開催となった2010年ではKONDO RACINGのニッサン・GT-Rがタイヤ無交換作戦で大逆転の優勝を飾るなど面白い展開のレースも多い。ただ、8年前と今ではGT500のマシン規定や性能調整のさじ加減が異なり、ラップタイムも10秒ほど速い。また、共にレースをするGT300クラスのラップタイムもドライバーのレベルも格段に向上しているので、GT500クラス、GT300クラス共にかつての300kmレースよりもさらに「スプリント色」の濃いレースになりそうだ。
富士でのタイム差は全車が約1秒!
レクサスLC500が6台、ホンダNSX-GTが5台、ニッサンGT-Rが4台の合計15台が争うGT500クラス。新規定にドンピシャでマッチさせてきたレクサス勢が速さを見せた2017年シーズンからは大きく様相が変わり、今季は開幕前のテストから3メーカーの実力伯仲状態に変貌。第2戦・富士の予選ではポールポジションの「#38 ZENT CERUMO LC500」から15位の「#24 フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」までのタイム差が僅か1秒074差という、前代未聞の僅差に。あまりにコンペティティブすぎるGT500クラスで頭一つ抜きんでることは非常に難しい。
これだけ実力が接近すると、レースの獲得ポイントに応じて積まれていくウェイトハンデをどう克服していくかが重要な鍵となる。2016年にはニッサンGT-R(MOTUL AUTECH GT-R)が岡山、富士と開幕2連勝を飾った例が記憶に新しいが、第2戦・富士の予選でウェイトを積んだ開幕戦の上位勢が苦しんだ部分からもウェイトハンデの足かせは例年以上に大きい。
第3戦・鈴鹿で最大ウェイトを積むのは第2戦のウイナー「#23 MOTUL AUTECH GT-R」(松田次生/ロニー・クインタレッリ)の52kg、次いで重いのが開幕戦ウイナーの「#17 KEIHIN NSX-GT」(塚越広大/小暮卓史)の42kg。しかし、「#23 MOTUL AUTECH GT-R」は50kgを超えているため、35kgのウェイトに加えて燃料リストリクターが絞られることになり、パワーダウンを余儀無くされる。1000kmレースの場合は耐え抜けばポイント獲得のチャンスどころか上位入賞も充分狙えたが、スプリント色の濃い今年はそういった展開は難しい。
逆にハンデウェイトが軽く、20kg未満のチームにとっては今回の鈴鹿は予選で前に付けて逃げ切る大きなチャンスが待っており、各メーカーにとってもこれらのチームがいかに上位を走れるかがシーズンを考えても重要なファクターになるだろう。
ちなみに4月に開催された事前の鈴鹿合同テストではランキング3位で34kgのウェイトを積む「#100 RAYBRIG NSX-GT」(山本尚貴/ジェンソン・バトン)。1分45秒787というコースレコードを1秒以上削るタイムをマークしていた。これがどれだけのウェイトハンデを想定してのものかは定かではないが、事前テストではホンダ勢が素晴らしいコーナリングを見せていたこともあり、富士での不振を払拭できるか注目される。
レクサスの逆襲はあるか?
岡山、富士とライバルに勝利を奪われたレクサス勢にとって、鈴鹿は是が非でも勝ちたいレースになるだろう。レクサス最上位は第2戦・富士で代役参戦の坪井翔が好走して2位表彰台を獲得した「#39 DENSO KOBELCO SARD LC500」(ヘイキ・コバライネン/小林可夢偉)のランキング4位。次いで5位に昨年のチャンピオン「#1 Keeper TOM’S LC500」(平川亮/ニック・キャシディ)、6位に「#38 ZENT CERUMO LC500」(立川祐路/石浦宏明)。このレクサスLC500の3チームが獲得ポイント15点のウェイトハンデ30kgで綺麗に並んでいる。この中でどのチームが鈴鹿の予選から主導権を握るかが、レクサス逆襲ストーリーの鍵となる。
鈴鹿を伝統的に得意とするのが最多ポールポジション記録を23回に伸ばした立川祐路率いる「#38 ZENT CERUMO LC500」だ。「#1 Keeper TOM’S LC500」と「#36 au TOM’S LC500」(中嶋一貴/関口雄飛)の2台体制を敷くTOM’Sも鈴鹿に強いチームであるし、坪井の好走でマシンの改善が見えてきた「#39 DENSO KOBELCO SARD LC500」(ヘイキ・コバライネン/小林可夢偉)は地元レースとも言える鈴鹿で負けられない闘いだ。ウェイトハンデが28kgと近い「#6 WAKO’S 4CR LC500」(大嶋和也/フェリックス・ローゼンクビスト)を含めてウェイトを積んだレクサス勢が全体的に上位に食い込めるか。シリーズの流れを考えればレクサスのエンジニアリング的な戦略は鈴鹿で重要なポイント。天候を含めた不確定な要素が多くなる第4戦・タイを前にまず1勝したいはずだ。
スプリントレース色が強くなるが、これまで以上にスリリングなバトルと駆け引きが展開されるであろう鈴鹿。ニッサン勢は「#23 MOTUL AUTECH GT-R」を除いた3台はウェイトが軽く優勝に近い条件が揃っているし、テストで速さを見せたのはホンダ勢と、コンペティティブな状況が続く今季のGT500。国内最高峰のドライバーとチームが見せるプロの技に是非とも注目したい。