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生成AIによる「整形文」の功罪 ~ChatGPTで文章を整形するメリット・デメリット~

横山信弘経営コラムニスト
「うわ……。文章が変わってる」(提供:イメージマート)

「うわ……。顔が変わってる」

久しぶりに会った、同僚の顔が変わっていた。鼻の形やサイズ、顎の角度を変えたと言う。ずいぶんと印象が違って見えた。

「変?」

「いや、いいんじゃないかな……」

初見の人は、何の問題もないだろう。しかし、たとえば長年一緒に働いてきた同僚や、お客様ならどうだろうか? 

眉を細くしても、髪の色を明るくしても許容する人は多い。しかし、整形には強く抵抗を覚える人がいる。

整形が、良いとか悪いとかではない。

印象を形成する要因は、個人の経験や社会的背景も強くかかわる。なので、整形に対する社会的な受容度がまだ低い日本では、違和感を覚える人が多いのは仕方がないのかもしれない。

いっぽう、文章はどうだろうか。文章を読みやすくするため、いい印象を与えるために「お化粧する」ことはいい。だが、整形するのはどうか?

ChatGPTなど生成AIの登場によって、整形された文章――「整形文」が世の中に氾濫しはじめた。はじめて見る人ならともかく、いつも顔を合わせている人(その人の文章に触れている人)なら、ギョッとするかもしれない。

「うわ……。文章が変わってる」

メールやチャットでわかりやすい文章が送られてくるのは、むしろ歓迎すべきことだ。悪くはない。悪くはないが、違和感を覚える人も決して少なくないはずだ。

そして、その違和感が、たとえばお客様に対して信頼を損なうことに発展しないか。考えてみたい。

■お客様が感じる「整形文」の違和感

たとえば、ある住宅メーカーの営業が、いつも以下のようなメールをお客様に送っていたとしよう。営業歴2年の27歳が書いたメールとしたい。

「当社の戸建て住宅は、天気がいい時などは特に快適な環境を提供しております。居住者の人がお互いにすごく交流を深めることができる、まるでスターバックスのようなオシャレなリビングルームなどもあります。

それに、充実した設備とともに、キッチンも調理しやすく機能的な設計となっております。肉じゃがを作っても、パスタを作っても楽しいし、機能的なので料理もすぐにできあがります。洗面所やバスルームも驚くほど広いですし、お風呂に入るとすごく心身ともにリラックスできるよう、高温のお湯なんかもご用意しております。

住宅の外観も美しいです。周辺地域の人たちからも、こんな素晴らしい環境はない!と高評価をいただいております。是非とも一度ご覧いただき、ご検討いただきたいです。ぜひ、お願いします!」

がんばって書いた跡がわかる文章だ。拙い言い回しもあるが、自分なりの表現を使い、商品の良さを何とか伝えたいという気持ちが、文章から感じとれる。

いつもこのような文章を書いていた営業から、突如として、以下のようなメールが送られてきたらどうだろう? 少し長いがざっと読んでもらいたい。

「当社が提供する戸建て住宅は、高品質であり、快適な生活を送ることができます。以下は、当社の素晴らしい住環境が特徴の戸建て住宅を紹介する箇条書きです。

●快適なリビングルーム

・堅牢な断熱材を使用して、心地よい温度を保っています。

・広々とした空間に設置された高性能エアコンで、快適な室温を維持できます。

・床暖房が設置されているため、冷たい床を踏んでいるという不快感はありません。

●機能的なキッチン

・調理スペースが広く、機能的な設備が充実しています。

・最新式の調理器具、ステンレス製のシンク、美しいグラナイト製カウンタートップが揃っています。

・キッチン周りには大型の収納スペースがあり、食器や調理器具を収納するのに十分なスペースが確保されています。

●素晴らしい住環境

・美しい景色と緑豊かな環境に囲まれています。

・広大な敷地内には、自然豊かな公園や遊歩道があり、健康的なライフスタイルをサポートしています。

・住宅周辺には、スーパーマーケットやショッピングモール、レストランなどの施設があり、生活に必要なものはすぐ手に入ります」

無機質な感じがするが、丁寧に書かれた文章だ。細かい情報が抜け漏れなく記述されていて、読み手の満足感は高いだろう。しかし、この文章を書いた人(27歳の営業)のことをよく知っていたら、違和感を覚えないだろうか?

さらに、

「生活に必要なものはすぐ手に入ります、とありますが、具体的には、どのようなものですか?」

と質問すると、

「生活に必要なものとして、以下のようなものが挙げられます。

・食料品や日用品を購入できるスーパーマーケットやコンビニエンスストア

・衣服や家庭用品を購入できるショッピングモールやデパート

・医療施設や薬局

・銀行や郵便局

・飲食店やカフェ

・公園や運動施設

これらの施設が近くにあることで、日々の生活に必要なものを手軽に購入できたり、健康的なライフスタイルを送ることができたりします」

このように、1分も経たずに返信が来たら

「ChatGPT使ってるでしょ!」

と突っ込みたくなるだろう。何となく、自然な感じがしない。不自然さを覚えるからだ。

初見の人なら、

「なんて、スピーディに、正確な情報を、抜け漏れなく提供してくれる営業だろうか!」

と受け止めるかもしれないが。

■「With AI」時代に求められる人間の「素」の部分

お客様をはじめ、人と人とが信頼関係を築くためには、相変わらず人間らしさが重要であり、それどころか今後、ますます重要視されると私は考えている。

なぜなら、多くの人間よりも賢いAIの出現によって、戦略立案、マネジメント、人材育成のあり方など、多くの分野で変化が起こるからだ。

昨年のサッカーワールドカップで採用された「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」がいい例だ。VARは、プレーの戦略性にまで影響を与え、サッカーそのものを変えたと言われている。

文章の整形――「整形文」はVARと同じように、それほど時間がかかることなく社会的に受容されるだろう。顔の整形とは違って。オンライン時代となり、テキストベースのコミュニケーションが急増しているからだ。

以上のことから、ますますビジネスの世界では、非テキスト、ノンバーバルな部分の差別化が重要になってくると思う。

だからこそ人と信頼関係を築くためには、情緒的な面によりいっそうスポットライトを当てたい。不自然ではない、人間の素の部分をより磨いていくべきである。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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