世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が会見:心ない攻撃はやめよう・鋭い追及はしよう
■世界平和統一家庭連合(旧統一教会)会見内容
奈良で発生した安倍元首相銃撃事件。容疑者が供述する「母の破産」と関わっているとされた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が、7月11日、記者会見を開いた。
(世界平和統一家庭連合(旧統一教会)とは、宗教学的には「キリスト教系の新宗教」だが、伝統的キリスト教はキリスト教とは認めていない。)
会見では、次のことが述べられた。
・容疑者の母親が信者なのは事実。1ヶ月に1度ほど行事に参加。
・献金額については、20年前のことであり把握できていない。
・容疑者家庭の破たんは把握。詳細は把握していない。
・団体への恨みから殺害に至るまで距離があって困惑。
・教会に心ない電話、メディアからの心無い取材攻勢を受けている。
・警察の捜査には全面協力。
・報道については正確、公正、客観的、事実に基づいてと要請。
■限られた記者だけによる会見
今回は、「信頼できるメディアに来てもらった」と述べられているように、「5大新聞と、キー局しか会場に入れない」「スポーツ紙や雑誌メディアは排除された」と報道されている。
また質問は、1社1つと制限された。
大手マスコミは、昨日まで「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の名称は出しておらず、名前を出していたメディアが排除されたかと語る人もいると報道されている。
<統一教会の会見で一部報道陣を “通せんぼ” 現場では『名前を出したメディアは排除か』の声>(FLASH:7/11(月) 15:50Y!)
会見に登場した会長は、物腰柔らかく、終始落ち着いて会見を進めていた。さすが宗教家であり、この種の会見のお手本になるような態度だった。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の会見ユーチューブ動画を見た人のコメントには、「この落ち着いた話し方と声、弱ってる時に聞いたら確かにハマりそう」とあるほどだ。
しかし、メディアを制限したということは、厳しい追及をするであろう記者を排除した可能性も否定できないだろう。
江川紹子氏も「統一教会と自民党の関係を書いてきた雑誌やカルト問題を追いかけてきたフリーランスのジャーナリストなどは排除された。」と述べて問題視している(ヤフーオーサーコメント)。
その他、会見場に入ることを受付で断られ、抗議している様子の写真や動画などもネット上で公開されている。
宗教問題に関しては、予備知識がなければ厳しい質問も難しいのだが。
■本日まで名前が伏せられたこと:報道のあり方:二重基準?
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)。昨夜の全国ニュースにおいても「ある宗教団体」と表現され、「明日、記者会見の予定」とまで報道しておきながら、団体名は伏せられていた。スポーツ新聞などを除けば、大手マスコミは、非常に慎重に扱ってたように感じられる。
内容がネガティブなことだけに、容疑者が供述しているからといって安易な報道は差し控えるべきだろう。しかし、これが世界平和統一家庭連合(旧統一教会)以外の団体なら扱いが違うのではないかとも思われる。
事件事故に関して、様々な団体や組織の名称が報道される。たとえば、会社員ではなく○○会社社員。学生ではなく、○○大学学生。あるいは、元の職業や、元の所属団体。その他、事件事故に関連した団体名が登場し、マスコミが殺到することもある。
もしも容疑者が別団体の名前を出していたら、その団体名は報道されていたのではないかとも思われる。そのような二重基準には疑問も感じられる。
報道被害は防がなくてはならない。慎重な報道姿勢は必要だ。しかし、及び腰になってはいけないだろう。団体によって愛度が違ってはいけないだろう。
辛坊治郎氏も、問題を指摘している。
「とある宗教団体」……大手マスコミの“伏せる”報道姿勢に辛坊治郎 が苦言「信用されない」:ニッポン放送7/11Y!
■信教の自由の大切さとマインドコントロール
ヤフーコメントを見ると、信教の自由に制限をかけた方が良いとするコメントも見られるが、信教の自由は大切だ。
私達には、信教の自由が与えられている。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、創立者である韓国の文鮮明氏こそがメシアであるとしているが、誰を救世主と信じても自由だ。どんな集会や活動に参加しても自由だ。
しかし同時に、どんな団体も、欺瞞(人の目をごまかし、だますこと)やマインドコントロールなどは許されない。
一部の問題ある団体のために信教の自由が脅かされてはいけないが、宗教を名乗れば何をしても良いわけではない。
そこから、大きな悲劇が生まれることもあるのだ。
<実は身近な「洗脳」騒動 家族間やブラック企業でも 大事な人を守るポイントは>
■多額の寄付問題
一般に、寄付、献金したものを、後になって返してくれと言われても、返さない(返せない)のは当然だ。
ただし、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の多額献金問題は、これまでも何回も法的に争われ(通称「青春を返せ裁判」)、団体側が負けているケースもある。「日本において、宗教団体による勧誘・教化行為の違法性を認めた全国初の判決となった」とも言われている(ウィキペディア)。
ヤフーコメントを見ると、献金額に制限をかけろといった意見も見られる。
しかし、多額な献金自体が悪いわけではない。そこに、違法な勧誘・教化があったかどうか、違法とは言えなくても道義的問題のあるマインドコントロールなどが行われていなかったか、それが問題である。
ただしそれを実証することは簡単ではないのだが。
■心ない攻撃・鋭い追及
ネガティブな報道がなされれば、世間の目は冷たくなる。「心ない電話」が殺到することもよくあることだ。
しかし、一般的に世間から「カルト宗教」と呼ばれるような団体であっても、末端の信者たちの多くは普通のまじめな人たちだ。また自由な宗教活動を妨害するのも違法だ。
たしかに、問題は指摘されている。
「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は、そのホームページによると、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による「『霊感商法被害の根絶』と『被害者の救済』を目的として1987年5月、全国の約300名の弁護士が賛同して結成された会」であり、毎年の「被害集計」も公開されている。
同会は、安倍晋三元首相に公開抗議文も出している。また昨年度の被害総額は3億3千万円、一昨年は9億1千万円であるとしている。
それでも、だからといって「心ない攻撃」が許されるわけではないだろう。「宗教弾圧」などと非難される行為も慎みたい。
その一方、疑惑を追及してきたメディアには絶好の機会とも言えるだろう。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)も、取材には真摯に応じると会見で述べている。
問題を解決し、より良い社会にしていくためには、人権を守りつつ、鋭い取材と報道を進めていくことが必要だろう。
近年は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題がマスコミで報道されることも少なくなっていた。歌手の桜田淳子さんの入信問題なども、今の学生は全く知らない。だが、様々な問題は指摘され続けている。私たちも関心をもち続けたい。見過ごして、忘れていって良い問題ではない。