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鬼軍曹・永瀬拓矢王座(29)堂々の王座戦3連覇 百折不撓・木村一基九段(48)の挑戦を退ける

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月5日。兵庫県神戸市・ホテルオークラ神戸において第69期王座戦五番勝負第4局▲木村一基九段(48歳)-△永瀬拓矢王座(29歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 9時に始まった対局は20時11分に終局。結果は122手で永瀬王座の勝ちとなりました。

 永瀬王座はシリーズを3勝1敗で制し、王座戦3連覇を達成しました。

「中年の星」として、多くのファンの声援を背にタイトル戦の大舞台に戻ってきた木村九段。残念ながら今期は敗退となりました。

永瀬王座、「負けない将棋」で堂々の勝利

 木村九段先手で、戦型は相掛かり。両者ともに経験のある、現代最新形を踏まえての進行となりました。

 戦いが始まったあと、木村九段は持駒にした飛車を永瀬陣に打ち込みます。対して永瀬王座はすぐに自陣に角を打ちました。

 1枚の飛車を封じ込め、さらに中段のもう1枚の飛車にねらいをつけた攻防手です。

 進んで永瀬王座は自陣に打った角を切って銀と刺し違え、80手目、手にした銀を2枚の飛車取りに自陣に打ちます。

 そこで夕食休憩に入りました。

永瀬「夕休の△8二銀打の局面もどうなっているか。負けであってもおかしくないのかなと思いました」

 永瀬王座は必ずしも自信が持てなかったようですが、形勢は永瀬王座よしではっきりしてきたようです。

 再開後の81手目。木村九段は▲4一角と、タダで取られるところに王手で角を打ち込みます。第1局では乾坤一擲の角打ちから逆転勝利を呼び寄せた木村九段。本局も勝負と迫ります。

 対して永瀬王座の対応は正確そのもの。慎重に時間を使いながら、玉を4二、3三と安全な方へ逃し、最後は自玉の周りを鉄壁にしました。

 122手目。永瀬王座は金を寄せて相手の馬に当てます。攻防ともに見込みなしと見た木村九段は、そこで投了しました。

 かくして本シリーズは幕を閉じることとなりました。しかし両者の対戦はこれからもまだ続くことでしょう。通算成績は木村4勝、永瀬6勝となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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