滋賀から3校! センバツ出場校決まる
選考結果の発表は21世紀枠から始まる。一般枠発表30分前のリリースに、記者席には緊張が走った。
衝撃的だった21世紀枠発表
「由利工・伊万里・膳所」
昨秋の近畿大会の結果と試合内容から、近江、彦根東の2校が有力視され、滋賀勢初のセンバツアベック出場が濃厚だったためだ。「滋賀からの3校はありえない」。一昨年、同じような状況が兵庫であった。21世紀枠と合わせ3校出場の可能性も十分だったが、「同一都道府県一般枠3校なし」ルールに準じた形で(選考会では否定されている)報徳学園が選外になっていたのだ。今回も、膳所が決まった瞬間、「彦根東が割りを食うのか?」とその場にいた誰もが感じた。
滋賀3校のサプライズ 21世紀枠と一般選考は別
インターネット中継が昨年から入ったため、選出校の発表は選考理由より前に、校名を読み上げる形で行われる。「大阪桐蔭、智弁和歌山、乙訓、近江」近畿は予想通りの名が並んだ。「そして5校目は、彦根東高校」近畿地区選考委員長の杉中豊氏の声に、記者席からは安堵のため息が漏れた。滋賀は近畿で唯一、複数出場がない。それが一気に3校同時出場のサプライズとなった。可能性がないわけではないが、過去の経緯を考えると、3校はあり得ないと誰もが思っていたはずだ。センバツの選考というものを深く知れば知るほど、そう考えざるを得ない。したがって、これまでから毎年のように選考会の直後、「21世紀枠が一般枠選考に影響を及ぼしているのでは?」と疑問を呈してきた。それを完全に打ち消す意味で、今回の勇気ある選考(敢えてそう記す)を評価したい。私が滋賀出身だからそのように強調するのではない。16年1月29日の記事を参照していただければ、ご理解いただけると思うが、これが主催者の言う「21世紀枠と一般枠は別もの」の好例として残る。
21世紀枠の選考過程は
さて、今回の選考過程にも触れておく。まず21世紀枠。由利工(秋田)と伊万里(佐賀)が東西の1位になった。由利工は、地域に愛される学校づくりをめざし、野球部がその先頭に立った。以前、「しっかり指導してください」という苦情まで寄せられるほど荒れていた学校は、野球部員たちの挨拶励行やボランティアなどで変わった。21世紀枠特別選考委員からは、「野球部員が学校を元気にしている」という意見が出たという。伊万里はプレゼンテーションで、「5人の女子マネージャーが練習管理をし、秒単位で選手たちを動かしてスピーディーな試合運びにつなげている」と紹介。小学生の野球大会で審判を手伝い、野球人口の底辺拡大にひと役買うなどの地域貢献が評価された。佐賀の「10年センバツなし」も強力に後押しした。最後の1校は残る7校から膳所を選んだ。伝統進学校として全国的にも有名だが、部員以外の生徒がデータ分析をしてチームに提供。打順や守備位置もそれをもとに決め、なんと4番打者が公式戦4試合で7打数無安打ながら9四死球を得て、出塁率は5割を超えるという珍事が紹介された。個人的な感想を述べると、東西1位は私のプレゼン評価でもトップだった。今回は、推薦趣意書を読む限り優劣のつけにくい、いわば横一線で、当日のプレゼンが最大のよりどころになりそうな気がしていた。膳所に関しては、進学校としての実績が抜群で、野球部も戦前から活躍しているところが前出2校との大きな違いで、59年ぶりの出場は今大会出場校で最も長いブランクである。なお、特別選考委員に名を連ねていた同校40年前の夏、甲子園出場時の監督・西岡宏堂氏(日本高野連副会長)は、影響を考慮して欠席したことも念のため付け加えておく。
関東5番手と四国の神宮枠は
選考が難しかったのは関東の5校目だろう。ともに関東大会準々決勝で敗れ、試合内容で甲乙つけ難かった国学院栃木と健大高崎(群馬)の比較になった。3人の投手をうまく継投させ、公式戦7試合で13失点と安定したディフェンス力を評価された国学院栃木が、関東大会で失点の多かった健大を抑えた。東京の2番手・佼成学園との比較でも、やはり投手を中心にしたまとまりが評価された形だ。関東・東京のいわゆる「抱き合わせ枠」はこの7年、枠が交互に移動することになった。明徳義塾(高知)によってもたらされた四国の神宮枠には、同県の高知が入った。四国大会4強の高松商(香川)を、同8強の高知が覆した形だ。これについては、英明(香川)との試合内容で比較し、7-8で1点差負けの高知に対し、高松商は2-12の6回コールド負けを喫したことが響いた。四国大会2勝の高松商にとっては、痛恨のコールド負けだったと言える。
意外な近畿の補欠校
あと興味深かったのは近畿の補欠校に、いずれも近畿大会初戦敗退の明石商(兵庫)と履正社(大阪)が入ったことだ。明石商については、「補欠校に地域性があってもいい」(前出杉中氏)ということで、出場なしの兵庫1位校に配慮したのは理解できるが、履正社は意外だった。「戦力は全国レベル」(杉中氏)という説明に異論はないが、近年の同校には珍しいほど、秋は投手力が弱かった。大阪桐蔭に2度コールド負けしたとは言え、近畿大会1勝で、好左腕・大石晨慈(2年)の近大付(大阪)がもう少し評価されても良かったのではないか。