新入社員が仕事に慣れるため、むりやり肩の力を抜こうとすると「手を抜く」ことになる理由
■ 肩の力の抜き方
何か新しいことをスタートさせたり、関係の浅い人と仕事をしなければならないとき、どうしても肩に力が入ってしまうものです。
とくに新入社員はそうでしょう。
緊張したり、肩の力が入っていると、自分の力が発揮できないものです。ですからリラックスしよう、もっと冷静になろうと自分に問い掛けます。周囲からも「大丈夫」「心配しないで」「もっと肩の力を抜いて」などと言われることでしょう。
とはいえ、なかなか心がけでは肩の力を抜くことはできません。
■ なぜ肩に力が入るのか?
肩に力が入ってしまう理由は、単純です。
慣れないことをするから。それだけです。慣れない作業をさせられている、慣れない人と付き合わなければならないシチュエーションに置かれているから、緊張するし、肩に力が入ります。
表現方法を変えると、「慣れない」ということは「習慣化していない」ということ。
習慣は過去の体験の「インパクト×回数」でできています。この場合、大事なのは「数」です。体験の「数」が足りないから、その物事に「意識」を向けないと、そのことができないのです。この状態を「意識的有能」と呼びます。意識しているときは有能だが、無意識のときは無能であるということです。
車の運転免許を取得したばかりのとき、助手席の人とお喋りしながら運転できるかというと、多くの方はできない。なぜか? 運転に集中しているため、他事に意識を向けられないのです。
しかし「数」を繰り返すことによって意識しなくてもできるようになっていきます。この状態を「無意識的有能」と呼びます。
この状態になることで、無意識のうちにできるようになる、つまり「習慣化」するということです。車の運転でいえば、場数を踏むことで運転に慣れ、同乗者の人とお喋りしたり、音楽を聴きながらでも自然と運転ができるようになるのです。
人の話を聴いている最中にメモをとる行為もそう。メモを取る習慣がないと、人の話に聴き入ってしまい、メモをとることができません。
しかし、メモをとることに意識を向ける必要がないほど「メモ習慣」がつけば、自然と人の話を聴きながら、メモをとることができるようになります。
■「場数」が唯一の解決方法
脳はある物事に焦点を向けると、他のことには焦点を向けられません。これを「脳の焦点化の原則」と呼びます。慣れない作業を同時に2つ以上こなすことができないのは、このせいなのです。
肩の力を抜くためには、「完璧主義者にならないこと」「上手にやろうとしなくてもいいの」「リラックスして。あなたならできる」などと言われても気休めにもなりません。
新入社員のときから、そんな先輩の助言を真に受けると、肩の力が抜ける状態になる前に、「手を抜く」ことを覚えてしまいます。
新入社員なのですから、指示されたことは完璧にやってください。上手にやろうとしてください。どうせ完璧にはできないし、上手にもできないのですから、「完璧にやろうとしない」「上手にやろうとしなくていい」だなんて助言、あり得ません。
解決策は、常に「場数」です。
数をこなすことで「無意識」のうちにできるようになり、緊張感から解放されます。
同時にいろいろなことを習慣化させることは不可能ですので、ひとつひとつの事柄に意識を向け、ひとつひとつを習慣化させていけば、必ず肩の力を抜くことができます。そして本来のポテンシャルを発揮できるようになるのです。
最後に。「肩の力を抜く」ことはできません。自分の意志ではできないのです。正しい表現は「肩の力が抜ける」です。数をこなしているうちに、いつの間にか、無意識のうちに肩の力が抜けて、いろいろな人と関係が構築でき、仕事もうまく進められるようになるのです。