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この「元・首位打者&盗塁王」は地区限定で大人気!? 今年の3球団はすべてナ・リーグ中地区

宇根夏樹ベースボール・ライター
ディー・ストレンジ-ゴードン Mar 9, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今年に入ってから、ディー・ストレンジ-ゴードンは、ナ・リーグ中地区の球団を渡り歩いている。シンシナティ・レッズとミルウォーキー・ブルワーズに続き、今度はシカゴ・カブスとマイナーリーグ契約を交わすようだ。ジ・アスレティックのケン・ローゼンタールが、関係者の話として、5月26日にツイッターで報じた。

 昨シーズン終了後、ストレンジ-ゴードンは、球団オプションだった2021年の年俸1400万ドルをシアトル・マリナーズに破棄され、FAになった。そこからは、2月上旬にレッズとマイナーリーグ契約→開幕直前に解雇→4月上旬にブルワーズとマイナーリーグ契約→5月下旬に解雇。そして、カブスというわけだ。ブルワーズでは、AAAでプレーした。メジャーリーグに昇格はしていない。

 マイアミ・マーリンズ時代の2015年と2017年に、ストレンジ-ゴードンは200本以上のヒットを打ち、2015年は首位打者を獲得した。また、2012~2018年の7シーズン中、30盗塁未満は2013年だけ。2014~15年と17年は55盗塁以上を記録し、いずれも盗塁王のタイトルを手にした。主なポジションは、2013年までが遊撃、2014年からは二塁だ。外野もできる。マリナーズでは、2018年の開幕から5月半ばまで、センターを守っていた(チーム事情により、二塁へ戻った)。年齢は、4月に33歳を迎えたところだ。

 ただ、シーズン本塁打が5本に達したことは一度もなく、10シーズン中9シーズンの四球率は6.5%未満(9.4%の2013年は出場38試合)。出塁率.330以上のシーズンも、2015年(.359)と2017年(.341)しかない。2021年の出塁率は、スプリング・トレーニングのエキシビション・ゲームが.361、AAAは.378だが、12試合と10試合の数値に過ぎない。

 どの球団からもマイナーリーグ契約しか得られないのは、打者としてのストレンジ-ゴードンが理由だと思われる。その一方で、契約する球団が絶えないのは、内外野のセンターラインを守れる点とスピードを評価されているのだろう。外野はセンターだけでなく、レフトの経験もある。

 レッズが開幕前にストレンジ-ゴードンを解雇したのは――開幕ロースターに入れないことが決まり、ストレンジ-ゴードンから解雇を求めたのかもしれないが、どちらでも大差はない――遊撃手が不要になったからだ。レッズはエウヘニオ・スアレスを三塁から遊撃へ再コンバートさせ、実際に遊撃手としてやっていけるのか、スプリング・トレーニングで試していた。ブルワーズがストレンジ-ゴードンを解雇したのは、タンパベイ・レイズから遊撃手のウィリー・アダメスを獲得した翌日だ。

 また、カブスとの契約が報じられたのは、先月、「23歳の内野手が「ベースボールIQ」の高いプレーを披露。将来像はやっぱりあの選手!?」で紹介した、ニコ・ホーナーが故障者リストに入った直後だった。カブスでは、他にも故障者が相次いでいる。

 ストレンジ-ゴードンは、故障者に代わって出場する選手としてカブスに迎えられたわけではない。さらに故障者が出るか、代役がその役割を果たせなかった場合のバックアップだ。カブスでも、まずはAAAでプレーすることになるはず。メジャーリーグに昇格できないまま、またしても解雇される可能性もある。

 なお、3球団ともナ・リーグ中地区というのは、単なる偶然だろう。ストレンジ-ゴードンが、どうしてもこの地区でプレーしたい、他の地区ではプレーしたくないと思っているわけではあるまい。ちなみに、昨シーズンまでに在籍したのは、ロサンゼルス・ドジャースとマーリンズとマリナーズだ。この3球団は、それぞれ、ナ・リーグの西地区と東地区、ア・リーグの西地区。ナ・リーグ中地区の球団はなかった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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