ハンバーガー1個捨てると風呂15杯分を捨てる 飲む水の500倍「食べている」
毎年3月22日は「世界水の日(World Water Day)」。1992年の国連総会で定められ、この日は世界じゅうで「水を大切にする」ためのイベントが開催されている。
飲む水の500倍を「食べている」
水というと、飲み水を思い浮かべると思うが、食料生産にも大量の水が使われている。
世界の環境問題を発信し続けているレスター・ブラウンの著書の邦訳本『カウントダウン 世界の水が消える時代へ』(レスター・ブラウン著、枝廣淳子監訳、海象社)は、食料生産には飲み水の500倍もの水が必要だと指摘している。
ハンバーガー1個捨てるのは浴槽15杯分の水を捨てること
ハンバーガー1個を作るのに必要な水は2,400リットルから3,000リットルに及ぶ。原材料となるパン(小麦)、レタス、トマト、牛肉が生産される過程で使われた水をすべて足すと、それだけ大量の水を使うことになる。
イギリスの科学者スティーブン・エモット氏は、著書『世界がもし100億人になったなら』で「ハンバーガー1個作るのに3,000リットルの水が使われている」と指摘している。
一般家庭の浴槽の標準水量は200〜300リットル。仮に200リットルだとすると、3,000リットルはその15杯分。言い換えると、ハンバーガー1個を捨てると、浴槽15杯分の水を捨てることになるのだ。
日本は800億立方メートルの水(バーチャルウォーター)を輸入
牛肉1kgの肉を生産するには20,000リットルの水が必要だ。この考え方を「仮想水(バーチャルウォーター)」と呼ぶ。食料を輸入する国が、もし仮に自国で生産するとどれくらいの水が必要となるかを計算したものである。ロンドン大学名誉教授のアンソニー・アラン氏が提唱している。
2005年に日本が海外から輸入したバーチャルウォーター量は、800億立方メートルにも及ぶ(東京大学生産技術研究所 沖大幹教授のグループが2000年に算出した量を2005年に更新し、新たな値を加えて、環境省と特別非営利活動法人日本水フォーラムが算出した値)。
食品ロスの背後に膨大な量の水
食品ロスや、廃棄される食品は、金額換算で示されることがある。たとえば2020年9月に公正取引委員会が発表した、コンビニ1店舗あたりの年間平均食料廃棄金額は468万円だ。これは食品そのものの「売価」の合計金額である。が、その裏には、食料生産で使われた、飲む水の500倍量に相当する、貴重な水がある。
食料は、その資源や水、多くの人の労働力の結集でもある。
ハンバーガーそのものに水は見えなくても、風呂15杯分の水が使われているということ。
子どもたちが(もちろん、大人も)身近な食べ物から環境問題を学ぶ機会があるようにと願っている。
参考資料
『カウントダウン 世界の水が消える時代へ』レスター・ブラウン著、枝廣淳子監訳、海象社
『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』井出留美著、幻冬舎新書