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映画「ガレキとラジオ」ヤラセ問題について考える

篠田博之月刊『創』編集長

朝日新聞が3月5日に告発した映画「ガレキとラジオ」ヤラセ問題は、同紙がフォロー記事まで出し、製作側が謝罪したことで一件落着と思われたが、ここに来て急展開を迎えている。朝日が告発に際して依拠したのは「仮設住宅に暮らす70代の女性」の証言で、その当人が「制作者の求めに応じて演技をしてしまったことに罪悪感を抱き、苦しんでいる」と報じられたので、これはもう弁明の余地もないと思われたのだが、その後、その女性が4月3日に弁護士を通じて、朝日の記事こそ「事実に基づかないねつ造記事」だと告発した。朝日の告発の前提が崩れてしまったことになる。既に映画は、ナレーションを担当した役所広司さんが「今後二度と上映されるべきものではありません」と厳しいコメントを出したこともあって、全面上映中止となったのだが、4月14日に出演者らが上映を求める声明を発表するなど、予想外の展開となった。

もともとドキュメンタリーにおける演出とヤラセの問題というのはなかなか微妙で複雑なものなのだが、それについて考える機会でもあると思い、『創』編集部では既に関係各所に連絡をとり、実際に映画を見てこの問題を議論する場を設けようと試みている。この問題についてコメントした吉岡忍さんや森達也さん、あるいは是枝裕和監督など、これまで『創』と関わりのある表現者にはぜひ改めて突っ込んだ議論を呼びかけたいと思う。また、既にその70代の女性の代理人や地元関係者とも接触しているから、詳細な事実関係についても、判明次第、このブログに公開していこうと思う。もちろん映画製作関係者や、告発を行った朝日新聞記者にも参加してほしいと思っている。

その議論の前に、これまでの経緯を押さえておかなければならない。幸いなことに、まだ問題発覚から時間がたっていないので、それぞれの記事や文書はネットで見ることができる。厳密な議論をするために、事実関係についてはぜひ原文にあたってみることをお願いしたい。

まず一連の朝日の記事については、朝日新聞デジタルで見ることができる。3月5日の第1報以降、朝日は何度も関連記事でヤラセ告発とそのフォローを行っている。以下、3本の記事のURLを張りつけるが、朝日新聞デジタルで「ガレキとラジオ」で検索すると一連の記事が全て閲覧可能だ。何もここで朝日新聞デジタルのPRをすることはないのだが(笑)。

http://digital.asahi.com/articles/ASG344VCHG34UNHB00B.html

http://digital.asahi.com/articles/ASG365V0JG36UNHB015.html

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11060356.html

これに対する70代女性の代理人の質問状などは、下記に現物が公開されている。

https://www.facebook.com/gareraji.minasan

4月14日に映画で描かれた「FMみなさん」の元スタッフらが出した声明は『創』編集部にも届いているが、概要については時事通信などが報じている。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201404%2F2014041400785&g=soc

それぞれ上記の記事などには関連記事のリンクが張られており、それをたどるとかなりの情報にアクセスすることができる。これ以降の情報についても、随時紹介していこう。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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