ジダンの運は尽きたのか。レアル・マドリーに欠ける「祈祷師」の存在。
ジネディーヌ・ジダン監督の正念場だ。レアル・マドリーを、クライシスが襲っている。
リーガエスパニョーラでは、首位バルセロナに勝ち点8差と大きく差をつけられて3位に位置。チャンピオンズリーグ(CL)においては、グループHの1位を争うトッテナムとの天王山を1分け1敗で落として首位通過が難しくなった。
■「幸運な男」という符丁
ジョゼ・モウリーニョ監督、ユルゲン・クロップ監督、ジョゼップ・グアルディオラ監督、ディエゴ・シメオネ監督...。彼らは指揮官がスター選手以上に重要な存在であることを大衆に再認識させた。
その系譜を継ぐべく、ジダン監督は2016年1月にマドリー指揮官のポストに就いた。ジダン監督の強み。それはレアル・マドリーにノベナ(クラブ史上9度目のCL制覇)をもたらした、現役時代から繋がるマドリディスタの敬意に他ならない。
だが就任当初から、彼は経験不足を指摘され続けた。Zidane tiene flor(ジダン・ティエネ・フロール)。曰く、「ジダンにはツキがある」ということだ。
ジダン監督は「幸運な男」だと批判されてきた。接戦をものにすれば、運のおかげ。交代策が当たれば、それも運によるもの。記者会見で笑顔を絶やさず、メディアからの際どい質問を柔らかな物腰でかわす指揮官には、「掴みどころのない監督」というレッテルが張られた。
■ジダン政権下で最悪の敗北
トッテナム戦の敗北はジダン政権下で最悪のものだった。
マドリーは、CLのグループステージで、直近30試合無敗を誇っていた。2012年のボルシア・ドルトムント戦以来、5年ぶりのグループステージでの敗戦だった。
ボルシア・ドルトムントのつまずきで2位通過の可能性までは汚されていないが、トッテナムに敗れた事実を警報として受け入れなければいけない。リーガでのジローナ戦の敗北は痛かった。しかし現チームは負の連鎖、もっと言えば負の濁流に巻き込まれている。
トッテナム戦の指揮官の采配にも疑問が残る。ジダン監督は後半開始からカセミロを最終ラインに下げ、セルヒオ・ラモス、ナチョ・フェルナンデスと3バックを形成させた。
それから現在好調のイスコを真っ先に切り、マルコ・アセンシオを投入。クリスティアーノ・ロナウドの最高の相棒であるカリム・ベンゼマの代わりにボルハ・マジョラルをピッチに送り込み、終盤にルカ・モドリッチを下げてテオ・エルナンデスを投入した。
マルセロとテオの「ダブルサイドバック」は、これまでのところ機能した試しがない。それでもジダン監督はこの戦術に固執している。
■モラタとハメスの得点力
昨季はシーズンを通じて、全公式戦で5敗しかしなかった。だが今季はすでに3敗を喫している。ペペ(ベジクタシュ)、ハメス・ロドリゲス(バイエルン・ミュンヘン)、アルバロ・モラタ(チェルシー)らの移籍で空いた穴は塞がっていない。
ペペは守備陣に経験値をもたらしていた。ハメスは少ない出場機会で11得点(チーム内4位の得点数)をマーク。モラタは20得点(チーム内2位)を記録してC・ロナウドに次ぐゴールスコアラーとなっていた。
C・ロナウド(リーガ6試合1得点)、ベンゼマ(6試合1得点)を擁しながら決定力不足に喘ぐマドリーをよそに、チェルシーで定位置を確保したモラタは今季すでにプレミアリーグで8試合6得点を挙げている。
■「祈祷師」に頼んで...
ジローナ戦の決勝ゴール、トッテナム戦の先制点には、オフサイドの疑惑がかけられた。奇しくも、フロレンティーノ・ペレス会長は、C・ロナウドが5試合の出場停止処分を受けた今季序盤から、審判団の判断に苦言を呈していた。
会長の“号令”に従うように、マドリッドのメディアはミスジャッジを厳しく非難する。だがこれはマドリーに限らず、プロ・アマ含めフットボールの全チームに降りかかり得る問題だ。
ジダンの運が尽き、ジャッジに泣かされる今、マドリーは「祈祷師」に頼らなければいけないかもしれない。祈りを捧げてもらい、運気を向上する必要があるからだ。